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ハルさんちのねこ。  作者: 百瀬百田
Ⅰ 美少女が降ってくると、いつから錯覚していた?
6/16

5 正気ですか?



  「みあをハルくんの家に住まわせて欲しいの」



 

 千智さんが発したその言葉に、俺はいよいよこの人は正気を失ってしまったのかと思った。


「は…い?今、なんと…」

「だから、みあをハルくんの家に居候させて欲しいと言っているの」

「いえいえいえ、ちょっと待って下さい。何故そうなるんですか」


 あまりにも非現実的な発言だ。

 みあは空から降って来たわけでもないし、住んでいる家だってあるだろう。まして千智さんというスバラシイ母親もいる。

 …まさか、これからみあにとってのその現実がなくなるとでも言うつもりだろうか。


「私も流石に突飛なことを言っている自覚はあるけど、もうハルくんにしか頼めないの!」

「だから待って下さい。千智さんの要求は分かりましたから。とりあえず事情を説明して貰えませんか?話はそれからです」

「そうね…じゃあ、簡単に説明するから」


 

 そう言って千智さんは事の経緯を確かに簡単に説明してくれた。発端は千智さんの職場の転属が決まったところから始まる。

 千智さんは現在製薬会社のMR(医薬情報担当者)として働いており、この度九州支社への転属を言い渡されたらしい。栄転で転属条件も良いことと、元よりその転属を自分で願い出ていたこともあって赴任は躊躇わなかったが、みあと離れることだけが気がかりになったと。


「みあさんも一緒に九州へ行くことは出来ないんですか?」

「それが出来れば悩まないよ。でもね、みあちゃんは受験生で、おまけに志望校は東京なの」

「…なるほど」


 確かに、志望校が都内にありかつ受験生だとすれば、母親の転勤についていったとしても、早ければ来年の春にはまた上京してくる羽目になってしまう。

 加えて、身体が弱いみあは幼い頃から診て貰っている掛かり付けの病院があり、今でも定期的な診察を受けているらしく、その病院を転勤で変えたくないというのも理由にあるらしい。


「みあさんの状況を踏まえれば、東京に残った方が良いとは俺も思いますが…何故俺の家なんですか?」



 重要なのはそこだ。



 見ず知らずとは言わないが幼い頃に会ってそれっきりの、しかも1人暮らしの男の家に住まわせようと考える親がいるだろうか。

 いや、現実に今いるわけだが…。さすがに2つ返事出来るような状況ではない。


 言葉を濁す俺に対して、千智さんは静かに告げた。


「それはハルくんだから」

「え?」


 再び返ってきた予想外の言葉に、素っ頓狂な声が上がってしまう。

 というか答えになっていない件について。


「だから、ハルくんだからだよ」

「だから、もっと納得できるような理由を明確に言って下さい」

「いいよ。立地的な側面と心情的な側面の双方において、ハルくんの家が1番適切であると判断しました」

「続けて下さい」

「立地的な側面とは、単純に言って、ハルくんの家からの方がみあの学校と病院に近いということ。あと、みあの志望校がハルくんの母校なの」

「な、なるほど…」

「心情面としては、ハルくんとみあちゃんに一緒になって欲しいと思っているからだよ」

「なるほど…


       っはぁっ!?!?   」



「それに、ハルくんだったらみあちゃんに何かあっても大丈夫だし。家庭教師もお願いできるし。頼りになるし。(さち)さんと彼方(かなた)さんの息子だし」


 千智さんと俺の両親が旧知の仲だったことは知っているし、千智さんが俺のことを信頼してくれているのも理解している。ありがたいことだと思う。


 というか、重大なことサラっと言ってサラッと流したよな!?


「っていうか一緒になって欲しいって…」

「そのままの意味だよ?みあとハルくんが結婚してくれないかなーって昔から思ってたし、いいチャンスだよね!」

「どんなチャンスですか!」

「ハルくんなら、みあちゃんにいかがわしいことしても許す!」

「許さないで下さい!」

「きゃー!ハルくんのえっち!」

「そういう話をしているんじゃありませんっ!」

「またまたぁ!ハルくん、昔みあちゃんのこと口説いてたくせにぃ!みあちゃんの初恋もハルくんだし、これで保志場家と眞城家は安泰だね☆」

「頭痛くなってきました…」


 俺が昔みあを口説いたって…そんな記憶はまるでない。初対面でない事は確かだが、俺とみあの仲が良かったという事実は過去はともかく、少なくとも俺が1人暮らしを始めてからは全くないのだ。

 だからこそ寝耳に水な提案なわけで…。


「もう、ハルくん理由聞いてばっかりだな。ハルくんの気持ちはどうなの?」

「理由を聞くのは当然でしょう!」


 


「…俺の…俺の気持ちは…




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