5話:口が滑りました
おぉ、少しずつですが、話が進んできました。
さぁ、樹が選んだのはどっち?
私が出した答えに、とりばぁーは嬉しそうな表情をしているような気がした。
未だに鳳凰の姿をしているため表情が読み取れにくいのだ。
私が出した答えは・・・・。
「私は、男として生きていきます。」
そういったのだ。間違いなく私の口から出た答えだった。
でも、本当は違う。こう、言いたかったんじゃなかった。
(おぉい、私どうしたんだ?「女として生きていきます。」って言いたかったんじゃなかったのか?)
そう、まったく逆のことを言いたかったのに、口から出たのはこの言葉。
(もう一度言い直せば、まだ間に合う!!)
そう思って、再度言おうとすると。邪魔が入った。
すっげぇ邪魔が入ったのだ。
「失礼します!!護子が村の入り口にいます!!
樹さん、お早くお戻りになったほうがよろしいかと思われます。」
入ってきたのは、若い青年。一緒に食事をしたやつらの一人である。
(またしても、邪魔をしたな!ごしとやら!!)
「それは大変じゃなぁ~。樹、自分の心に嘘をつくことなかれ。さぁ行くのじゃ。」
そう言って、とりばぁーは私を家の外へと追いやった。
村の入り口から、このとりばぁー宅では結構距離があるのだ。
ついでに、私が借りている家はとりばぁー宅よりもっと遠かった。
つまり、入り口にいるごしとやらに見つからずに帰れるというわけだ。
「なんか、変な風に追い出されたなぁ~。しかも、間違えを正せずに帰っているわけだし。それに、すでに自分の心に嘘をついている気がするのだけれど・・・。取り合えず・・だ。覚えていろよ!!五氏!!」
漢字が違うといわれそうだが、今はそんなことはどうでもいい。
取り合えず一旦家に帰ればなんとかなると、若い青年は言っていた気がする。追い出されるときに・・。たぶん。
家にの近くに来たとき天羽が寄ってきた。
「お待ちしておったぜよ。」
「敬語使うなら最後まで使えよ。」
「それは、人に言えたことではないじゃろうて。」
「そうだけど・・・。」
「ンなことよりじゃ。さっさと入らんか。護子が来ておるんじゃろう?」
「そうだった。」
「準備はできておるよぉ~。」
「そういやぁ、朝言っていた準備ってコレのことだったのか?」
「それ以外に何があるのじゃ?」
「や、でも、どっち選ぶかわかんねぇ~じゃん。」
「選ぶとは??選ぶも何も無かろうて、はよ入って着替えしゃんせ。その格好は妙に目立つ。」
「わかったって。ってか、妙に目立つって何だよ。」
家の中に入るとなんとも見事に男物の衣服やら刀やら何から何までそろっていた。
そう、そろっていたのだ。
(・・・・。こっちを選ぶと思っていたのか?いや、まさか・・・そんなことはぁ~)
ないとは言い切れなかった。だから、少し気になったことがあったので聞いてみることにした。
そう、少しだけだ。まさか変な勘違いをしていたわけではないだろう。
「私の性別はどっちだと思う?」
いきなりこんなことを言った私に驚いたのだろう、天羽の目がパチパチしていた。
今の天羽は鳥の姿をしている。そんなのが可愛らしい仕草をしていると普通ならかわいいと思うだろう。
でも、今の私にはそんなことはどーでもよかった。
(そう、由衣らへんの女の子ならかわいぃ~などとのたまうのだろう。でも、問題はそこじゃない。)
「面白いことを問いますなぁ~。」
「面白いことなんかじゃない。これはまじめな話だ。(私にとって)」
「ふむ、一郎が間違った覚えをしようをしておったので、ちゃんと正したぞぇ。」
一郎とはこの村の数少ない人間の一人である。そもそもその一郎が何を間違えたのだろうか。
いや、今は正した言葉が気になる。嫌な予感がした。すごく。
「なんと言って正したんだ?」
「樹は、間違ってもお・ん・ななどではないと。」
「ほう、もう一度言ってみろ。(きっと今のは聞き間違えさぁ)」
このときの私は怒り度マックスだったと思われる。
「ですから、女などではないと。」
躊躇いもなく、2回言いやがった天羽を潰したろうかっと思ってしまった私がいた。
「私は・・・私は・・・女だぁ~~~~~!!!!」
「な、なんと!!」
私の告白に心底驚いたという声を出しまた、羽をばたばたさせていた。
いくらなんでも、それはひどいと思う。
「いったいどこが男に見えるって?!」
「ほう!言葉遣いから物腰、オーラまで男ですじゃ!」
「あんだとぉー。言葉遣いはわからんこともないが、物腰ってなんだよ!?オーラって見えねぇだろ!!」
(無茶苦茶言うんじゃねぇーーー!!)
しかし、そんな怒涛の怒りも天羽には意味をなさないらしい。
てきぱきと、着替えるのと指示を出し始めていた。
つまり、なかったことにしたらしい。ふざけんなと思う。でも、着替えに熱中していまい終いには会話が終わっていた。
そして、着替え終わったあと、ふと気づく。
(・・・。制服で女ってわからないのか?しかも、髪はロングだぞ!由衣や柴原すら見た目だけは女の子だっと言っていたのに。)
っとこれはこれで悲しいと思う。
このことを言おうにも返ってくる言葉は全て否定系でありそうなのでやめた。
「その髪はこの紐と布でしばってくだされ。」
「あぁ。」
ここで私は別の思考が働く。
(もしかしたら、頭を丸めなくちゃいけないのか?それだけは嫌だぞ。)
「心配なさるな。そのような儀式はとうに廃れておりますのじゃ。」
またしても、心を読まれた。いったいどうやって読んでいるのだ?
そして、どうやって防げるのか・・。後でとりばぁーに聞いてみようと心に誓った。
「儀式がなくなったってどういうことだよ?」
「どうもこうもありませぬ。数百年前よりなくなっとうのじゃ。」
何度も思うけれどここは日本じゃないらしい。再確認をしてしまった。
取り合えず布と紐で髪をポニーテールの如く結い上げるとなんとまぁ、侍の出来上がり。
(自分で言うのもなんだけど、美形の侍だね。)
この家の唯一の鏡である手鏡を見て思った。
この時代鏡は貴重品じゃなかったのか?こんなところにまで出回っているなんて・・。
「ふむ。やはり良く似合っておるのぉ~。」
鏡を見ていた私に、天羽が声をかけてきた。
やつの目には『わっちの目には狂いがなかった。』とでも言いたそうな感じがする。
だいたいなんの狂いだよ。そう、返したくなるくらい天羽の目はキラキラしていた。
「これならば、外に出ても怪しまれずにすむじゃろうて。」
(違和感がないってことか?!ないってことなのか??)
そう思うと悲しくなる。最近、悲しい事ばかりが続くと私は思う。
だから、気分転換に外に出ることにした。その方が精神的にいい気がしたからだ。
決して、天羽の『外に出てみてはどうじゃ?』という言葉に従ったわけではない。
「そうじゃそうじゃ、言葉遣いに気をつけよ。樹は男なのじゃからな。」
外に出て行く前に天羽にそういわれた。何故か『男』を強調されながら・・。
しかし、それは間違いであることに後々になってから気づいた。
そう、やつに会ってしまったのだ。『ごし』に・・・。
やっと、話が進み始めるはずです。
でも、次回は護子SIDEになるのでまた停滞するかもです。
さぁ、護子とは一体誰なのでしょうか?(もうわかっちゃいますよねぇ;)