2−7 赤い粉
――この男がシャルを⁉ この男がシャラの!?
ラストラ自身、理解出来ないほどの怒りを感じていた。次の瞬間には立ち上がり、目の前の男を八つ裂きにしようとしていた。男は身を翻し、逃げようとした。
涙を流しながら「穢れた身」を詫びるシャルの顔が浮かんだ。
シャルが着ていたローブを受け取ったときの悲しそうなシャラの顔が浮かんだ。
許さん……! 絶対に許さん!
ラストラが景色が歪むような咆哮を上げたとき――
ガシャン!
何かが投げつけられ、自分の身体で割れた事にラストラは気付いた。
中に入っていたらしい赤い粉が、黒い鱗を染めている。
それは次々と、あらゆる方向から大量に飛んできている。
怒りにまかせて、ラストラは長い尾で全て薙ぎ払った。
空中で赤い粉が爆発的に拡がり、舞い落ちる。
真っ赤に染まっていた。
ラストラの身体が。
ラストラが気に入っていた草原が。
なんだ? この赤い粉は……?
少しだけ冷静さを取り戻したラストラは、自分の身体と周囲を見た。
何の変化も感じない事が余計に疑問を強くする。
匂いもない。
口にも多少入ったが、味もない。
息苦しさもない。
そんなラストラの身体に突然、今まで経験した事がない激痛が走る。
「腐食の王」でさえ、叫びそうになる激痛。
視界の端には、転がるように逃げていく男がいた。




