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世界のありかた  作者: 三日坊主
第2章
20/33

18話:想いはそれぞれに

メインはコノハです。

 「疲れた・・・・。」

 

 サノはそう言って座敷の上に寝転がった。

 その際に結いだ髪が解けバラバラに広がった。


 「だいたいコノハと赤朔の仲の悪さが一段と酷くなっているのは何故なんだ?」


 サノは気づかない。

 自分がその中心にいることに。


 「なんか赤朔は・・・・アイツ、雅人に似ているなって思っちゃった。あの照れ方というかなんというか。最初の礼儀知らずなとこなんかそっくりだ!」


 義弟の亜樹といつも一緒にいる雅人。

 初めて会ったのは確か、亜樹があの家に来てから3日経った後で・・・。

 あまりの速さに驚いたのだ。


 「まさか家に来て3日目で友達連れてくるとは思わなかったよ。いや、実際は勝手に上がり込んできたが正しいかな?」


 家に『おじゃましま~す』と勝手に上がりこんだ雅人に亜樹は慌てていたっけ。

 なんて思い出しながらサノは額に手を置いた。

 ここではない日本。

 そのことを思い出すと止まらない。

 まだ1週間も経っていないというのに・・・・。


 「あ。そういえば来週は収穫祭があるっていってったっけ?もしかしてとりばぁーはその準備をしに出かけたのかな?」

 

 今日の昼頃、赤朔に村を案内していたときのことである。

 といってもサノ自身も村の中をよく知るわけでもないため、いやいや天羽に案内を頼んだのだ。

 天羽は皆の先頭を飛んでおり、時折サノの肩にとまって村のいたるところを説明していた。

 もちろんサノの横にはコノハがいて、赤朔はコノハとは逆の方に並んで案内を受けていた。

 コノハの方は受けているというより、見張っているという状態だったが。

 とりばぁーの社について村を一周し終わったとき天羽が言っていたのだ。


 『そういえば、小葉殿は来週の収穫祭の際に何やらしてくださるようで・・・。』

 『え、あ、うん。』

 『え?何??コノハが何かするのか??ってか来週収穫祭だったのか・・・。』

 『佐乃助殿、常識ですぞ!!』

 『この村での!だろ。んで何をするんだ?』

 『当日のお楽しみってことで。』

 『お楽しみって。』

 『ああ、なるほど。コノちゃんはご自慢のアレをするのか。』

 『あ、アレ?アレってなんだよ!?』

 『だからお楽しみだって!』

 『そうですぞ!なんでもかんでも知りたがってはなりませぬ!!』

 『・・・・・・・・・天羽、お前!!』

 『暴力は反対ですじゃぁ~~~』

 『とか言って、飛んで逃げんな!!』


 なんて他愛のないやり取りだったけど、その収穫祭にきっととりばぁーは何かをするのだろうとサノは感じていた。

 サノは思う。

 何故なのだろうっと。

 こちらに来てから、いろんな感覚が研ぎ澄まされているような気がするのだ。

 第6感というものなのだろうかっと思ったが、まさかと思いその考えを頭の隅に追いやった。


 「それにしても、なんで亜樹や雅人のことを思い出したんだっけ?あ。赤朔が雅人に似ているからかぁ~。じゃぁコノハは亜樹に似ているのかな?」

 

 サノはそう言い亜樹とコノハを思い浮かべてみたが、何一つ似ているといところが見当たらなかった。

 

 「・・・・・似てないか。あ~あ、だいたい比べる方が可笑しいかな?」


 そう言って笑おうとするが上手く笑えない。

 この場に人がいなくて本当に良かったとサノは思った。

 ホームシックになり家族のこと友達のことを思い出すと涙がでてきても可笑しくないのかもしれない。

 でもっとサノは思う。


 「私は・・・俺は、泣いたことがない。涙がでないんだよね・・・。なんでだろう?」


 子供のことから泣いたことがないサノ・・・樹は家族以外の人々から恐れられた。

 精神的に不安定なのではっと言われたり、心の何かが欠落しているのよっと言われたりした。

 でも父や母は『大丈夫。樹は何も悪いところはないし、普通の人以上に優しい子よ。』っと言ってくれた。

 そうそれはまだ実の父親が生きていた頃の話。

 母が再婚して新しい父が来ると同時に亜樹がきたときには、そんな噂は立たなくなっていた。

 

 「というより、忘れられたって言った方がいいのかな??って、なんでこんな辛気臭いこと思い出してんだろ。こんなところ誰にも見せらんないなぁ~」


 そういってサノはおもむろに立ち上がった。

 立ち上がったと同時に背伸びをする。


 「よし!!気合入れるぞー!」

 「何に?」

 「・・・!!!!」


 サノは驚いた。

 自分の独り言に人がまた介入してきたからだ。

 声のした方を振り向くと、コノハが不思議そうにサノを眺めていた。

 

 「コノハ・・・・どうかしたのか?」

 「別に、どうもしてないけど。それよりもサノは何に気合を入れるの??」

 「えっと・・・・記憶を取り戻すことに。」

 「ふぅ~ん。サノは嘘が下手だね。」

 「んな!!」

 「でも、うん。詮索はしないよ!だから、傍にいてね?」


 ニコリと笑顔で言うコノハにサノは何ともいえないような感情を抱いた。

 

