29/49
2−19 敗走
サナは洞窟を抜け、山を駆け下っている。一度だけ背後の様子を確認したとき、山頂付近から煙と光が小さく漏れていた。あの洞窟の先の空間にあった、「空が見える大穴」から漏れているらしい。
誰かが火を放ったな!? そんな事で、あいつを退治出来るとでも思ったのか!
このとき、サナは確信した。
ロードンが死んだ事を。
ロードンが生きていたら、こんな暴挙が許される訳がない。
サナは前のみを見て、走り続けた。
汗まみれ。
泥まみれ。
更に、走りながら枝などで出来た小さな傷だらけの身体で。
後ろは二度と見ない。
そんなのは時間の無駄。少しでも前に進むべきだ。
サナは、振り向かない理由を、そう思いたい。
本心は違う。
振り向いて、もしあいつがいたら……
恐ろしくてたまらなかった。




