寂しき少女の降霊術
今日は私の誕生日。
とはいっても、それを祝ってくれる人はいないけど。
クラスに、というか私に友達はいないのだ。
それに、親も仕事で忙しいので家に帰るのはとても遅くなるだろう。いつも二人とも、私が寝てから帰って来るのだ。
誰もいない家に帰って、一人きりの夕食を済ます。
今日やるべき宿題等を終わらせる。
いつも通りのことをして、いつも通りに今日が過ぎる。
なぜなら、今日は私にとっては特別な日だが、他の人にとっては特別でも何でもない、普通の日だから。
そう思うし、頭ではわかっている。
でも、
「今日は、私の……」
誕生日。
特別な日。
誰かに祝ってもらいたい、って
そう思うことは悪いことじゃないはずだ。
暗い気持ちをまぎらわすために、パソコンの電源をつける。
適当な言葉を検索して、適当なサイトを見たりしていると、
「降霊術……?」
『☆友達を作る方法☆
これは、簡単な降霊術です。
簡単にできますが、少しでも手順を間違えると大変なことになります。
もし、そうなってしまった場合は自己責任でお願いします。
でも、成功すれば一生の友達が得られますよ☆
』
……ばかばかしい。
何が降霊術だ。そんなもの、あるわけがないだろう。
『それでは、方法を説明しますね☆
と、その前に、大切なことをいい忘れていました。
これは、自分の誕生日にしかできません。ご注意下さい。
』
……誕生日か。
今日は、私の誕生日……。
『それでは!説明を始めます!!
まず、準備するものは
1,ぬいぐるみ(なるべく人の形に近い物の方が成功しやすいですよ)
2,あなたの体の一部(髪の毛でも切った爪でも剥けちゃった皮でも何でもOKです)
3,ハサミ
』
なるほど、これなら簡単に用意できそう………いや、まだやるとは決めてないけど。
『手順は次の通りです。
1,まず、用意したぬいぐるみのお腹の部分に、ハサミで切れ込みを入れます。
2,次に、切れ込みの中にあなたの体の一部を入れます。
3,ぬいぐるみに適当に名前をつけて、こう呼びかけます「○○さん、○○さん。どうか私の友達になってください」
4,そのあと、ぬいぐるみの○○さんが返事をくれたら、降霊術は成功です!一生の友達になってくれるでしょう。
もうあなたは寂しくないのです☆
』
……ウサギのぬいぐるみに切れ込みを入れて、中にプチっときった髪の毛を入れて………って、私は何をやっているのだろう。
いや、ちょっと暇だったし、親もまだ帰って来ないし、ちょっと誕生日だったし、それに本当に成功するわけがないんだから、
ちょっとなら、ちょっとくらいなら、いいよね。
「ウサギさん、ウサギさん。どうか私の友達になってください」
本当に、何やってんだか。
『イイヨ』
……?
なんか聞こえたような……?
空耳かなあ?
『ワタシハ、今日カラ、アナタノ、トモダチ』
あはは…。ウサギさんのほうから何か聞こえるなあ。
あれは、嘘っぱちじゃなかったのかなあ。
『アナタハ、ワタシノ、トモダチ。アナタノ、名前ハ?』
まあ、友達っていうくらいなんだし、名前くらい教えてあげてもいいだろう。
「私の名前は」
だが、
それが間違いだった、らしい。
私は気づかなかったのだが、説明はあれで終わっていなかったのだ。まだ、続きがあったのだ。
そこには、こう書いてある。
『あ、それと、これも大切なことですが、名前を聞かれても、絶対にあなたの名前は教えないでください。
もし、教えてしまった場合、あなたが
呼び込んだ霊に取り憑かれてしまいます。
まあ、名前さえ教えなければ無害なので、安心してください。
それでは、頑張ってください☆☆
』
私が名前を言った後、ウサギさんの様子が変わった。
『フフ……。アナタハ、ワタシ。ワタシハ、アナタ。ズット、イッショ。ズット、トモダチ』
「……?」
突然、ウサギさんは訳のわからないことを、楽しげに言い出した。
いったい何が起こっているのだろうか。
『アナタト、ワタシ。ワタシハ、アナタニ、ズット、ナルノ。ヒトツニ、ナルノ』
「……え?」
私がその言葉を理解しないうちに、
気がついたら
ウサギさんの
何を考えているのかわからない顔が
目の前に
『モウ、寂シクナンカ、ナインダヨ』
広がって
『ズット、ワタシガ、イッショニイルカラ』
わたしは
……………
………
……
…気がついたら、私は床に倒れていた。
いつもより、なんだか気分がいい。
妙な高揚感に包まれている。
「あはは……」
わたしは、今日から、ひとりじゃ、ないのだ。
ズット、イッショ、ダカラ。
ヒトリ、なんかじゃ、ナイ、のだカラ。
笑いが
「あははははっ」
モウ、寂シクナンカ、ナイ。
込み上げてくる
「ははっ。あははははっ!」
ワタシは、今日、トモダチがデキましタ。
読んでいただきありがとうごザイまス。
少女は最後に幸せになった、って言えるのでしょうかね。
何はともあれ
読んでくれて、ありがとうございました!