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幕間
そろそろ終幕が近づいてきた。太陽も真上に昇り、辺りはすっかり昼の陽気だ。まもなく出掛けねばならない。
例年に比べれば暖かいが、まだ春先なのでコートは着た。プレゼントも持った。わたしを自由にしてくれた人のために著述した本だ。新鮮な紙の匂いは、追懐を甦らせる。図書館の棚に並ぶ蔵本からも似通った香りがする。どこの歴史書にも記述されぬであろう世紀の推理ショーが催された舞台も、同様の芳香が戯れる場所だった。
どうか難しく考えないで頂きたい。これは誰にも解けないが、実に簡単な物語なのだから。