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ハルさんちのねこ。  作者: 百瀬百田
0 プロローグ
1/16

0 王道たる所以とは



『相棒!空から女の子がっ!』


「降ってくるかよ」


 使い慣れた愛用PCのデスクトップを覗きこみ、そこに描かれている目下落下中の美麗な少女とその少女を受け止めようと両手を広げる冴えない青年の画を、俺は半ば呆れ顔で見つめた。

 劇的な、しかしお決まりと言える展開に少々溜め息を零しつつも、右手の下のマウスをこれまたお決まりの動作で操作する。ワンクリックすると画面が切り替わり、空から降ってきた少女の可愛らしいCG絵と台詞が表示された。

 

 『何でここに立ってるのよ!危な…邪魔よ!』


 ツンデレか…。CGのクオリティ高いな。流石ももソフ!

 …そう、勘の良い諸君は既にお解りのところだろう。

 俺は今まさに、世間一般にはギャルゲーと認識されるであろうモノを絶賛プレイ中だ。ちなみに、『ももソフ』というのは男性向けゲーム製作会社の略称で、正式名称は『桃太郎ソフト』という。

 メインは年齢制限つきの大人のお友達向けゲーム――いわゆる18禁ゲーム――で、大手であるこの会社の名をその界隈じゃ知らぬものはいないと言っていいだろう。作品の傾向として、はどれも王道展開のものが多いわけだが…王道には、王道たる所以があるのもまた事実だ。

 そんなももソフの中で、何故俺が今やっているのが全年齢向けゲームの方なのかというと、この会社、年齢制限なしのゲームでも時折ポンッと神ゲーを生み出すことがあるからだ。俺はその神ゲーにとても期待している。ただ…このももソフの全年齢向けは、神ゲー以外はクソゲーしかないこともあえて伝えておこう。

 さて、今作はどっちだろうな…。


「はいキタ、居候展開」

 空から降ってきて当然住む家もない謎の美少女と、そこに偶然(でも実は必然)に居合わせた1人暮らしをしている平凡(後に特殊能力(主人公補正とも言う)が判明する)学生が、トキメキ☆同棲ライフをおっぱじめるという…やはりもう見慣れた展開だ。

 大体、空から降ってきた謎の生命体だぞ?いくら可愛くても居候させるか?普通は、だな…

 …ま、させるかもな…オタクなら……うん。


 『展開にケチをつけるくらいなら、ギャルゲーなんぞやめてもっと有意義なことに時間を使ったらどうなんだ!え?』…とお諌めの声が所々から聞こえてきそうだが、あえて言わせて貰う。



  そんなつもりは毛頭ないと!



 あり得ないとは思いつつも、その王道展開に憧れを抱いてしまう悲しい性の持ち主でありかつ愚痴を零しつつもぶっ飛んだトキメキ溢れる王道展開が大好きなのが、オタクという存在なのだ。ギャルゲー然り、ロボット然り、萌えアニメ然り。etc.

 さて。

 諸君のお察しの通り、知ったようにオタクを語る俺もまた、一応オタクと呼ばれるに違いない部類の人間だ。というか、汗水流して労働もせず平日の真っ昼間からギャルゲーに興じるその姿は、一応と言わずもはや立派なオタクであると言えよう。引きこもりや廃人なわけではない。断じて!

 

 これまでオタクであることを周囲には出来るだけ悟られないように、気を遣いながら生きてきたから、友人や知人は俺がオタクであることは知らないヤツが大半だ。画面に向かってツッコミを入れつつ、時にニヤニヤしながらギャルゲーをプレイするという誰がどう見てもイタイ姿も、一度室外へ出てしまえばどこにでもいる普通の青年の顔になる。

 というわけで、以上の点を踏まえ、俺は立派な隠れオタクであると自称させて貰おう。加えて、さらに重要なことがある。それは、




  俺は、ただのニートなオタクではない。




 『あ、相棒!空からまた女の子が!』

 

 「ってまたかよ!」

 まさかの同じ展開に脊髄反射で思わずつっこみ、慣習的にマウスを操作しようとする。

 

 その時。

 

 タララン♪タララン♪タララン♪


 来客を知らせるマンションのインターホンの軽快なメロディーが、無遠慮に室内に響き渡った。居留守という言葉が瞬時に頭を過るが、そう言えば新しいゲーム(年齢制限あり)を注文していたことを思い出す。少し前の作品だが、レビューサイトの評価が高くて購入を決めたのだった。


「来たか…!」

 俺は絶賛プレイ中の画面をそのままに、無意識に口角が上がっていることに気付かず腰を上げると、来客者に応答すべく室内インターホンへと歩み寄って行った。




 まさか、この来客者に応答することで、俺のこれまでの平凡でオタクな日常が、あっさりと終わりを告げられることも知らずに―――


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