22話:その響き渡る旋律と舞いと
短めです。
サノは、樹は、無言になった。
聞きたかったことは、そうではなかった。
でも、本当に聞きたかったことを、今言われてしまった。
「・・・・・何故そう思った?」
その問いに天羽は答えずにただじっと樹を見ていた。
(なんで答えないの?しかも、疑問がわかっているのなら、それに答えてくれたっていいじゃん。)
樹は、天羽を睨みつけた。
その瞳には、黒く濁った感情を含ませながら・・・・。
「回答を求めるよりも、自身で探すほうが良いじゃろうて。現に、お前さんは答えを知るのを恐れている。それでも、知ろうとする。」
「・・・・・・・。」
樹は答えない。
確かに、答えを知るのは怖い。
(もし死んでしまっていたら、母さんや由衣・・・・100歩譲って、紫原にも会えなくて、ううん。何よりも亜樹に会えない。まだ、謝っていないのに。)
「ヒトは探究心が強いというらしいのじゃ。」
「・・・・・?」
天羽は行き成り話題を変えた。
いや、話は続いている。そう樹は感じた。
「探すことを止めるということはのぉ、生きるということを止めるということでもあるのじゃよ。」
「・・・・それは、考えることを止めるということじゃないのか?『人は疑問を持ち考えることを止めると生きられない』と私はそう聞いたことがある。」
「ふぉっふぉっふぉ。お前さん、自分を棚に上げて言っておらんか?」
「は?」
樹には天羽が何を言いたいのかが分からなかった。
けれど、天羽の瞳が光ったことだけは分かった。
その瞳には強い何かが宿っていて、自分のどす黒い感情さえも掻き消すようなものだった。
「わっちのコトを深く追求せず、ありのままで受け止めようとしたこととのぅ。小僧のこと・・・・。考えるのを止めたんじゃぁなかとかや?」
「!!!!」
なんで知っているのかがわからない。
天羽は人の心を読むことが本当はできるのではないかと、いつも疑問に思う。
けれど天羽は、「違う」と言った。
顔に全てが出ているのだと言ったのだ。
でも・・・っと樹は思う。
(どうしてそのことまでわかるんだ!?やっぱりコイツ読めてんじゃないのかよ!)
「だからのぅ。考えることを止めたお前さんは、生きていないことになってしまうじゃろう?しかし、お前さんは生きている。何かしらの疑問を抱え、探しているのじゃよ。」
「なんだよ・・・。つまり、考えることと探すことは一緒ってコトなのかよ!?」
「そうとも言うし、そうとも言わん。答えは全てお前さんが知っているし、答えは自ずと見えてくることもある。」
「矛盾してるじゃん。」
「そう通り。この世は全て矛盾しておる。だからこそ、探すのじゃよ。」
天羽はさっきまでの表情とは打って変わって、とても穏やかな表情をしていた。
それはとりばぁーがよく、樹を見ている表情と同じで・・・・。
「探すって言ったって・・・・・どうやって探せば______。」
探せと言われて「はい、そうですね。」などと言って簡単に探せるものではない。
そもそも、樹はこの村から一歩も出たことがないのだ。
(外にでようにも、コノハと赤朔が言うには【陰】がいるんだろうし・・・・・どうすればいいのやら。)
ドーーーーーーーーーーーーーン!!ドドーーーーーーーーーーーン!!!
その考えに答えるかのように、今までになかった大きな太鼓の音が夕闇がかった空へと響き渡った。
「何!?」
慌てる樹に、天羽は白い小鳥となり空へと舞った。
「始まるのじゃよ。」
「な、何が!?」
「言っておったじゃろう?小僧どもが。『お楽しみ』がじゃよ♪ふぉっふぉっふぉっふぉっふぉ!!」
そう楽しげに笑い天羽は、舞台のほうへと飛んでいった。
「っしゃーーーーーーーーーーーーー!!!始まるでぇーー!!」
「祭りじゃぁぁぁーーーー!!祭りじゃぁぁぁぁーーー!!」
「収穫祭じゃぁ!!!」
「今年は、護子2人が出し物をするらしい!!」
「ホントかぁ?」
「本当じゃけん!!」
「よきかな~よきかなぁ~」
「!!!!????」
いつの間にか、自分の周りに人が満ちていることに驚き。
また、その人々の喝采に驚いている樹は、初めてこの収穫祭が唐津のヒトたちが待ち望んでいたことを知った。
その喝采はいつまで経っても静まることはなく、逆にますますヒートアップしているようだった。
いい加減に、沈まれよ。と樹が思い始めたころである。
「イッツァ ショーーーーターーーイム!!」
「!!?」
突然のマイクを使ったかのような大音量に樹は驚いた。
いや、驚くのはそこじゃなかった。
「っちょ、あ、天羽?!みんな何言ってるのかわかってねぇよ!」
天羽が司会者らしく、いつ着替えたのかわからない柄の派手な袴を着て舞台に立っていた。
そして今の掛け声。
もちろん分かったのは樹以外誰もおらず、騒がしさが一気に引いた。
「今何て言ったんだ?」
との言葉がところどころで聞こえており、何人かが。
「きっと聖なるお言葉だべ。」
と、間違った解釈をしていたので樹は天羽を睨んだ。
その瞳はつい先ほどまでとは違い、冷ややかではあるが温もりも交じっていた。
ついにはその囁きも聞こえてこなくなり、広場はヒトがいるにも関わらず物音一つしなくなった。
そして__________。
笛の音と袴のする音が舞台のほうから聴こえてきた。
その音はどこかで聴いたことのあるような音で・・・・・・。
樹は・・・・・・サノは、その笛を吹く主ともう一人、扇を携えた主を見て口をあんぐりと開けることとなった。
樹は葛藤しています。
どうすればいいのかとか、悩んで悩みまくっています。
でも、本当にどうすればいいのかを知っているのは樹自身です。
早く気づいてくれるといいのですが。