1話
真っ昼間だと言うにも関わらずカーテンを閉めきった暗い部屋で男はモニターを見ていた。
「ようやく、終わったー。今回のストーリーイベント。神回だったな。王道では、あったけど。ラスト。勇者、ロイドが魔王を討伐するところは熱かった!。」
ゲーミンクチェアから立ち上がりふらついた足取りで背伸びをしつつ台所に水を取りに向かった。
モニターに映し出されているファンタジーゲームの映像。彼は徹夜でゲームをしていたのだ。
彼がプレイしていたゲーム。MMORPG『サンガリオン』。自由をコンセプトとした人気のあるオンラインゲーム。
コンセプト通り。自由度が高く。キャラクターメイク、武具の作成、アイテムの作成に至るまで自分の意思でできる。その自由度の高さから人気を博した。
サンガリオンは、メインストーリーがないがNPC、ノンプレイヤーキャラクターのストーリーがありその人気から漫画、小説などが発売される。
そして彼は徹夜で新しく実装された学生勇者、『ロイド』と呼ばれるNPCのストーリーイベントをクリアしたのだ。
彼は、水を飲みながらスマホで友達に「ロイドのストーリーよかったぞ」と送り背筋を伸ばす。
「ふぅ。新しく実装された宝具神殿を攻略しますか!」
彼は、ゲーミングチェアに座りキャラクターを操作する。
宝具神殿。宝具と呼ばれる神が創りし規格外の強さを有した武具のことである。その宝具が神は神殿に隠しモンスターやトラップなどを設置して宝具の所有者になれるかどうかの試練を課す。
プレイヤーたちは、宝具を手に入れるために宝具神殿へと挑むこともこのゲームの醍醐味だ。
彼は、新しく出来た宝具神殿を訪れていた。
「さてさて。ボスも倒したし。あとは宝箱探し!早速お宝発見」
彼は、宝箱に目がくらみ周囲の安全確認せず宝箱へと向かった。彼の跡を追うように一体のモンスターが忍び寄る。
宝箱がある細い通路の入り口に『注意。その通路で死亡場合、全てを失います。全ての攻撃は、一撃必殺となります。』と書いてある看板を彼は見逃したのである。
彼は背後から迫るモンスターに気づかず背後から棍棒のような鈍器で頭から殴られ絶命したのである。
「あ。やべ!。敵!」
視界は真っ暗となり『Death』と画面に表示される。
「・・・あれ?体力満タンだったよな。なんで死んだ。もしかしてデスゾーンで死んだ?」
すぐに『Now loading』と表示が変わる。
彼がいうデスゾーンとは、全ての攻撃が一撃必殺となる区間のこと。
その事を知らずに彼はそのデスゾーンに入り死んでしまった。彼は宝箱に目がくらみ注意せず入った事を後悔していた。
「なかなかロード終わらなんな。」
彼は休憩がてら水でも飲もうと立ちあがろうとしたが身体は、動かない。何故ならば身体がないのだから。
「え?ない?どういうことですか!?」
虚空に彼の叫びが響く。
彼は置かれている状況を判断しようと周りを慌てて確認する。ここには、真っ暗な空間とNowloadingと書かれたモニターしか無いことを知ったしまった。
そう看板に書かれていた通り彼は全てを失ったのである。
「・・・死んだのか。ん。死んだよな。夢ではないもんな。」
彼は頬をつねるが痛みはない。その理由を考えているとモニターの表示が変わった。
『転生しますか。YES/NO』
モニターに表示された質問。彼は考えた。仮にNOを押した場合。何事もなくあの世界に戻っても仕事と家の往復。時々趣味のゲームをする日々に戻るだけ。ならばいっそのことYESを押してつまらない日常を変えようと彼は考え、YESを押そうとするが寸前で止まる。
退屈な日常だったとしてもそれこそが幸せではないかと彼はふと考えてしまった。
「いや、NO。・・・YES」
彼は葛藤していた。NOを押したとしても元の世界に戻れる保証は何処にもない。YESを押したとしても日本のような安全な環境だとは限らない。しかし。YESを押してもNOを押してもどちらにせよ、必ず後悔をする事になる。ならば少しでも楽しそうな方へ。彼はそう思いYESを押す。
するとモニターから眩い光が溢れて巨大手となり驚く隙もない彼を包み込みモニターへと引き摺り込んだ。
その光景を見ていた人の形を影は、微笑む。
「ようやく。駒が揃った。これで奴らに対抗できる。彼ならきっと私たちの切り札になるはず。」
影は、そう言い残して彼の跡を追った。
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