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悲劇のカボチャミバエ

作者: 暇庭宅男
掲載日:2026/09/30

虫注意!この文章には不快に感じる虫の表現が多数あります。苦手な方はそっと他の作品へ避難いただくようお願いいたします。

秋に出会う最凶の害虫は何ですか?という極めてニッチな質問は、この世には多分ない。無いのだが、仮にあったらという仮定で話をしよう。秋の最凶の害虫はカボチャミバエだ。断定していい。被害額云々よりも、全国で積み上がる精神ダメージの総量がケタ違いだろうからだ。暇庭自身も食らったことがある。


彼らはよくかぼちゃに潜んでいる。おいしそうなかぼちゃ、そのまる一個を買ってきて、包丁で辛苦して切ったとき、中から虫が出てきた経験はおありだろうか?虫と言ってもそれは大変に活発に動く蛆虫である。くねくね動き、またピンピンと飛び跳ね、台所を一瞬で地獄に変える野菜畑よりの刺客である。


タイトルに戻ろう。ピンピンと飛び跳ねるアグレッシブな蛆。彼らの名前がカボチャミバエである。瓜の実に潜り込んで、カボチャの場合は種ワタの部分を食べながら大きくなる。大きくなると茎の部分から出ていって、土の浅い所に潜って蛹になり、ハエとして成体になるとまたカボチャやその他の瓜類をさがして飛んでいくのである。


当然虫嫌いな人にとっては恐ろしい敵であり、生産者からしても販売者からしても収穫時、入荷時には中にそれが居ることは分からない。ハエの親が卵を産み付けるときに茎の部分に極小の穴が空くが、よほどよく見なければ分からないのだ。


「ギャーッ!?暇庭くん、後任せたっ!」


「なんすか?……あっ」


仕事場でかぼちゃカッターを使ってかぼちゃを四半分に切っていたパートさんが悲鳴をあげる。


それが始まるとあー、この季節かあー、と思う。コイツラの居るかぼちゃはちょうど9月の長雨から、11月の霜が降りる頃まで続く。ワンシーズンで数百個の国産かぼちゃを切るが、蛆入りのかぼちゃに当たるのはおおよそシーズンに3個〜5個。選果場を通っていない産直品がほとんどを占める。


作業場の中でも虫が平気かそうでないかは分かれる。暇庭は半農のなりわい故に虫への耐性はまあ無くはないほうで、毒虫と噛まれたら痛い系でなければ素手でも触れる。そう、このカボチャミバエの蛆は、暇庭は素手でも触れるのだ。別に汚くないと分かっているからだ。



カボチャミバエについて、少し不思議なことがある。

彼らは確かにかぼちゃの種ワタを派手に食い散らかすのだが、別にかぼちゃ全体を腐らせるわけではないのだ。普通、蛆と言えば腐ったものに湧くものだというイメージが先行するため、いかにも汚らしいが、カボチャミバエの湧いたかぼちゃは別に腐ってはいなかったりする。臭いもしないし果肉もかっちりしている。


いっそ、ハエの幼虫の居る種ワタ部分を取り除き、スプーンで少しばかり果肉をガリガリとこそげばそれ以外は全く食べるに支障ない。

それが言い切れるのは、私自身の胃腸で実験を行ったからだ。カボチャミバエの蛆が元気よく蠢く種ワタを掻き出して1番内側の果肉を1ミリほど削り落とし、レンチンで加熱。そういえば洗ってないことに食べる前に気がついたが、腹痛になるかならないかの実験なのでいいやとそのまま食べた。1日、2日……なんともない。不思議だ。不思議だったのでもう1回やった。跳ね回る蛆を可燃ゴミに叩き込み、今度は皮を剥き、蒸して荒くマッシュ。そこに片栗粉を混ぜて揚げ焼きにして食べた。個人的に塩がおすすめだが味付けは何でもいい。信じるものをかけるべきだ。

ちょっと脱線したがそれを食べても健康に問題は起こらなかった。少なくとも目に見える不調は何もなかった。気分的にアレなのはもはや仕方ないが、食おうと思えばカボチャミバエの蛆が湧いたかぼちゃは食べても大丈夫だ。もし勿体ないから食べようと言う方がいらっしゃれば私はぜひに応援したい。


もちろん捨てるという方のことを責めるつもりもない。食うのはちょっとキツイよということであればもちろん返品、交換の対応の範疇だ。防げなくて申し訳ない。全ての地雷を踏んだお客様へ、暇庭が代わってお詫び申し上げる。いやホント防げないんだってあれは。許してはくれないだろうけど管理の杜撰さとかでないのは信じてほしい。たまに作業場で虫がついたと思われるのがとてもとても苦しいのだ。そうではない。そうではないこともまた、全国の八百屋さんにかわり暇庭より申し上げる。でも気分的に悪いのはどうしようもない。重ねて本当に申し訳ない。


とまあ唐突にこんなおどろおどろしいものを書いたのは今年がカボチャミバエの多発年であるからだ。盛り下がるよね。俺はすでに盛り下がっている。盛り下がりながらカボチャミバエの湧いたかぼちゃで作ったかぼちゃのお焼きをかじり、ため息をつきつきこの文章を書いている……。誰も悪くない。ただ命のすべてがあるようにあるだけ、なのになあ。

今年は本当にだいぶ多いので警告と対策をかねて書いた。

100%事故を避ける方法は1/2、あるいは1/4カットのものを買うこと。人にもよると思うがショック症状で顔面蒼白になり立てなくなった人まで見たことがある。

買い方躱すのも当たったとき正面突破で食べ切るのもどちらも立派な戦術だ。繰り返すが生産時に防ぐことはほぼ不可能に近い。生命のしくみに勝てないのが百姓というものである。あぁ我ながら言い訳がましい。


10/3追記:作中で「ウリミバエ」と呼称していた昆虫ですが、正しくは「カボチャミバエ」でした。

カボチャミバエは日本在来の害虫ですが、ウリミバエは外来種であり、2026年現在、日本国からは一度完全に根絶されています。再侵入がなければ国内の野菜からウリミバエが見つかることはありません。普段使っていた誤った名称をそのまま作中で使ってしまいました。申し訳ありませんでした。

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― 新着の感想 ―
 う、ウリミバエが本土に既に居るんですか?  確か、沖縄で背黒ウリミバエの封じ込めをやってたはずなんですが、既に突破されて本土まで生息域を広げたんですね……。  早めに手を打たないと、エライことになり…
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