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そばにいること

作者: つだ

「スタバなう。」

会社用スマホのショートメールで由美に連絡した。

「はたらけ」と1分も経たないうちに返事があった。

「働きたくない、しんどみー。」

「あたしめちゃくちゃはたらいてんだけど。所長にチクリまーす。」

「終わったら飲み行かない?」

「おけ」

「19時半に、いつものとこで。」

「はーい」


おれも時間まで働くか。と思った時にスマホが振動してショートメールが届いた。

「佐藤、お疲れ様。急ぎで連絡したいことがあります。」

なんだろう。サボってるのがバレるわけないしな。とあれこれ考えながらまだ温かいアメリカンワッフル急いでかきこみ、アイスコーヒーを一気飲みしてスタバをでた。


「お疲れ様です。佐藤です。」

「すまんな忙しいところ。」電話越しに空港のアナウンスが聞こえる。

「いえ、どうされたんですか?」

「喜べ。佐藤。昇進だ。これから、東京の支店への異動だ。」

「...有難いです。」

「あれ?昇進、あまり嬉しくないのか。ずっと異動の希望も出していただろう。」

「いえ、突然だったのと、時期が異例だったので。」

「ああ、そうだな。時期的にはものすごく異例なんだが、これから出る新製品の立ち上げで新しい部署を立ち上がることになったそうなんだ。そこで、お前のこれまでの営業成績と社内の評価から新しい部署の副所長として頑張ってほしいとのことだそうだ。」

「わたしで良いのでしょうか。」

「適任だと思うぞ。おれとしては今の営業所に残って欲しかったが、昇進までさせてもらえるならお前にとっても良いわけだし。応援するしかないな。」

「わかりました。返事はいつまでにしたらよろしいでしょうか。」

「ほぼ決定なんだけどな。明後日までに本社にお前の意向も含めて伝えることになっているから、近々で悪いけど、早めに返事をもらえると嬉しい。じゃ、またな。」

なんだか、実感が沸かなかった。それとぼんやりと由美のことを考えながら、もう一度スタバに戻った。


「良介おつかれー。今日まじ疲れたわー。生ビール頼んどいてくれた?」由美がやつれた顔をしながら、テーブルについた。

「今日の得意先がさー、明らかに他社製品のことで怒ってたんだけど、勘違いしてうちの会社の製品だと思ってめちゃくちゃキレてきててさー、ほんと大変だったんだよ。」

「まあな、あの会社、うちの部品似てるもんね。」

「本当、まいっちゃうよ。」

「こちらも報告あり。」

「なになに?」

「実はさ、昇進が決まった。」

「えっ?!すごーい!!!おめでとう!!!昇進っていっても熊本エリアは上のポストに空きがなかったよね?」

「東京にいくことになった。」

「東京?!」由美の顔が一瞬曇ったように見えた。

「新しい部署をつくるんだと。そんで副所長をしてほしいらしい。」

「すごいじゃーん!おめでとう!!良介ずっと昇進したいし、東京ではたらきてーって言ってたよね。どっちも叶ったじゃん。」

「さんきゅー。でも実感湧かなくてさ。今日なんかわりとさぼってたし。おれなんかがって思ったりもして....。」

「当然いくでしょ。いかない理由がないじゃん。」

「さみしくなっちゃうよな。」少し冗談混じりに言った。

由美に会えないのが。と言いそうになった。


「ほんとだよー。なんだかんだ、良介と飲みに行くことが多かったしね。うわ、あたしひとりになっちゃうんだー。きつーい」由美もふざけながらそう言った。


おれは入社後、熊本に配属された。3年後に同期の由美が宮崎から熊本に異動になって、それからよく仕事終わりに飲みにいくようになった。その間、お互いに付き合っている人がいた時期もあったが、今はいない。恐らく由美もだ。最近由美といると心地よいと感じていた。


「じゃあ、今日はお祝いだね。第1回目の。」

「第1回?何回もしてくれる予定なの?」

「もちろん。でも奢るのは今日だけ。」

「そうですか。それはどうも。」


お互いそこそこ飲んで、店を出ることにした。お互い駅近くに住んでおり、途中まで一緒だが、由美を家まで送るとかそういう習慣はない。


「だいぶ飲んだな。お祝いとか言ってワインのボトルをあけてくれたけど、ほとんどお前が飲んだ挙句、金足りないとか面白すぎるだろ。」

「ごめんごめん、なんか良介の将来が明るくなったのが、自分もうれしくなっちゃって、すっごい飲みたくなったんだよね。第2回はあたしの完全奢りに変更しまーす。」

「そりゃどうも。」


「由美...。」

「うん?」

「明日には会社に返事するんだ。」

「早いね。」

「おれ、頑張ってこようと思う。」

「おーう、いってこい。東京でボコボコにされたら話くらいは聞いたげる。」

「でもな、やっぱり東京にいきたくない理由もあるんだ。」

「うーむ...あたしに会えないとか?」

由美に言わせた。

「あーうん。まあ、どんだけ長く一緒にいたと思ってんだ。さみしいに決まってんだろ。」

「良介は、本当にさみしい...?」

「うん。」

「由美は?」

「あたしも...。」


由美がそう言った瞬間、由美の肩を抱き寄せぎゅっと抱きしめた。

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