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2−15 サナの諦め
森を抜け、洞窟へ飛び込み、暗い一本道をサナは走り続けている。息切れ一つしていない。
「毒の知識」と美貌ばかりが注目を集めていたが、サナの身体能力と戦闘能力も決して低くない。
「護身のため」と、ロードンから稽古をつけてもらった期間は短いものではなかった。
走りながら考えている。
ロードンは勝てない。死ぬだろう。
ロードンの剣――、銀を主体とした特殊な合金の剣。
銀は腐る。
真っ黒に変色し劣化する。
――なら、ロードンの剣が一般的な鉄だったら勝てるのか?
無理だろう。
サナの頭に、ボロボロに錆びた茶色の剣が浮かぶ。
あの「能力」、木も草も人間も腐らせる能力。「金属には無力」などと甘い期待は出来ない。
サナは再び同じ事を考えた。
ロードンは死ぬ。そして私には助ける力はない。
大した悲しみも感じない。そんな自分を薄情だとも思わない。
ロードンには、貸しもなければ借りもないのだから。
「一回くらい、抱かれてやればよかった」
心にも無い事を呟いてみた。




