公爵令息ルートの悪役令嬢タリアside③
ベテアルとタリアが城下町を歩いていると、にぎやかな市場の先で小さな騒ぎが起こっていた。
「……?」
ベテアルが目を向けるよりも早く、タリアはその場へと駆け出していた。そこには、若い女性が貴族らしき男たちに絡まれ、困惑した表情を浮かべている。
「おやめになって!」
タリアの凛とした声が響き渡った。
男たちは驚いたようにタリアを振り返る。しかし、彼女の身なりは上品でありながらも、彼らにはその正体がわからなかったのだろう。
「なんだ、お嬢さん。これは俺たちの楽しみを邪魔するつもりか?」
「貴族ならば、貴族らしく振る舞いなさいませ。このような行い、恥ずべきものですわ!」
毅然とした態度で男たちを睨みつけるタリア。その堂々とした振る舞いに、一瞬男たちはひるんだ。しかし、すぐに表情を歪ませる。
「お前、俺たちに口答えするのか? 身の程を——」
男の腕が振り上げられた瞬間——。
風を切る音と共に、間に割って入ったのはベテアルだった。
「……やめておけ。その手を下ろせ。」
静かでありながらも、鋭い声色。その目は冷たく光っている。
「なんだ貴様は……っ!」
「君たちは貴族の誇りを忘れたのか?」
ベテアルは涼やかな表情を崩さぬまま、ひとつの手刀で男の手を払いのけた。次の瞬間、男たちはバランスを崩してよろめく。
「ぐっ……!」
「なんだこいつ……!」
男たちは狼狽しながら後ずさる。ベテアルは微かに眉をひそめた。
「弱い者を弄ぶことが、貴族の務めではない。恥を知ることだな。」
その声音には、凛とした響きがあった。男たちは震えながら逃げるように去っていく。
助けられた女性は涙ぐみながらタリアとベテアルに感謝の言葉を述べる。
「本当にありがとうございました……!」
タリアが優しく微笑んだ。
「もう大丈夫ですわ。」
ベテアルはふと、タリアの横顔を見る。真っ直ぐに人を救おうとする姿。危険を顧みず、誰かを助ける勇敢さ。それは、まるで英雄のようで——。
(……綺麗だ。)
胸の奥が熱くなる。タリアがベテアルの方へ振り向く。
「ベテアル様、素敵でしたわ!」
その無邪気な言葉に、ベテアルは息を詰まらせた。タリアの称賛が、まるで心に深く響くようで——。
「……そんなに見ないでくれ。」
思わず目をそらす。
「ええ? どうしてですの?」
「……その、落ち着かないから……。」
タリアはくすりと笑い、ベテアルの手をそっと取った。
「わたくし、貴方様のおかげでより貴族の誇りを感じましたわ。」
その手の温もりに、ベテアルの心拍が高鳴る。
——タリア・ファヌウスという少女は、やはり特別な存在だった。
(俺は……彼女のことを……?)
自覚し始めた想いに、ベテアルはそっと息を飲んだ。
タリアは、後にヒロインがすることより勇敢で、かっこいいことをしました。
なのでこの先ヒロインの善行を目の当たりにしても、迷子の子供がちゃんと親に巡り合えますようにと祈るだけだと思うでやんす。
せめてこの2人は純愛、、にしたい。




