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イは遺憾の『イ』~そのイカンの使い方、絶対に間違ってるんだからね!~  作者: 今田ナイ
思い出は浅緑色でメタリック(※小学生の頃)

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6.ロズウェル的な何か。①

 

 

 山頂とはいっても、標高の低いただの里山に標識や立て札があるわけがない。

 ただ、そこより高い場所がないから山頂と認識できるのであって、本来なら木々に覆われているため眺望など望むべくもないのだ。

 だが、由美が息を整えながら見た光景は、薄闇に包まれゆく空だった。


「…………なっ」


 思わず足の力が抜けるが、健太に左手首を握られているので倒れることはない。


 頂上付近の立ち木は、何故か中央から外に向かってなぎ倒されていた。

 そのせいで空が丸くスコンと抜け、西の空に金星が輝いているのが見えた。

 先ほどまで日が差し込んでいたに違いなく、どおりで登れば登るほど明るくなるわけだと由美は納得する。


 そして爆心地のように倒壊した木々の真ん中で、その物体……というより残骸は、青とも銀ともつかない淡い光を放って埋もれていた。


 空から降ってくる時は丸くてつるっとした外観だと思った由美だが、いまはうっかり落として割れてしまった卵の殻のように潰れている。残骸の断面は金属のような光沢があったが、角度によってはざらついた焼き物であるようにも見えた。


「これじゃ、中に何がいたとしても」


 とてもじゃないけど助からな……そこまで考え、由美は慌てて頭を振った。中に何かが乗っているわけがない、翼も何もないのに、空など飛べるわけがないのだ。


 未確認飛行物体は、未確認な飛行している物体に過ぎず、それを宇宙人の乗り物とするのは理論が飛躍し過ぎていると、小学五年生の由美は胸の内で繰り返した。


「……きっと、テレビの読者びっくり企画とかなんかでしょ?」


 由美は呟きながら、無意識に一歩退く。


「さもなきゃ、ネットの動画配信者が田舎の純朴な小学生を脅かそうとして、何処かに隠れてスマフォとかで撮影してるに違いないわ。そうでしょ、健太? アンタ、ネタのない動画配信者にメールとか送ったんじゃないの?」


 しかし当の健太は、由美の声などまるで耳に入ってないようだ。

 目を異様にキラキラさせながら、かの残骸へ一歩近付く。


「……ロズウェル事件みてぇだ」


 お互いの距離が開き、引っ張られてぴんと伸びる由美の腕。


 ちなみにロズウェル事件について、陰謀論に疎い由美が知ることは少ない。

 その昔、アメリカに落下した気象観測用気球を、墜落した宇宙人の乗り物だと思っている人達が一定数いるとかいないとか、その程度だ。


 都市伝説とか陰謀論が好きな男子達は、きっと信じているのだろう。


 不意に、何かを押し退けるようなギギギという金属音が薄闇に響き渡り、その拍子に由美は尻餅を付いてしまった。

 遠ざかる細っこい後ろ姿を見て初めて、手が離されていることに気付いた。


 そしてかの残骸が揺れている。

 まるで中から何かが出てこようとしているように。


「あっ、だっ……!」


 ――駄目だよ、危ないよっ! 健太っ!


 だがあとを追おうにも、すっかり腰が抜けてしまって足に力が入らない。

 ランドセルを背負ったままジタバタしている由美を尻目に、健太は倒壊した立ち木を危なげなく乗り越えてかの残骸に近寄る。


 そして何を思ったのかいまだ燻る残骸の裂け目へ、身体を斜めにして潜り込んでしまったではないか。健太が接近したことで、かの残骸が思ったよりも大きい――少なくとも潜り込める程度の大きさがあったことに、由美は初めて気付かされた。


 身動きが取れないまま、ハラハラして見守ること数分。


 健太は何かの両脇を抱えるように、ずるずると屋外に引っ張り出した。

 その物体を地面に横たえると、またすぐ中へ戻ってしまう。


 それは遠めにも、人型をしていることが分かった。

 ちょうど自分ら子供と同じような背丈身体の厚みをしていて、煤けた銀色の全身スーツのようなものにすっぽりと包まれている。


 もぞもぞと、蠢いていた。



(↓続きます)

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