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五月十五日 僕が高二になって初めて登校した日

 僕は、退院して久しぶりに登校した。

 先日、父から先生に事のあらましをあらかた伝えてもらっていた。母が亡くなったことも、僕がパニックになって精神病棟に入院していたことも。



 初めのホームルームの時間に担任の先生から僕についてある程度伏せられてクラスの皆に説明された。

 僕が家庭の事情で今まで学校に来れていなかったこと。僕の声はその事情によって多量のストレスで出なくなってしまったこと。そしてそれをあまり直接詮索してあげないでほしいこと。

 先生の説明の後、皆こっちをちらちら見てくるだけで、話しかけてくれる人はいなかった。生憎、僕が一年のときに作った友達は、全員クラスが離れてしまっていた。

 僕が入院してた間、クラスメイトは各々のグループにすでに所属していて、僕が入る余地などとうに無かったと言ってもいい。いや、グループが組み上げられてなくても僕は輪に入れなかっただろうな。だって、僕は会話が、言葉のやりとりができないのだから。

 でも僕にも話しかけてくれる人がいた。幼稚園からの親友の智也だ。幸運なことに、今年も同じクラスだった。


「なあ、お前がいなくて、俺すっごい寂しかったんだからな! 新学期始まってからもう毎日下駄箱確認してさぁ! だからさ、お前が来てくれてめっちゃ嬉しい!」


 智也の言葉に胸がいっぱいになった。僕も智也に会いたかったよ。そういってくれて嬉しい。感謝の言葉を伝えたくて口を開くも、



 やっぱり僕の口からは何の言葉も紡ぐことができなかった。



 その僕の様子を見て、智也は一瞬だけ目をそらした。でも、次の瞬間にはさっきの笑顔で僕に言った。


「筆談したら、お前も自分の気持ち、伝えられんじゃね? 俺さ、まじでいつまでも書き終わるの待つからさ、話したいこと書いてよ」


 そういえば忘れていた。声が出なくなってから僕は伝えたいことがあるときはノートに文字を書いて伝えている。僕は素直な智也への気持ちを書き連ねた。その間智也は紙から目を背けていてくれた。書いてる途中は読まないでくれる彼の優しさが嬉しかった。


『智也がさっき僕に話しかけてくれて、とっても嬉しかった。ありがとう。僕の声は出なくなっちゃったけど、そうなる前の感じで接してくれるとうれしいな。これからいっぱい迷惑かけちゃうと思うんだ。ごめんね。でも僕はいつまでたってもやっぱり智也の友達でいたいや』


 腕をつついて合図すると、智也が僕の文章を見る。左から右にせわしなく動くその目には段々と薄い涙の膜が張られていっていた。


「お前のこと迷惑だなんて思うわけないじゃねえか! もう! バカ野郎!」


 智也は半泣き半笑いだった。そんな智也を見てると、僕も笑顔になってしまう。智也が親友でよかったと、心の底から思った。


◆◆◆◆


「おかえり。学校は楽しかったかい?」


 父が家に帰った僕を出迎えてくれた。

 僕はその質問に頷く。声が出なくなってから、父は簡単なことを聞きたいときは、「はい」か「いいえ」の二択や、右左で答えられる質問をしてくれる。

 今日の夕飯、カレーがいいなら右、シチューがいいなら左を指さして。とか、こんな感じに。僕から伝えたいときや、父からのどうだった?などの答えが二分化できない曖昧な質問は、お互い新しく作った連絡ノートに書く。


 自分の部屋に向かう。そして真っ先に日記を書く。事故が起こる前からの僕のルーティンだ。毎日欠かさず日記を書いていた。あのパニックを繰り返していた日々以外は。だから、僕の日記にはあの頃の記述がなく、旅行の帰る日の前日までから一旦途切れている。

 今日のこともばっちり書き終わった。


 明日の予習や、夕飯など色々済ませて、僕の声を失ってからの登校初日は終わった。

鳩森です。

いやあ、本編が始まるまで…長い長い。

早く悪魔ちゃんを登場させたい一心です。

回想があと1話だけ続きますが、お付き合いください。


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