73話
バルトが教室を出たので、席を立とうしたその時。クラスメイトたちが俺の周りに集まってくる。
え。なんですか。帰りたいんだけど
「皆さん。どうしたされましたか?」
「ねぇ君があの噂の『若き英雄』様!?」
ルルンは、興奮しているようでバンっと俺の机を叩きキラキラと目を輝かせ羨望の眼差しで俺を見つめくる。
「噂は分かりかねますが陛下からは、若き英雄の称号を賜われましたが?」
「へー。君が。ねぇ!。今度、私と手合わせしてよ!」
おっとりとした雰囲気からは、想像できない発言だった。
「え?」
「ルルン殿。待ってもらいたい。ルクス殿!小生も手合わせをお願いしたい!」
険しい表情をしてリグも言い出した。
リグとルルンは、俺を挟んでバチバチと睨み合う。
「えと。お二人とも分かりました。明日の実技演習で手合わせしましょ。」
ルルンは、ガッツポーズをする。ルルンは、血の気が多いんだなと思ってしまった。第一印象のおっとりとしたお姉さんは、何処に行ったのだろう。
リグは、なんと言うか強さを求める騎士って印象が強まった。
手合わせのことは明日、考えるとして今日は、寄るところあるし、一足先に帰りますか。
「では、皆さん。僕は、帰りますね。お疲れ様でした。」
「ルクス殿、また、明日であります。」
「じゃあねえ。英雄君!」
リグは、律儀にも一礼する。ルルンは、ひらひらと手を顔の横で振る。
俺の跡をつけるようにシリウス、モニカ様、シャルル様がついてくる。
校舎を出てもついてくるので振り返る。
「あの。シリウス、モニカ様、シャルル様。どうされたのですか?」
「いや何、ルクスはこの後、どうするのかと思ってな。」
気になって尾行するつもりでしたのねぇ。
「クレイドル商会の支店が近くにありますので顔でも出そうかと思っていたのですが」
「そっか。 俺もお世話になっているからな。 我々もついて行こう!」
シリウス。そこで何故、胸を張るんですか。モニカ様たちも行きたいと目で訴えないでもらいたい。
「何か欲しいのがあれば僕に言ってもらえれば用意させますので今日のと」
「邪魔は、しないだから我々も連れて行け!」
また、遮られた。連れて行きたくないから言ってるのに。王族来たら従業員たちがテンパるじゃん。もー。
「わかりました。 あまり騒がないで下さいね。」
「我々が騒ぐとでも?」
「騒がないと思いますが。騒がれると思っています。」
「ん?どう言うことだ?」
「想像してみて下さい。来客の予定のない王族が急に店に訪れたらどうなるか。」
そう。急に王族が来たら店の中は、一瞬にしてお客さんたちが大騒ぎになって従業員たちが大変な目に遭うのは、明らかだ。
「あ、そう言うことか。・・・そうなるとどうしたものか」
「お兄様。変装するのはどうでしょうか?」
「それいいな。そうしよう。」
何言ってんだこの兄妹は。
「・・・リアさん。居るんでしょ。馬車の用意お願いします。」
木の影に隠れていたリアが影の中からスッと現れモニカ様とシャルル様が悲鳴をあげる。
悲鳴に慣れているのか驚きもしないリアは、こくりと頷いて影の中へと潜った。
「ルクス。あれは、君のところメイドか?」
「あ、はい。うちのメイドのリアと言います。」
「あれは、宝具の力か」
「そうですね。リアが持っているのは、影短刀っていう宝具です。影の中を泳ぐように移動できるんですよ。あれ便利なんですよね。」
まぁ。使い方次第だけど。
シリウスの視線が気になる。まるでどうにかして俺を部下にしようと模索しているような気がする。考えすぎか。宝具に詳しければ誰だって手に入れられるしな。
俺たちは、校門でクレイドル商会の支店へ向かうために馬車を待つことに。




