入学式 シビル視点
とうとう、入学式の日がやってきました。
けれど、不思議と緊張はしていません。
それどころか、心は穏やかで満ち足りています。
何故なら——
この数年間で、ランベルト様の心をしっかりと掴み切ったから!!
元々、勉学を通じて築かれた関係でした。
けれど、いつしか学問だけではなく、プライベートな時間も共に過ごすようになり——
私たちは、互いにとってかけがえのない存在となったのです。
私は知っていました。
——ランベルト様が、ご家族の前では決して心を開いていないことを。
幼い頃から厳しく育てられ、家の中でさえも気を張り続ける彼の姿を見て、私は思ったのです。
彼が、安心して帰れる場所を作りたい。
そんな思いから、私はまだ怖いもの知らずだったころに、一つの行動を起こしました。
ランベルト様のお父様——現宰相閣下へ、お手紙をしたためたのです。
手紙には、ランベルト様がどれほど素晴らしい方なのか、どれほど努力なさっているのか、
そして——彼が、ご家族の愛を心から求めていることを。
そして、数日後。
お会いしたランベルト様は、それはもう……今までにないほどの優しい笑顔を浮かべていました。
「……ありがとう、シビル。」
その言葉だけで、私は全てを察しましたわ。
ご家族の皆様が、ランベルト様に今までの厳しい態度を詫び、関係が改善されたのだと。
後日、ランベルト様から「両親から預かった」と手渡された一通の手紙。
それを私室でそっと開くと——
そこには、感謝の言葉が、幾重にも綴られていました。
——私の勇気ある手紙が、一つの家族をつなぎ直せたのです。
それからというもの、私はランベルト様のご両親を 「お義父様」「お義母様」 とお呼びするようになりました。
……いえ、それだけではありませんわ。
もはや、私たちは本当の家族。
もう、ランベルト様は孤独を感じることはありません。
厳しかった家族の愛を得て、そして、私の愛情を一身に受けて——
彼は、今、とても穏やかに、健やかに育っています。
それは、ヒロインが付け入る隙もないほどに。
私は朝早くから馬車を準備し、ランベルトを迎えに行きました。
婚約者である私が、共に学園へ向かうのは当然のことです!
彼の屋敷に到着すると、静かな玄関先にランベルトの姿がありました。
私が用意した馬車を見つめる彼の灰色の瞳が、わずかに驚いたように揺れる。
「……何故、君がここに?」
「決まっておりますわ。ランベルト様をお迎えに上がったのです。」
そう微笑むと、彼は一瞬だけため息をつき、それから小さく肩をすくめる。
「……好きにして。」
呆れたような声とは裏腹に、彼は静かに馬車へと乗り込んだ。
その隣に私も座り、馬車がゆっくりと学園へと向かって走り出す。
「ランベルト様と共に学園へ向かえるなんて、とても光栄ですわ。」
そう言うと、彼はちらりと私を見て、少しだけ視線を逸らした。
窓の外を眺める彼の横顔が、どこか穏やかに見えるのは気のせいかしら。
ぜーったい、幸せになる!
圧倒的理系




