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世界のありかた  作者: 三日坊主
第1章
5/33

4話:説明を聞く前に決めること。

最初は夢です。回想シーンみたいなやつです。


  夢を見た。

 いや、今夢を見ている。そんな感覚がした。

 場面は父親が事故に遭ったというところ。その連絡を小学校にいる私は先生から聞いた。

 大好きな父が事故に遭った。その言葉だけで、『お父さん死んじゃうの?』と母に泣きながら尋ねている私がいる。ひどい事故だとは聞かなかった。ただ『きっとすぐに目を覚ましますよ。』とニッコリと微笑む医者の言葉があったから、母親と父が目覚めるのを待っていた。


  場面が変わる。

 玄関で母が帰ってくるのを待っている私がいた。

 母が言ったのだ『今日は、新しいお父さんと弟になる男の子を連れてきますよ~。』と。

 私は何がなんだか分からなかった。お父さんが新しくなる。


 (お父さんはお父さんじゃなくなるのかなぁ~。それは、悲しいよぉ。)


 だから、母が帰ってきたらガツンと言ってやろうと思っていた。『新しいお父さんなんか、いらない。』ってでも、帰ってきた母と男の人とその男の人の後ろに隠れていた男の子を見てガラガラと何かが壊れてしまった。その2人を見ただけじゃない。母の嬉しそうな顔を見たせいかもしれない。


 (男の人が新しいお父さん。男の子が弟になるコ。・・・。)


 男の人は言った。『僕は、いつきちゃんの新しいお父さんになります。長谷川(はせがわ) 宏世(ひろせ)です。いつきちゃんのお父さんみたいにカッコよくはないけれど、これからはよろしくお願いします。』


 男の人にとっての精一杯の挨拶だと幼い私は思った。だって、母が言っていたのだ。『あの人は、口下手で伝えたいことが全然伝えられないのよぉ~。まったく可愛いんだから♪』ということを。


 (ほんとに、口下手だぁ。ふふふ。お父さん!私に新しいお父さんができました!!)


 『新しいお父さん、よろしくね?私のお父さんみたいにカッコよくなってね?』

 『む、難しい目標ができてしまったよ。うん、でも頑張らせていただきます。』

 『宏世さん頑張ってねぇ~。』

 『あぁ。っと、この子の紹介がまだだったね。ほら、自己紹介しなさい。』


 後ろに隠れていた男の子の自己紹介の番になってもなお後ろに隠れていた。

 

 (もぅ!男の子でしょ??ちゃんと挨拶しなくちゃだめなのにぃ~。よし、ここはお姉さんがひとつお手本を見せてあげようじゃないの。)

 

 ふふん。っとお姉さんぶっている私は本当は嬉しかったのだ。弟ができることに・・・。

 いや、兄弟ができることに。


 『こんばんわ。私の名前は本城 樹っていうの。あ、でももうすぐしたら長谷川になるのかなぁ?』

 『あら、そんなことないわ。だって、本城は私の苗字だもの。だから宏世さんが婿入りするから本城のままよ。安心してネ♪』

 『・・・らしいから、よろしくね?あなたのお名前はなんていうの?』

 『・・・・・・・。』

 『・・・・・・・。』

 『あらあら、2人とも黙っちゃってまぁ~。宏世さん、あとはイッキちゃんに任せて私たちはお茶でも飲みましょうよ?いつまでも玄関にいるわけにはいかないからね?』


 ちらりと樹と男の子を見る新しいお父さんは、ため息をついた。


 『いつきちゃん。コイツを頼むよ、頑固なんだ。』

 『宏世さんに似てしまってねぇ~♪』

 『僕は、ここまで頑固なんかじゃない!』

 『はいはい。』


 そして、2人はリビングのほうへと行ってしまった。

 

 『ねぇ~。お名前教えてよぉ、じゃないとお茶飲めないよ?』


 根拠もなく言ってみる。

 けれど、微動だにしない男の子を見て私は腹を立て始めた。


 (なんなのよぉ~この子。一言でもいいから話せばいいのに!!あ、もしかして私のことブスだと思っているんじゃないでしょうね!!ブスなお姉ちゃんはいやぁ~とか我がままを言うのだったら・・。)


 『私がブスだと思っているんでしょう??!!それでこんなやつお姉ちゃんにしたくないとか思って言うんでしょう!!』

 『!!??』

 

 いきなり意味不明のことを言われて戸惑っている男の子を見て、ほらねっと思った。

 学校で男の子にブスブスと言われているのだ、間違っているはずがない!


