終章−3 シャラの予感
数日後の朝、ルーミー家に少女が訪れる。ルーミー夫妻が、亡くした娘へ祈りを捧げるために家を出る直前に。
ボロボロのローブを纏う少女。
片腕、片耳、片眼を失った少女。
少女は五年間の礼を伝えたら、あの草原に戻るつもりだった。
――私には、あそこしか居場所はないから。
醜いこの姿を見せるのは申し訳なかったが、どうしても直接礼を言いたかった。
自分の姿を見たルーミー夫妻が愕然としたのは、嫌でも分かった。
やはり、来るべきじゃなかったな……。
後悔した少女に、静かな声が掛けられる。
「……おかえり、シャラ。なにしてんの? 早く上がりなさい」
少女はしばらく何も言えなかった。
ルーミー夫妻も何も言えなかった。
やがて少女の左眼から、涙が一筋流れた。
「た……、ただいま」
少女は自分の家に帰った。
シャラは自分の家に帰った。
シャラは不思議に思う。
なぜだろう……。
なんの根拠もないのに幸せになれそうな予感がしている。
シャラ・ルーミーの人生がまた動きはじめた。
最後までお読み下さり、ありがとうございました。
御感想、評価(★)いただけると励みになります。
よろしくお願いします。
御感想には必ず返信します。




