表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
腐食姫  作者: 野中 すず
44/49

4‐10 腐食するシャラ


 サナは、床に座り込み激痛に悶え苦しむ少女を離れた位置から見ていた。        

 少女は、大量の血を被ったかのように真っ赤に染まっている。

 今ならサナでも少女の首を()ねる事は出来そうだが、「有効範囲」に入るつもりはない。

 そもそもこんな化け物、首を刎ねたら死ぬとは言い切れない。


 焦ってはいけない。放っておけば毒が回り、こいつは死ぬ。確かに私が作った毒は効いている。私を油断させるための演技には見えない。



 そんな考えの(もと)、サナは何も新たな行動に移らなかった。

 しかし、サナには信じられない事が起きた。


 少女が立ち上がった。真っ直ぐサナを赤い瞳で見ながら。


 何故だ⁉ 何故そんな力が残っている⁉ あのドラゴンに使用した毒の遥か上の猛毒なのに⁉



 少女は瞬き一つしない。その表情から、今も激痛に耐えているのはサナにも伝わってきた。

 サナも、少女から視線を外せない。

「睨みあっている」とも「見つめあっている」とも言えない状況で、サナは気付く。


 少女の右肩から、ローブを通して湯気が上がっている。

 ローブを染める赤い毒の粉末が、泡立ちはじめている。

「ふっ……」

 少女が小さく笑った。

「ふっ……、ふふふっ、あははははっ!」

 狂ったように笑い続ける。


 なに? 痛みのせいでおかしくなったの!? それとも死の恐怖で!?


「あああっ! ああああああっ!」

 笑いは絶叫に変わった。

 

 ――――ドスッ


 サナは見た。

 少女の右腕が床に落ちたのを。

 右肩から先が丸ごと落ちた。


 床上で右腕は変色し、泡立ち、骨が覗きはじめた。


 サナは少女の意図を理解し、壁に背を付けたままズルズルとへたり込んだ。

 事前に考えていた「失敗したら窓から逃げる」など意識から完全に消し飛んでいる。


 この化け物、毒が全身に回る前に右腕ごと捨てた……。


 少女が少しずつ、サナに歩を進める。全身を真っ赤に染める毒により、速度は非常に落ちている。毒の効果は、間違いなく表れている。

 

「有効範囲」を確認するためにサナが小屋中に置いた花達。その(ほとん)どは、サナが作った毒の粉末を被り、枯れていた。生き残っていた花も、少女が進む度に腐り果てていく。

 今度はサナが小さく笑った。

 もはや確認しても意味がないものだったから。


 多分、もう少しで私も「有効範囲」に入る。



 ――――私は死ぬわね。


 


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