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世界のありかた  作者: 三日坊主
第1章
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3話:ヒトor鳥の悩みどころ

  失礼します。なんて言って入ったのはいいけど、待っていたのは巫女さんだった。

 

 (誰だ!!ばぁーさんなんて言ったやつは?!)


 『とりばぁー』のほうは入ってきた私を凝視していた。いや、観察と言っていたほうがいいのかもしれない。私も『とりばぁー』を観察するついでに部屋の中も観察してやった。

 

 (なんというか、質素と言いますか?でも、結構高そうな置物とか置いてますよ?)


 「これこれ。挨拶もなしに先にあちらこちらと観察するではない。」

 「あ、すみません。」


 怒られてしまった。巫女さんを怒らせると怖いと授業で習ったことがある。まぁ、相崎先生サマのお授業でしたが・・・。


 「して、樹とやら何故(なにゆえ)ここに来た?」

 「なんで名前!?ってか、名前分かるなら理由もわかるんじゃね?じゃなくてないですか?」


 一瞬目が光った気がしたので、慌てて言葉遣いを正しました。

 『とりばぁー』はニタリと笑った。

 なぜ笑ったのかは分からない。当たり前だろ?分かるはずがない。分かったほうがスゴイ。


 「確かに確かに。名は天羽から聞いた。しかし理由は聞いておらんよ。」

 「あ、天羽!!アイツは人なんですか?鳥なんですか?もしくは鳥人?」

 「まぁまぁ、そこはおいおい説明いたしましょうぞ。」

 「はぁ。・・・あ、そっかここに来た理由だろ?ええっと、なんて説明すればいいんだろう?」

 「まぁ手短にお願いしますぞぇ。」

 「・・・・。いや、それ無理だから。」

 「そうか、それは仕方がございますまい。では、いくら時間を使ってもよかなので、説明を。」

 「あ、はい。」


 私はとにかく説明をした。どこから話せばいいのか分からないので、取り合えず家に帰っている途中に気づいたら森の中にいて、気づいたら天羽が隣にいて、混乱していたら天羽が『とりばぁーに会えばいい』といってここまで連れてきてもらったということ。をなるべく手短に話した。


 「そーかい、そーかい。樹とやら、ここに来たのは初めてかぇ?」

 「いや、当たり前じゃ、当たり前です。」

 「そーやない。この世界に来たのは初めてかと問うておる。」

 「・・へ?世界??」

 「だいたいは、気づいておるのであろう?ここは日本で日本じゃなかと。」

 「!!!」

 「その昔になぁ、旅人が来たのじゃ。わしを訪ねになぁ。この話を聞くかぇ?」

 「聞かせてください。もしかしたら・・・。」

 「もしかせずとも、そなたの世界の旅人じゃったよ。あれはなぁ・・・。」

 

 とりばぁーは話し始めた。

 なんでも、とりばぁーはなんでも知っている者として有名だそうだ。そのとりばぁーの知恵を求めて何人もの人が尋ねてきたのだと。中には将軍すらいたと。けれど、一番の印象に残った者がその旅人だったそうだ。旅人は言った。


 『自分は異世界から来ました。国は同じ日本です。始めは時代だけが違うのかと思っていたのですがどうも違うようで・・・。お世話になった方に貴女はなんでも知っていると聞きました。だから教えてください。自分の世界に帰る方法を・・・。』


 とりばぁーは驚いた。そして申し訳なくなってそうだ。とりばぁーにはその旅人が帰る方法なんて知らなかったのだから。だから、とりばぁーは・・・。


 『すみませぬ。貴方の知りたいと申すことにお答えできませぬ。ですが、きっと意味がありここに来たのでしょう。その意味を探し知ることできっと帰れると思われます。』


 とりばぁーは旅人がひどく落ち込むと思っていた。しかし、旅人は思っていたのとは違う表情をしていた。笑っていたのだ。とても、嬉しそうな笑顔で・・。そして旅人は言った。


 『ありがとうございます。探してみます、ここに来た意味を・・・。そして見つけ出して帰ります。向こうには、妻と娘が一人いますから。』


 『そう・・ですか。あの、貴方の名前を聞いてもよろしいでしょうか?』

 『はい。私の名は、本城(ほんじょう) 時宗(ときむね)です。』

 『そうですか、貴方の旅に神が見守っていますことを心より祈りしましょう。』

 『ありがとうございます。それでは・・・。』


 そういって旅人はこの村から立ち去ったのだと。

 それから数年後、旅人は戦にでたのだと風の噂で聞いたそうだ。

 しかもその戦はとても有名なものだと。戦は【大蛇の滅亡】と呼ばれているそうだ。

 その後の旅人の噂は聞かなくなったという。


  私は途中からぼーっとしていた。有りえない話の中に有りえない名前が出てきたからだ。

 私と同じような人が、ここに来た。この世界に来た。そしてその人の名が・・・。


 「本城 時宗・・・。」

 「その名がどうかしたんかぇ?」

 「私の名は本城 樹。」

 「もしかしたら、父親じゃったんかぁ?」

 「違う。そんなことない。だって父は事故で亡くなったのだから・・・。」

 「そうかいな。しかし、どーする?樹、お前も異世界の者だったら帰り道を探さんといけん。」

 「そう・・・ですね。」

 「・・・・。今日は休みなさいな。天羽に床あるところに連れっていってもらいなされ。」

 「ありがとうございます。」


 私を気遣ってくれたのだろう。話は中断された。

 家の外に出ると、空はオレンジ色に染まっていて。夕焼けきれいだなぁ~なんて思ってみた。

 天羽が話しかけてきたときも曖昧に返事を返していたのだけど、ふと天羽のほうを見ると鳥だった。

 そこで頭がクリアになった。ごちゃごちゃしていたのがいっきに消えた。


 (天羽のこと聞き忘れた。)


 「天羽・・・アンタ何者??人なの?鳥なの?それ以外なの??」

 

 天羽はいきなり聞かれた質問にキョトンとしていた。


 「わっちは、鳥でっさぁ。」

 「でも、私に最初会ったときは人の姿だったじゃん!!」

 「当たり前ですわぁ。もし鳥のまんま出ってたぁら、捕まえられて売り飛ばされちまう。」

 「そ・・そうなのか?」

 「そうですわぁ。だから、ここの村のほとんどが人の姿になっとりましょう?」

 「・・・・はぁ?っえ!っということは、ここの人たち皆、天羽みたいなやつらだってこと?」

 「みんなではないですけん。人間もちゃんといますわぁ~。」


 私はどうやらとんでもないところに来てしまったらしい。自分たちの周りを見る。人の姿ない。

 変わりに各家に明かりが灯っていた。そして、私は気づかなかった、話が逸れていることに。


 (天羽のようなやつらが、人形(ひとがた)になり生活している。

  日本じゃない日本に私はいる。あの、ここに来てしまった旅人さんのように・・・。)


 「よし!!明日また、とりばぁーのところに行って他の話しをもう一度聞いてみよう。」

 「それがよかですけん。」

 「あ。そういえば、なんでとりばぁーっていうの?名前なのか?」

 「ほっほう。違いますけん。名前じゃなか。」

 「あ、そうなのか。じゃぁ明日はちゃんと名前聞かないとなぁ。」


 そんな会話をしつつ、天羽に連れられて床のある家へと案内された。




天羽の正体分からずじまい。きっと樹は気づいていない。

はぐらかされたことに・・・。

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