 (やっぱり。図星だったから戸惑っているのね?!)


 『だったら・・・』

 『ち、違うよ!!その逆だもん!!』

 『ほらやっぱり・・・って何?逆なの?ええっとどういうことかしら??私の勘違い?』

 『そうだよ。勘違いだもん!!』

 『そうなの・・・。ごめんなさいね?で、でも早く自己紹介しないからいけないのよ?』


 そう、私が言うと顔を真っ赤にして黙ってしまった。勘の良い由衣ならその意味に気づいたかもしれないが、私は鈍いとよく言われるので理由がわからなかった。


 『僕の名前は・・・長谷川 亜樹。もうすぐしたら、本城 亜樹になります。』

 『ふふ。それでいいのよ♪さぁ、行きましょうよリビングに!早くしないとお母さんにお菓子をすべて食べられてしまうわ!!』

 


 ようやく自己紹介をした亜樹にそういって、手を差し出した。亜樹は、その手をじぃーっと見ながら嬉しそうに手を握り返した。そして、長谷川 亜樹が本城 亜樹になったと樹は思った。


 

  そして___目が覚めた。

 すごく長く眠っていたような気がするのは気のせいなのだろうか??

 気のせいじゃないのだろう。なんせ外はすでに明るかった。


 「おぉ。やっとこさ目が覚めたんけ?ぐっすり寝とったけん、起こすの悪かと思うて起こさんかったんよ?」

 「そうか、心遣い感謝するよ。」

 「飯食いなされ、腹が減っては戦はできんよぉ~。」

 「あぁ、そうするよ。」

 

 そういいつつ、改めて泊まっていた家を見渡した。

 きっと最近まで誰かが住んでいたと思われる形跡があったのだが、天羽はそれを無視して使いなされ。っと言って家から出て行った。のが昨日の夜だった。

 困惑しながらも取り合えず、床だけ借りることにしたのだ。


 「あのさぁ~ここって誰かが住んでいたんだよな?いいのか、勝手に使って。」

 「ほう、そこらへんはお気遣いなく。なんせ、ここのものはつい先ほど江戸に出てしまって帰ってくるのは、そうですなぁ~13年後ぐらいだろうに。」

 「13年も!!」

 「行きと帰りだけでも結構な年月がかかりますがな。」

 「え。それほど遠いのかここから江戸まで。」

 「はいさぁ~。それより、食べて下さんせ。皆が作ったものですけん。」

 「あ、うん。って皆?そして多!!」

 「村の皆ですけん。皆、樹と話すのを楽しみにしてますけん。」

 「いや、何も楽しいことは話せないんだが。」

 「それでも、いいですけん。ただ、この村に人が来たことだけが驚きなんや。」

 「そ、そうなんだぁ~。」


 しかし、と思う。いくらなんだって多すぎると思う。貴族並の料理の品の量だった。

 

 (まぁ、でも食べないと悪いよな?)


 「いただきます。」


 ■ □ ■ □


 数時間後、食べきった。っていっても、途中で村の人がちょくちょく来たのでみんなで食べたという形になったのだが・・・。村人と話せて結構楽しかったということはまた後の話。


 「そろそろ、とりばぁーのところにいかないとなぁ~。聞きたいことまだまだあるし。」

 「それがよかです。」

 「ついでに、天羽とかのことも聞かなくちゃだしなぁ~」

 「それは、聞かんでよかとです。」

 「んでは、行ってくるよ。」

 「はいさぁ~、わっちは準備しときますさかいなぁ~」

 「あぁ。」


 といって、出てきたものの準備って何だ。何の準備をするんだ?何をやらせる気なんだ・・・。

 あーだこーだと考えているうちに目的地着いてしまった。

 

