さいかい魔族
僕は元魔王。
今は魔族と人間のハーフ。
困ったことに、また、僕の親は僕に興味がないみたい。
さて、以前と同じように捨て子になるのも悪くはないけれど、こんなガリガリに痩せこけてボロを纏った僕を見たら、お父様とタートルさんはブチ切れるに違いない。
なんとか会うまでには、それなりの健康児童になっておかなくては。
ならば、ここでじっとしている理由もない。
迎えがないならこっちから行けばいいのだ。
父親が住んでいた家から抜け出して。
そのへんの川で水浴びして。
お洋服はゴミ捨て場にあったのを拾って。
森の果実をもいで。
大きな街にやってきた。
どこかでお金を稼ぎたいところだ、と思って街をぐるりと見渡す。
僕は知っているんだ。
パンを食べるのも、どこかに泊まるのも、家に住むのもお金がいるってね。
けれども困ったことに、こういう訳ありそうな子どもを雇ってくれるところはそうそうない。
ごくまれにいる善人……お父様のような、善良な人を除いて、基本は頭のいかれた奴らである。
うーん、どうしようかな?
「君、めずらしい瞳だね」
人身売買のたぐいは物理的に困ることが多いからお断りするね。
「君、かわいい顔してるね。僕とイイコトしようよ」
僕にとっては全然イイコトじゃないのでお断りするね。
「君さ、俺らのこと断って、こんなとこ来てどうなるかも想像できなかったの?」
「君たちこそ。ちょうどいいところまで誘導してくれてありがとね」
さて。
特に後ろ盾もないチンピラで助かった。
魔法の試し打ちもできたし、当座のお金もある。
なんて親切な人たちなんだろう。
冗談はさておき、彼らからぶんどったお金で服を買った。
食べものや薬は、また町の外で調達しよう。
よし、健康状態はともかく、訳ありやっかい者から家出少年くらいになれたかな?
てくてく街を歩く。
市場を歩くヒト、ヒト、ヒト。
おや、この人は剣を持ったまま歩いてる。
一昔前だったらこういうのはみんな勇者だったのだけれど……、いまは冒険者って言うんだね。
杖を背負っている人もいる。
さっきの人と知り合いみたい。
なるほど、戦える人は普通になったんだね。
僕は幸い人間よりの見た目だし、冒険者をやるのもいいかもしれない。
なんだって僕、敵をころすのは得意だもの。
カランコロン、鐘がなるよ。
ここは冒険者ギルドって言うらしい。
僕くらいの年頃の子どもはいないように見える。
まぁ、かまわない。
親の育児がよくなかったんで、正確な年齢は分からないと言えばいいだろう。
もしもし、受付のお姉さん。
冒険者になるには何したらいいのかな?
なんと、人間側の魔法もずいぶん発達していたみたいで、僕が子どもの魔族であることがバレてしまった。
とはいえ、この街にも魔族は何人もいるみたいで、それだけでは糾弾されなかったよ。
けれども、成人していないのに親の庇護下にないってのは、魔族も人もやっかい者扱いらしい。
わからないでもない。
親が探していたら誘拐扱いになってしまいかねないからね。
僕は魔族の冒険者チームがあるからそこに行くようにと言われ、彼らの拠点のドアをコンコン叩く。
困ったことになった、と思う。
僕は同じ魔族からの受けが悪いのだ。
魔王だった僕ですら、みんな薄気味悪い笑みを浮かべて、不要品を包装紙に詰めて送ってきたんだ。
肩書のないただの魔族の僕なんか、もっと嫌いだろう。
いきなり斬ってこなかった人間に敬意を示して、ここまでやってきたけれど、うーん、帰ってしまおうか。
僕は別に冒険者にならなくたっていい。
お父様とタートルさんにもう一度会えればそれで。
迷う僕の前で扉は開き、
「今開けますよ、……し、シルス……? シルスッ」
「タートルついに頭おかしくなったか? って、久しぶりシルス。生きて会えてよかった」
「ジェズ、シルスがここにいるんだ!」
「気持ちは分かるけど、そんなに強く抱きしめるとやっと会えたシルスが窒息死するぞ」
「えっ、ご、ごめんシルス……大丈夫か?」
僕たちはあまりにもあっさり再会した。
もちろん、タートルさんには大丈夫だと伝えたけれど。
お風呂に入ったときにガリガリの身体を見られちゃって、結局泣かれてしまった。




