4−4 覚悟するサナ
スラムでの惨劇の情報は、当然サナにも届いた。
四人の腐乱死体。昨夜まで間違いなく生きていた男達が、一晩で腐り果てていた。
若い女。
黒い髪。
黒いローブ。
夫のギルテが、心配そうにサナの顔を覗く。
「大丈夫か? 顔、真っ青だぞ?」
「……うん、大丈夫。怖い話よね」
サナは誤魔化した。
本当の理由など話せる訳がない。
間違いない。あのとき、こそ泥も、木も、草もまとめて腐らせたあいつだ。
来る。私を殺すために。
サナのこめかみに汗が一筋伝った。
――――
その夜――
サナは工房で一人、椅子に座っている。作業台上の蝋燭の炎を眺めている。
ロードンはあいつに殺された。
ドラゴンを倒せるほどの男なのに。
一切妥協せず、剣に向き合ってきた男なのに。
そんなのと私が戦っても、力では相手にならないだろう。
私の、私にしか出来ない方法で戦わないと……。
あいつを殺す。
私はあいつを殺し、ギルテとアイノと生きていく。
私が終わらせる。
サナは覚悟する。
大量の鉢植えの花の影が揺れる工房で、天井と床を交互に眺めた。
作業用エプロンのポケットには小さなガラス瓶が二つ。そのうちの一つは、特注品の薄いガラスの瓶。
いつでも構わない。
いつでも来い。
「どうせ来るなら、さっさと来なさいよ」
サナが一人ごちたとき、工房の扉がノックされた。
サナは小さく笑った。自分でも理由は分からなかった。




