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腐食姫  作者: 野中 すず
23/49

2−13 ロードンと「腐食の王」


 ロードンの腕に鳥肌が立った。


 ――なっ、なんだ!? 


 従者達の歓声と賞賛の中、ロードンは背後の森からただならぬ気配を感じている。


 何かが来る。何か恐ろしいものが。


 草原の中央、ドラゴンの亡骸近くまで素早く移動する。その様子を見た従者達も沈黙し、周囲を見回す。彼らも生命の危機を肌で感じ始めた。


 気配が迫る方向をロードンは睨み続ける。やがて二本の木に異常が発生した。幹の表面が朽ち始めた。その朽ちる面は広がり、幹は細くなっていく。

 葉の色が緑から紫へ変わり、グズグズになって散っていく。

 地に落ちた幹の欠片も葉も液状になり、同じく液状になった地面の草と混ざり始めた。


 ――――びちゃり


 何者かの足音が腐り果てた木々の奥から聞こえた。少しずつ近付いて来る。


(みな)! 退けっ!」

 ロードンは叫んだ。

 

 剣を構える。身体の正面に、身体の中心に、二本の腕で真っ直ぐ。


 なにか()()()()()()()()が来る。こいつらは役に立たない。

 オレがやらねば――――


 恐怖で動けなくなっていた従者達だったが、一斉に走り出した。足音が聞こえる方と、反対方向の森へ逃げ込む。


 ロードン一人、ドラゴンの亡骸の前で、剣を構えて待つ。


 お前が()()なんだろう?


 びちゃり――、びちゃり――


 腐った植物を踏む音が続く。



 木々の隙間から現れた者の姿を、ロードンは信じられなかった。


 少女だ。赤黒いローブを身に纏っている。少女の身長に対してローブは大きく、袖は少女の腕を完全に隠し、裾は地に着いてしまっている。

 俯いているため、少女の表情は見えない。


 少女が歩を進める度に、少女の前方の草が腐り果てる。

 少女がロードンに迫る。

「腐食」がロードンに迫る。

 不意に少女が顔を上げた。


 ロードンはその眼を見て、絶望に身体を震わせてしまった。



 真っ赤な瞳が怒り狂っていた。

 


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