雪原
「ロア!? つかま……」
仲間の声は最後まで聞き取れなかった。身体はどんどん落ちていく。
雪の女王の呪いにより凍り付いた街を救うため、仲間と共に雪の女王の霊廟に来ていた。
だが霊廟の探索中、ある部屋で床が崩れ、一人で部屋にいた俺は無様にも落ちてしまった。
落ちながらも上に見える穴を見つめ、それが遠ざかっていくのを呆然と見つめる。
そして冷たい衝撃がやってくる。
氷水の中に落ちた。
全身が焼けるように冷たい。
頭が混乱する。
水? 地下水か?
溺れないように必死に浮こうとする。
そして水上に顔を出す。
「あば! はあ、はあ」
必死に足を動かして沈まないようにしつつ、周囲を見る。
近くに白い岸が見えた。
俺は無我夢中でそっちまで泳ぐ。
そして凍えて沈みそうになりながらも必死に岸にたどり着く。
「はあ、はあ」
どうにか岸の上に行くと、そのまま転がる。
「死ぬかと思った……」
荒い息が止まらない。
あおむけで倒れていると、夜空が見える。
星々が輝き、遠くには赤い光の帯が走っているのが見える。
あんなもの生まれて初めて見た。
思わず上体を起こすと、周囲が雪に覆われていることに気が付く。
白い雪原が広がっている。
俺が落ちたのは雪原にある湖だったようだ。
湖の大部分は凍り付いていて、偶々落ちた場所に氷が無かっただけのようだ。
吐く息が白い。体が冷える。
「……」
そこまで理解して俺の思考も凍り付く。
「どこだ、ここ?」
霊廟の床から落ちたはずだ。
地下にいるのかと思いきや、雪原の中にいる。
一体何が起こっている?
混乱していると、急に瞼が重くなってきた。
目の前が暗くなり、慌てて目を見開いて頬を叩く。痛みで意識が少し戻る。
「やばいな、急に眠くなってきた」
なんでこんな状況で?
疑問ばかりだが立ち上がろうとする。だけど体は動かなかった。
力が入らない。寒い。体が重く氷のように固まっている。
あおむけで雪原に倒れる。
月のない夜空は煌びやかで美しい。
目の前が暗くなった。
「女王の眠りを妨げる愚か者に死を」
頭に声が響く。
俺はその声を聴き、意識が薄れていく。
凍り付いた街のことだけが頭から離れなかった。
他の掌編、短編は作者ページへ。気に入ったらブクマ/評価をお願いします。




