第1話 再会
どうも。はじめまして、玲です。
《姫百合 美咲》
中学三年生冬、合格発表シーズン。
私、姫百合美咲は中高一貫校に通っている。小学の時からずっと、天才!賢い!何か特別なことやってるの?って聞かれる毎日。
無事志望校に合格し喜んでいる人もいれば、滑り止めの第三志望に受かって悔しいような嬉しいような複雑な気持ちを抱えている人もいた。
とにもかくにも、私たちは高校生になろうとしていた。
“アイツ”はどーせ兄ちゃんと同じ県外の学校に行くんだろうな…。合格してればいいケド。
ちなみに“アイツ”というのは、爽浪潤。名前なんて覚えなくていい。
爽浪は何故か無性にムカつく奴で、イライラして、別に飛びぬけて顔もいいわけじゃなく、とにかくムカつく奴である。そんな華のない(失礼だろ)アイツが、私の初恋の相手である。ムカつくぐらい優しくて、誰にでも気遣いが出来て、いつの間にか爽浪ワールドに巻き込まれ…。アイツ結構モテモテだし。みんな趣味悪すぎる。
私もだけれど…。
まさか告られるとは想ってなかった。友達は爽浪のこと好きだし、もう手紙まで書いちゃってるし、保留にしたけど。まぁ、友達は振られたし、卒業式に連絡先は教えてあげた。そしたらすげー電話してくるし。微妙にうざかった……。
でも、ちょうど志望校登録用紙提出したって聞いてから、連絡全然来ないし。何やってんだろ。
ッて何爽浪のことばっか考えてんだ……。馬鹿か、私は。
私がこんなに上から目線でお嬢様キャラなのは、そういう扱いで育ってきたから。
だから私は悪くない。
こんな感じであっという間に時は過ぎ、爽浪から連絡のないまま春を迎えようとしていた。
《爽浪 潤》
高校生春、入学式。
やっとこの日が来た~。姫百合、びっくりするかな。
受験勉強はすっげー頑張ったし、おかげで合格!
姫百合に会うの楽しみすぎる。
中高一貫のせいか、入学式は短かった。
入学式が終わるとみんな掲示板に向かって走り出し『俺、A組。お前は?』とか、『やったぁ、クラス一緒~』とか、『仲良くしようね』とか、いろんな声が飛び交っていた。
やっぱ編入だと、友達つくんの難しいかもな…
《姫百合 美咲》
入学式はものすごく長く感じた。ずっと爽浪のことばっか考えて…。
連絡が来ないのは、受験勉強で忙しかったから。携帯を親にとられてたから。
だから、受験終わったら連絡が来る。
アイツのことだから、「姫百合、姫百合、姫百合!聞いて聞いて!受かったよ!俺すごくね?」とか言ってくる。必ず名前を三回呼ぶ癖も治ってないんだろうな。
なんて、そう思ってた。
でも、連絡はなかった。アイツ何やってんだよ。
「み~さきっ!何組だったぁ?」
「えぇっと、C組」
「おぉぉ~また一年よろしくー!」
『美咲ちゃんC組だって。私何組?!』
『よっしゃぁ!姫百合さんと同じクラス~』
『ずりぃ。俺A組だぜ…』
「美咲は相変わらずって感じだね~。すごい人気」
「優衣の方が絶対可愛いだろ」
「俺もそう思う」
後ろに立っていたのは真神悠斗。
そして、さっきから喋ってるのが藍沢優衣。
二人は家が隣らしい。だからか、幼いころから仲が良かった(らしい)。
二人とも中学の時からの友達。
「だろだろ?絶対優衣の方が可愛いって」
「お前はそのしゃべり方が可愛くねぇんだよ」
「黙れ、真神のくせに。」
「はいはい。すいませんでしたぁ~」
「くそっ、ムカつく……。」
真神はいつも私に対してだけ何故か反抗的で、いつもこんな感じ。
これを止めるのは、優衣の役目。
「まぁまぁ。そーいや、悠斗は何組だった?」
「C」
「うわッ、マジかよ…。」
「私達もC組だよ。一年間よろしくねー」
「おぅ、よろしくな。てか、優衣と同じクラスなのはラッキーだけど……」
「……なんだよ」
「別に。何でもねぇよ」
《爽浪 潤》
『姫百合さん可愛いよなぁ。天使!んで、ちょっと荒っぽいとこも可愛い』
『だよな。俺一回付き合ってみてぇー』
『何バカなこと言ってんの。美咲さんはみんなのものだかんね』
姫百合…美咲…?
俺は無意識のうちにたずねていた。
「なぁ、姫百合って今どこにいるか知ってる?」
「ひ…姫百合さんを呼び捨てに…」
「姫百合さんって呼べ!」
え、姫百合、この学校でどんな地位なの?
「姫百合さん、どこ?」
俺はわざと『姫百合さん』を強調した。
「美咲さんなら掲示板のところにいたけど」
「そか。サンキュ」
久しぶりに、会える。
俺は勢い良く駆けだした。