20話:二つの花と一つの葉
ドーンドーンドーン
村の中央で太鼓を鳴らす音が聞こえてきた。
今日は収穫祭である。
ドーンドーンドーン
一定の音を保ちながら太鼓の音はサノの頭を活性化させるには持って来いの音量であった。
「目が覚めたよ・・・・まったく。収穫祭ってこんなに派手なもんなわけ?ってか運動会か何かかと思ったよ・・・はは。」
服を着替え外に出ると昨日までなかった屋台や太鼓や舞台が存在していた。
「いやいやいや。なんでやねん!!」
(昨日までなにもなかったよね?実はドラエモ○の道具のおかげなのです!とか?んでもってスモールライ○でものを小さくし・・・)
サノは頭の中で近未来ってすごいよねぇ~などと考えながら混乱していた。
そう混乱していたのだ。
「おはようサノ!!・・・・サノ??」
声が聞こえた。
まだ幼く声変わりをしていないソプラノの声。
しかしサノはその声を右耳から左耳へと流れていた。
つまり聞こえていないということ。
人はすごい・・・混乱していると何も聞こえなくなるという理論が解明された。
「サノ!!!」
そうサノの名を呼ぶ声の主はサノの服の袖を引っ張った。
「うぇ?!・・・・っは!コノハ、おはよう。」
袖を引っ張った力が強かったらしくサノは横に倒れそうになった。
そして倒れそうになりながらも踏みとどまり、自分のワンダーな世界から異世界に戻ってきた。
「おはよう。じゃないよ!!人がせっかく一番最初に会いに来たのに!無視するんだもん!!」
「ええっと~、ありがとう?」
「別に御礼を言って欲しいわけじゃないんだけど・・・。」
「じゃぁ~・・・」
「じゃあって何さ!!他に言うことあるでしょう??」
「ええっと~。」
(何があるだろうか?)
サノは首を傾げながら考える。
が、首をかしげたところで答えが出てくるわけでもない。
(あるといえば、コノハが妙にハイテンションであるということとか?いやいやいや、それを聞けばまた怒られるだろうなぁ~)
サノはコノハ自身に答えがあるだろうと思うことにし、コノハをしばしば観察。
コノハはあまりにもサノが長いこと考えるため待つことを諦めて口を開こうとした。
「・・・・コノハの今日の服?衣装??すごく似合ってるね。」
「・・・・・ありがとう。」
(違ったらしい。)
コノハを観察して分かった事といえば、普段は着なさそうな服を着ているということ。
しかもその衣装がすごくコノハに似合っているということ。
それしかサノの観察眼では見つけることができなかった。
沈黙。
(今、私とコノハの間には微妙な間が開いている・・・。理由はわかってる!!分かっているのよ!?でも、これどうしたらいいんだろう?)
ああ、どうしたものか。とサノが目線をコノハから明後日の方に向けるとその方向から掛けて来る人の姿が見えた。
「あ。赤朔だ・・・。」
「!!!」
サノの何気なく呟いた言葉にコノハはピクンと身体を震えさせた。
そんなコノハに気づくことなくサノは赤朔が来ている衣服に目をこしらえた。
「おはようございます!サノさん!!!」
「あ、うん。おはよ。・・・・・何その格好。」
「変すか??」
サノの言葉に赤朔は自分の着ている衣装を見ながら眉をひそめた。
「ううん。全然。すごく似合ってる・・・・コノハもかわ・・じゃなくて衣装着ていたからなんでだろうって思っただけだ。」
(危ない。今、可愛らしい衣装っていうことろだった!!)
そう思いコノハをチラ見するが気づいていないようでサノはッホっとため息をつく。
もし気づいていたら全力で睨まれるだろう。
「ああ、それは『お楽しみ』のために着ているんです。」
「『お楽しみ』・・・・ああ!!アレか!!って赤朔もするの??」
「はい。何故があの鳥・・・もとい天羽さんがいろいろと持ってきたんすよ。(あのヤロー!!つかなんで知ってんだよ!あのこと!!!)」
「?そうなのか。じゃぁ楽しみが増えたな。」
「はい!出来れば見て欲しくないんすけど楽しみにしといてください。」
「そうじゃそうじゃ。祭りは楽しまんとなぁ~。」
(?今後ろの方で何かが聞こえた。気のせいだろうか?うん!!きっと気のせいよ!!)
