2-1 Cross Our Hearts
おじいちゃんの法事が一通り落ち着いて登校すると、クラスにはアーサーがいた。ギターケースを引っ提げて、朝のホームルームの一時間も前から。
「ユウ!待ってたよ!ブルースやろうよ!」
「朝から?いいけど。どこでやるの?」
「僕とユウの分の入部届出しておいたから、軽音部の部室使えるよ。」
「じゃあ行こう!」
部室は沢山のアンプやら、スピーカーやら、ミキサーやらと、とにかく機材で溢れていた。人は誰一人としていないので、私たちの独壇場だ。
アーサーがギターケースをひん剥くと、そこからは金属光沢が垣間見えた。
「それって......」
「ナショナルだよ。レゾネーターギター。流石にこの前のアコースティックギターだとハーモニカに生の音負けちゃうから、久しぶりに弦張り替えて持ってきたよ。」
アーサーがチューニングの為に弦を弾くと、爆発音にも等しい爆音が響いた。
「やばいね〜、やっぱこうじゃなくっちゃ!」
そうして適当にEのキーでセッションが始まる。私はAのハープで応戦し、ブルースの渦が生まれる。
しばらくすると、ガラガラと扉が開かれる。
「Come on♪」
すかさず二人で「Baby, don't you wanna go?」と続く。
「何してるの?」
クラスメイトのアカネだった。
「何ってブルースだけど?」
「ホームルーム始まってるよ?」
「「やべっ!」」
私たちは急いで後片付けをして、教室に走る。
先生にめちゃくちゃ怒られた。
昼休み、やはり私とアーサーはセッションしていた。しかもそこにアカネがボーカルで入る。
「アカネもブルース好きなの?」
「お父さんもお母さんもイースト・スリムの大ファンでね。小さい時から聞かされてたよ。」
「ああ......」
僕はおじいちゃんのことは明かさないことにしている。けだし、自分のハーモニカに納得が行ってないのにイースト・スリムの正体を明かすとその名を穢してしまう。
「いいじゃん、僕たちのボーカルで決定ね?アカネの歌は綺麗に歌い上げるだけじゃない、人を感情的にさせたり、盛り上げる様な魅力があるよ。僕が言うんだ、間違いない。」
そうアーサーが言う。
「いいの?」
とアカネ。
「こちらこそ、アカネはいいの?」
私が尋ねる。
「うん。前から音楽やってみたかったけど、お風呂で歌うくらいしかしてこなくて、今更始めるきっかけもなくって。」
「ってことで決定!」
「やった〜!せっかくだし、ベースとドラムも探して、バンド組んじゃおうよ。」
とアカネ。
「いいね!そうしよう!それしかない!」
アーサーは大喜びで賛成した。こうして、私たちのブルースバンド計画が誕生した。
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