入学式 ヘレナ視点
ついに、この日がやってきました。
——学園の入学式。
この学園で、彼とともに過ごせる日々が始まるのです。
マクシミリアン様は新入生代表としてご挨拶なされるため、彼と顔を合わせるのは学園に着いてから。
私は兄であるベテアル兄様とともに、馬車で学園へ向かいました。
「緊張しているのか?」
前に座る兄様が、少しだけ表情を緩めて私を見ます。
「ええ。でも、それ以上に……嬉しくもありますの。」
あの日、前世の記憶を思い出してから——
私とマクシミリアン様の関係は、以前よりも良くなった。
彼が持つ独占欲の強さも、その甘えたがりなところも、私にとっては愛しいもの。
そして、何より——
彼を甘やかして差し上げられるのは、わたくしだけ。
それは、自負でもあり、誓いでもあるのです。
私は彼にすべてを捧げると誓ったのだから。
……ええ、気づいておりますわ。
私のこの愛情が、世間一般の枠を少々逸脱していることくらい。
けれど、それが何か?
私がこの手でマクシミリアン様を包み込み、誰よりも満たして差し上げることができるのなら、それでいいのです。
馬車の窓から差し込む光が、私の心をさらに昂らせる。
そのまま物思いに耽っているうちに、馬車は学園の門をくぐっていました。
入学式の会場にて——
並べられた座席に座り、学園長の挨拶に耳を傾けながら、私は自然と彼の姿を探してしまう。
そして——
「……!」
壇上に立つマクシミリアン様。
凛々しく、堂々としたその姿。
流れるように紡がれる言葉。
きっと今、この場にいる令嬢たちは彼に憧れの眼差しを向けているのでしょう。
でも、知っていますわ。
彼が私にだけ見せる顔を。
弱さを覗かせる姿を。
甘えた声で私を呼ぶ時の、心から安心しきった瞳を。
——その瞬間、私は自然と微笑んでしまいました。
マクシミリアン様は、わたくしのもの。
式が終わり——
マクシミリアン様は、一目散にこちらへ駆け寄ってくださいました。
「マクシミリアン様、とても格好よかったですわ。」
そう声をかけると、彼はふっと柔らかく微笑む。
「そうかい? うれしいなぁ。」
その顔が、あまりにも幼くて可愛らしくて、思わず頬が緩んでしまう。
そんな彼を見つめながら、私はふと口を開く。
「ねぇ、マクシミリアン様?」
「ん? どうしたんだい?」
彼が首を傾げる。
そして——私は、静かに囁いた。
「わたくし、きっと貴方様がほかの女性をお好きになられても……手放せませんわよ。」
絶対に。
その言葉に、彼は一瞬目を見開いた後——
「……素敵な響きだね。」
そう、甘く囁く。
「それは僕も一緒さ。」
彼の瞳に浮かぶのは、まるで独占欲を隠そうともしない、甘い光。
ああ、この笑顔がたまらなく愛おしい。
彼のこの執着が、心地よくて仕方がない。
だからこそ——
もしも、ヒロインさん。
あなたが私の最愛に手を出そうものなら……
わたくし、全力で阻止させていただきますわ。
——ふふっ。
数年間、マクシミリアンの甘えん坊ヤンデレにさらされていたら、彼女の思いはさらにつよく進化しました。