「あ、天羽さん。おはようございます!」
気のせいだと思いたかった奴の声、存在はコノハの可愛らしい声によって無視できないものとなった。
「おお!小葉殿よくお似合いですぞぉ!!赤朔殿も!!わっちの目に狂いはありゃ~せんぞ!!」
「え、何?お前が見繕ったのか?」
「そうですじゃそうですじゃ!!見なされこの刺繍・・・・なんと美しいことやら。」
「自分で言うなよ。っていつ作ったんだ?それにこの舞台とか、昨日までなかったよな?」
「ふぉふぉふぉ。それはのぉ。」
「それは何だよ?」
「それは・・・・・・・・・・・・・・・神業じゃ。」
「・・・・・・・・ほぅ。んなことを信じれと?」
「ふぉふぉふぉふぉ。佐乃助殿は神を信じんとな?」
「ちげーよ。お前を信じていないだけだ。」
「なんとー!!照れ隠しはよしんしゃい。」
「どこをどうとれば、照れてることになんだよ!!」
「相変わらずじゃのぉ~。このツ・ン・デ・レ。」
「~~~~~~~~~っ!!天羽!!!!!!」
(ああ~~~~~くっそぉ!!むかつく。てか、ツンデレの意味知ってんの?捕まえて聞いてやる!!って。)
「飛んで逃げんなって言ってるんだろーが!!」
天羽は鳥となり、空へと飛んでいってしまった。
「あのさ、サノ。」
「あん?」
「つんでれって何?」
「あ、俺もそれ気になったんすけど。」
「・・・・知らないほうがいいときもあんだよ。」
「誤魔化さないでよ。」
「はぐらかすんすか?」」
「・・・・なんとでも言え!俺は言いたくない。」
(ここで負けたらツンデレの意味を言わなくちゃいけなくなるし、でもって私がツンデレだって思われちゃうジャン!絶対に言うもんか!!)
「と、とりあえず・・・・周ってみないか?まだどこがどう変わったか見てないんだよ。」
「もぅ!いつか教えてもらうから!!」
「はいはい。」
「んじゃ、あっちから行きませんか?」
「始めは入り口からってか?コノハも大丈夫か??」
「うん。僕もこれに着替えてて全然見回ってないからどこからでもいいよ。」
「そっか。じゃぁ行くか!」
そういって入り口の方へと歩いて行こうとすると右腕にコノハが抱きついてきて、左手を赤朔が握ってきた。
(?????なに?私さすがに村の中じゃ迷子になんないけど??気にしちゃ駄目なのかな??)
ッパと見れば、両手に花を持つ若者に見えなくもないこの状況。
どうしたものかと悩むがコノハも赤朔も何も言ってこないので気にしないことにした。
世の中気にしたら負けだと、昔母が言っていたなぁっと懐かしむ自分に心の中で応援エールを送る。
ふと、右腕を見るとコノハと目が合った。
コノハはサノと目が合い笑いかける。
コノハの笑顔に悶えそうになる自分を制御し、制御する。
(あ、危ない。コノハの笑顔は人殺しの技だった!制御しなくちゃ、女ってバレる!!)
サノは心の中でうごめく何かを抑えつつ、村の出入り口へと向かった。
そして、収穫祭が始まりを告げる。
何が起こるのか。
何が始まりを告げ、終わるを告げるのか。
サノは・・・・・・樹は知りもしない。
ただ心の隅で『帰りたい』とい気持ちと『まだいたい』という気持ちが信号のように点滅していた。
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こ、更新。
頭のなかはパラレルワールド、いったいいつ現実に戻そうか?
悩みどころの作者です。
見捨てないで下さりありがとうございました!!
次回は登場人物紹介?を入れてみようかなって思ってます。
もう少しで本章に入れそうです!!
さてさて、これからどうなることやら。