 (天羽の方は後で考えるんだ。取り合えず、今はとりばぁーのほうを優先しよう。)


 そして、これで2回目の訪問となってしまったとりばぁー宅にノックをした。


 「入らんしゃい。きっと、樹だろうに?」


 いや、ノックをする前にまたしても、声をかけられてしまった。

 いったい、どういう感覚?いや神経をしているのだろう。


 「はい。樹です、失礼します。」


 今度はちゃんと丁寧にできたと思う。

 戸を開ける。中を見る。鳳凰(ほうおう)がいた。戸を閉める。あれ・・・。


 (あれーー?!教科書にいたはずの鳳凰がいるよ?)


 「鳳凰がいた。実物見たの初めてーーー!!じゃなくて、変だな?とりばぁーは??」

 「樹、入らんか。」

 「すみません、目がおかしくなったようで・・・。っておかしくなってなかった。」

 「樹はおもしろいのぉ。」

 「いや、おもしろくないですから。なんですかソレ。まさか天羽と同じとかですか?」

 「樹にしては察しが良い。」


 (とりばぁーからも、馬鹿にされてる。私は鈍くないんじゃぁー!ってまてよ、ということは)


 「とりばぁーと呼ばれていたのは鳥だったからですか?人じゃない?」

 「まぁ、そうなるの。この姿を見て人であるというのは苦しかろう。」

 「ってことは、とりばぁーは判定していた?」

 「そうじゃ。安々(やすやす)とこの姿を見せるわけには行くまい。」

 「まぁ、確かに。じゃぁ私はその判定に合格したということですか?」

 「そうじゃな。合格じゃな。」


 はぁーっとため息を付いた私は聞かなくてはいけないことを思い出した。


 「あの、名前を聞いていなかったのですが、さすがにとりばぁーはまずいかな?なんて思いまして。」

 「名とな?申してなかったかのぅ?わしの名は緋石(ひせき)じゃ。他の鳳凰より、翼の紅い色が多くてな。緋石と呼ばれる石に色がよく似ていたために付けられた名じゃ。」

 「じゃぁ。緋石と呼べばいいのか?」

 「とりばぁーでよか。その方が親しみやすいだろうて。」

 「じゃぁ、、とりばぁーと呼ばせていただくな。」


 いつの間にか敬語から、標準語に戻っていたけれどとりばぁーは何も言わなかった。

 ただ、暖かいまなざしで私を見ているだけだった。私はそんなことには、もちろん気づいていない。


 「あ、そうだ、聞きたいことがあったんだ!!」

 「なんでも聞くが良い。しかし、樹はその前に決めなければならない今後のことについて。」

 「今後?」

 「そうじゃ。順をおって説明したかったのじゃが、その時間がなくなってしまったのじゃ。」

 「時間がない?」

 「うむ。上忍護師の弟子にあたる護子が唐津の近くまで来とるらしい。」

 「そのじょうにんごしってのも説明する時間がないんだな?」

 「そうじゃ。説明の大半がソレを占めておるからな。」

 「うわぁ~。ついでに、そのじょうにんごしとやらが来ると結構やばいんだな?」

 「そうじゃ。とくにそなたぐらいの年頃の女子(おなご)はな。」

 「・・・。そこら辺の説明聞かなくても大体分かったわ。んで、私は何を決めないといけないんだ?」


 次の言葉を聞いた瞬間私は、じょうにんごしマジ殺すなどと思ってしまった。


 「男になるか女として生きるか。男になればいろいろと有意義に動けたりもする。女の場合はわかっているだろうに。」

 「・・・・・・。決めるまでもないじゃん。」


 そして、私は心中でじょうにんごしを罵倒しながら答えを出した。



 たとえソレが間違った答えだとしても、自分を信じて生きていくことにしたのだ。

答えはもう決まっている。

にしても、また天羽の素性を聞けなかった樹がいた。

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