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私達の青春  作者: さかき
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第一話

 私には夢がない。それにやりたいこともとくにはない。ただ毎日をなんとなく過ごしている。

 こんな私を愚かだと他人は思うかな?ううん。たいていの人はそうなんじゃないかな?そうだよね?明日が晴れでも雨でも関係なくて、ただ、今日も同じ道を同じように歩く。

何かが変われ、そう思いながら.....。







「おはよう。になちゃん」

聞き慣れたが決して不快ではない声が私の耳まで届いた。


「おはよう。はるちゃん」


私も同じように返事を返す。


 私の名前は夏目 夏。[なつ]の字が二つ使われているので仲のよい友達からは[にな]と呼ばれている。ひそかに気に入ってるニックネームだ。


「ねぇ。になちゃん。今日からの体育何選択する?」


「んー。まだわかんない。はるちゃんは?」


私からはるちゃんと呼ばれているのは、私の親友(多分)である春川 命という名前。彼女は小学生の頃に転校してきて、ともに季節の名があったからか自然と仲良くなった。(別に上手いこと言ったとかは思ってないよ)



「私ね、になちゃんが選んだやつならなんでもいいよ。」


にこやかにそう答える。男がこの言葉を聞いたら、その場で顔を朱め、落ち着きがなくなるだろうな。とか思ったりしたが、生憎私は女なので少し照れるくらいでやめておいた。


「そうだね。じゃあバドミントンなんかはどうかな?昔やったことあるけど、結構おもしろいよ。」


 「ふーん。そうだなんだ。じゃあバドミントンだ♪」


今度は飛び切りの笑顔を私に向ける。


(その辺でやめて。世の男達に夜中に後ろから刺されそう。)



「ん?どうかしたの?」



(あっ、やばい、抱きしめたい。このお人形さんめ、かわいいじゃないか。..って私は男か。)


「えっと、なんでもないよ。」


「そう?。ならいいや。」(うーん。この娘に自分がかなりかわいいってことわからせたほうがいいんじゃないかな。じゃないと勘違いする男が後を絶ちそうにない)


「じゃあ、私今日は日直だから先にいくね。」


私がどうやって彼女に伝うようか迷っていると彼女は一人走り去った。



(まぁ、いいか。下手な助言をして私にもあの無垢な顔を向けてくれなくなったらいやだし。っていうかあの娘は本当に私と同い年なのかな?小学生といっても通用しそうだ。)


私は自分が歳をとったことを痛感しながら教室に入っていった。(早過ぎ?)




教室に入ると相変わらずのメンツが相変わらずの話しを楽しそうにしていた。


「おはよう。にな。」


1番楽しそうにしていたグループの一人が私に話し掛けた。


「おはよう。あっちゃん」


 彼女の名前は東 秋菜。 とても活発でクラスの人気ものだ。しかも、成績優秀、スボーツ万能。そして美人という今時めずらしいくらいの完璧超人。私とは掛け離れた存在だ。

(あれ?私ってなんでこの人と仲いいのかな。)


「喜べ、にな、今日の数学はなんと自習だ!」


「えっ?ほんと?やった。今日予習してなかったんだよね。」


「へぇ、めずらしいね。になが予習しないなんて。なんかあったの?」


 不思議そうに尋ねてきた。


「いや、別に。昨日は寝ちゃって。」

 実は自分が書いている詩の調子がよくてずっと書いてたから、なんてとても言えない。



「ふーん。になでもそういう失敗やるんだ。」


 彼女は私の返答に満足したのか、それとも最初から大して興味がなかったのかそれだけいうとその話題は終了した。


 その後も私達はいくつか毎朝誰もがやっている相変わらずの会話をした。(国語の先生がむかつくとか、B組のAちゃんが彼氏と別れた、とかそんなの)



「...それでね、なんとあのM君が...。」


「秋菜〜。ちょっとこっち来て〜。」


あっちゃんの話しがクライマックスに差し掛かったところで他の女子から呼びかけられた。


「え?うん。わかった〜。ごめんね、にな。続きはまた今度ってことで。」


「え〜。そんなところで終わらせられたら授業に集中できないよ」


 我ながら面白くないリアクションだ。ここでもう少しましないいかたがしたかったが、私には豊富なボキャブラリは持ち合わせてない


「ふふっ。そう慌てなさんな。今度はもっと面白くしてあげるよ。」


 それでも彼女は笑ってくれる。


「わかりましたか?になちゃん?」


「はーい。わかりました。秋菜先生。」


「うむ。よろしい。」


そこまでお互い言い終わり2人同時に笑い出す。


「ふふっ。」

「アハハ。」

「も〜、あきな〜。早く来てよ〜。」



「あー。ごめん。ごめん。今行く〜。」


「それじゃまたね」と私に話してから呼ばれたほうに歩いていった。


(さてと、一人になっちゃったな。急いでやろうとした数学もどうやらやらなくてよさそうだし。)


 私は基本真面目なので予習はしてくるほうだけど、しなくてもいいときに勉強するほどじゃない。まだ受験を考えるのは早過ぎるし、いずれ去年の先輩達のようになるのだから今くらいゆっくりしてもいいじゃないか。(この考えが、受験に失敗する原因なんだろうな。)


 そういうことで、私は今からまた人に話し掛けるのも面倒だったので、静かに窓の外を眺めることにした。



 窓を眺めながら思う。


(なんでだろう?何か物足りない気がする。)


毎日の学校はそれなりに楽しいし、友達と話すのはもっと楽しい。

確かにいやなこともあるけど。

それでも絶望するほどじゃない。多分充実してるといっていいだろう。それなのに時折一人になって考えると何か足りない気がする。途端に私がやっていることがつまらないように感じてくる。こんなことはどこのやつでもやっていてまったく同じような会話が同じように交わされる、そんなこと思ってしまう。



窓の外では昨日も見たような青空の下で一昨日も見たっぽい小鳥達が、明日も見るであろうとびかたで飛び去っていった。

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