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イは遺憾の『イ』~そのイカンの使い方、絶対に間違ってるんだからね!~  作者: 今田ナイ
思い出は浅緑色でメタリック(※小学生の頃)

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9/12

9.アブダクションの後日談。

  

  

 健太が姿を消してから数日の間、由美から話を聞いた警察と青年団によって、徹底した山狩りが行われた。しかし、彼らが里山の山頂で目にしたものは奇妙に焦げた円形状の倒木のみあり、健太の靴の片方すら発見することは出来なかった。


 時代錯誤ながらも、村人達は神隠しだと噂し合った。

 また山頂の特異な様子からか、すぐに全国ネットのワイドショーに取り上げられ、遊びで登った健太らが運悪く隕石の空中爆発の巻き込まれたのではと、専門家にもっともらしい推測をされる始末である。


 そしてランドセルをふたつ抱えて泣きながら里山を下りてきた由美も、色々と迷惑を被っていた。


 派出所に呼ばれ信じては貰えない話――宇宙船に連れ去られた――を何度も繰り返しさせられ、学校へ行けば行ったで、ついに健太を殺して山に埋めたなどと陰口を叩かれた。学校から足が遠退き自宅に引き篭もった由美を、誰が責められるだろうか。逆に気を遣われたのか、健太の両親にさえ問いただされることはなかった。


 幼馴染が円盤に攫われたなんて、自分でも信じられないと由美も思う。あの一件が自分の作り話で、本当は健太は滑落死で、目撃した自分はショックで記憶をねつ造した――とかの方がそれっぽいとさえ思い始めた、二週間ほど経った頃。


 


 学校に行くために五キロ歩く気力も無く、自室のベッドでゴロゴロしていた由美のところに、血相を変えた母親が飛び込んできた。


「ちょっと由美っ、テレビに健ちゃんが出てるわっ、お隣さんに電話しなくちゃ!」


 エプロンで手を拭きながら部屋を出て行く母親の後ろ姿を見送り、由美はパジャマ姿のまま半信半疑で居間に一台しかないテレビの前に行く。

 ちょうど夕方のニュース番組が流れていて、


『――出てきましたっ!』


 どこか外国の空港のような場所で、例の伏せた灰皿のような物体が鎮座していた。側面の一部が開き、中からぐにゃんぐにゃんしながら――身体の構造がいまひとつ不明である――出てきたのは、小柄でメタリックな宇宙服姿の彼らである。母親も見たというのなら、同じ場面を繰り返して放送しているのかもしれない。


『宇宙人らしき姿が出てくるのを確認出来ましたっ! あっ、一緒にアジア系らしい少年がいます。彼は一体何者でしょうっ!』


 連れ去られた時と同じTシャツに半ズボン姿のまま好奇心に目を輝かせて宇宙人と共に歩いている少年は、紛れもなく由美の幼馴染である健太だったのだ。


 のちに、彼らセレプトト星人と国際連合との間に友好条約が結ばれることになるわけだが、あの里山での一連の出来事が地球人とセレプトト星人とのファースト・コンタクトであったなどと、当時の由美が知るはずもなかった。


「……パスポート無しで、不法出入国じゃん……」


 すぐに背広姿の大人達に取り囲まれ、健太の小さな姿は見えなくなった。

 そうでなくても、パジャマの袖で涙を拭う由美の目は、涙が溢れて何も見えなくなっていたのだけれど。

 

 



 ――そして時が流れ、由美は大人になっていた。


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