公爵令息ルートの悪役令嬢タリアside➃
「タリア、ここにしようか?」
城下町の中心にある小さなカフェ。アンティーク調の木製の扉を開くと、甘くて香ばしい焼き菓子の香りが漂ってきた。ベテアルが扉を押さえ、タリアを優しくエスコートする。
「ええ、とても素敵な雰囲気ですわね。」
席に座ると、窓から差し込む陽光がベテアルの美しい紫の髪を淡く照らした。
彼は長身で上品な佇まいをしているのに、どこか優しげで、穏やかな雰囲気を纏っている。
二人はカフェの看板メニューであるふわふわのショートケーキを頼んだ。
ふんわりとしたスポンジに、甘さ控えめの生クリーム、そして鮮やかな赤い苺が添えられている。
「いただきます。」
ベテアルはフォークを手に取り、ケーキを一口食べた。
「……おいしい。」
素直にこぼれた言葉に、タリアは自然と微笑んだ。
彼の幸せそうな横顔を見ていると、ふと気づく。ベテアルの口元に小さくクリームがついていた。
(あら、可愛らしいわね……)
タリアは軽く息をつき、手を伸ばした。
「ベテアル様、じっとしていて。」
「えっ?」
何が起こるのか分からず、ベテアルは目を瞬かせる。その間に、タリアは迷いなく彼の唇についたクリームを指で拭った。
(……柔らかいわね)
そのまま、何のためらいもなく、指についたクリームを口に含む。
「――っ!!」
ベテアルは息を詰まらせ、紫の瞳を大きく見開いた。
「ん……甘くて、おいしいわね。」
まるで何事もなかったかのように、優雅に微笑むタリア。だが、ベテアルのほうはまったく落ち着いていなかった。
「タ、タリアっ……!?」
耳まで真っ赤になっている。まるで湯気が立ちそうなほど、羞恥に染まった表情。
(なんて純粋なのかしら……)
タリアは心の中でくすりと笑う。可愛らしくて、いじらしくて、そんなベテアルにますます惹かれてしまう。
「どうしたの?」
「いや、あの……っ、そんなことを、当たり前みたいに……!」
「好きな人に積極的になるのは当然でしょう?」
澄ました顔で言うタリアに、ベテアルはさらに言葉を失った。
彼はタリアを見つめながら、心の中で確信する。
(僕は、この人には……きっと敵わない……)
タリアへの想いが、またひとつ深まるのを感じていた。
御姉さまって言いたい感じですね
ひゅう~~




