表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
腐食姫  作者: 野中 すず
35/49

4−1 スラムの男達


 サナが作った薬によって、街が抱える二つの問題のうち、一つは数週間後には沈黙した。

 しかし、残る一つは何も変わらない。

 スラムには相変わらず、盗みにも人殺しにも抵抗がないような連中が集まり、生活をしていた。

 彼らは、常に街の外で悪事を働く。「街の住人には危害を加えない」が不文律になっていた。

 理由は単純で、「住人を敵に回すと厄介な事になる」と知っていたから。この街の住人全員に、一致団結されたら多勢に無勢、皆殺しにされてもおかしくない。


 そのスラムの怪しい酒場。提供される酒が盗品か略奪品なら、支払われる金も盗品か略奪品の酒場。

 そんな酒場にお似合いの連中が集まっている夜。

 テーブルで、カードを使ったギャンブルを興じる男達。

 カウンターで悪事の計画を練る男達。

 会話もせず、ただ酒を飲み続ける男達。

 薄暗い店内には殺伐とした空気が(よど)んでいる。


 入口が開いた。若い女が一人で入ってきた。

 真っ黒い髪。

 赤黒いローブ。

 殆どの男達は店員も含め皆、驚いた。無言になってしまった。


 この女、馬鹿か? 死にてえのか?


 女は、入口から一番近いテーブル席へ向かう。テーブルには若い男達が四人、酒を飲んでいた。ローブ一枚の女の身体に下衆な視線を向けている。


「この街のマヤという薬師を探しています。知りませんか?」


 女の質問にまた、男達は驚いた。しかし、四人は目を合わせるとニヤリと笑った。小さく頷いた。


「ああ、そいつの店ならよく行く。案内してやるから付いてきな」


 男達は代金をテーブルに置き、立ち上がった。

 四人で女を囲むようにして店を出る。



 店内で若い店員がテーブルに金を取りに行きながら、溜め息混じりに呟いた。

「あいつら、うまい事やりやがったな。あの馬鹿女も可哀想に」

 それを聞いた白髪頭の客が酒を一口飲み、溜め息混じりに呟いた。


「そうか? オレはあの女を見たとき、何故か小便漏らしそうになったけどな」

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