 (コノハのこの言葉の意味はどういう意味だろう?傍にいるって・・・無理でしょう。だってコノハは護子だもん。)


 「ずっと傍にいることは出来ないと思うけど?」

 「大丈夫!」

 「いや、だから何に対しての大丈夫なわけ?ってか根拠は何??」

 「さぁ?でもそんな気がするんだ。なんでだろう?」

 「いや、聞かれても・・・。」

 

 そんな他愛もない会話がずっと続くとは限らないとサノは思った。

 そもそも本当の意味で生きる世界が違うと思ったからだ。

 

 (例えコノハが傍にいて欲しいと願っても、私には向こうに家族がいる、友達がいる。それをいつか教えなくちゃいけないのか?それをいう暇があるのかな?あるといいなぁ~)

 (絶対離れる気はないから!!) 


 それぞれの思いが夕焼けの色に空と共に染まっていく。

 明日、明後日、明々後日で収穫祭の日へと変わっていく何気ない時を過ぎるかのように。



■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□


 コノハは気づいた。

 サノが何かを隠していることに。

 どうやって気づいたのかは自分自身でもわからない。

 でも、何かを隠していると自分の内の何かがそう感じていた。


 今日の昼頃、サノは天羽を連れて僕と赤朔のところにやってきた。

 記憶喪失であるサノは『天羽に村の案内を頼むことにしたんだ。そっちのほうが正確だろ?』と言って。

 サノが記憶喪失なことに赤朔は驚いていたけれど、でもすぐに何かを理解したかのようにすぐに受け入れた。

 僕はそれを見て複雑な思いがした。


 天羽が先頭になって飛び、時折サノの肩にとまってはそこの場所の説明をする。

 僕とサノが出会った場所も紹介された。

 その場所は【時の狭間】と言うらしい。

 【時の狭間】にはあの有名な旅人が育った場所と言われている。

 でも実際にはそれが真実であるかどうかなどということは誰も知らなかった。

 ただ、旅人が突然その場所に現れ、この村を訪れたということしか真実として伝えられていた。

 

 そんな場所で僕はサノと出会った。

 初めて会った時は男であるか、女であるか分かたなかったけど、この短時間サノといることでサノの秘密が1つ分かった気がした。

 そうサノは女性であるようだった。

 何故、男の格好をしているか分からなかったけど、今はどう見ても女性にしか見えなかった。

 赤朔もこの案内してもらった時間でサノが女性であることに気づいたようだ。

 きっと僕と同じときに違和感を感じ気づいたのだろう。


 僕らがサノが女性であることに気づいたのは、【時の狭間】からの帰り道のことだった。


 「それにしても、あの風景はすごく綺麗だな。」

 「そうであろうそうであろう。」


 サノの感想に天羽はすかさず答えた。

 僕はもちろんのこと赤朔でさえも頷いていた。

 

 「あそこに有名な旅人が訪れたと言われているだな。」

 「有名な旅人ってあの?」

 

 赤朔がどこか嬉しそうに言うのにサノが尋ねた。


 「ああ、そうですよ。ってサノさんは旅人に関しては知っているんですか?」

 「え?あ~記憶は戻っていないんだけどさ、とりばぁーにそこら辺は聞いたんだ。」

 「そうですか。あの旅人のようになりたいと多くの護子や護師までもが言っています。」

 「それほどすごい人だったんだな。」

 「それはそうですよ。って話聞いたんでしょう??」

 「いや、コノハからもいろいろと聞いたんだけど、いまいち『陰』とかわかんなくて。」

 「え?サノあの時存在仮定は分かったって言ってなかったっけ?」

 「それじゃなくて、『陰』を俺は見たことがないんだよ。」

 「「・・・・・は?」」

 

 サノの言葉に僕も赤朔も言葉を失った。

 あの『陰』を見たことがないなんて信じられなかったからだ。


 「一度もないの?」

 「き、記憶があったら一度は見たことがあったんだろうけど。記憶無くなってからはずっとこの村にいたから見たことなくてさ。な?天羽」

 「そうですなぁ~。佐乃助殿は引きこもりでしたからな。」

 「おい!!引きこもりって何だ!?」

 「引きこもりも知らないとは・・・・お可愛そうに。」

 「いや、待て待て。引きこもりの意味なら分かる!!」

 「では何を知りたく??」

 「知りたいんじゃなくて・・・・って!ッヒ!!」


 サノが天羽に何かを言い返そうとしたときのことだった。

 サノが固まったのだ。

 僕と赤朔は驚いてサノに駆け寄った。


 「大丈夫?どうかしたの??」


 僕は慌てて声を掛けるけど、サノは反応しなかった。

 ただ一転を見て固まったままだった。

 赤朔はその一転を見ようとしていたけど、天羽がその一転に何かをしたらしくて見られなかったらしい。

 サノはその一転の何かがなくなったのを見ると安心したようにッホっとため息をついた。

 

 「あ、ごめん。大丈夫だから・・・ちょっと苦手なモノがあって。」

 「そう・・・。」


 そこで僕と赤朔は気づいたんだ。

 サノは安心しきっていたからだと思う。

 自分が普段使っている声音と今の声音が番うことに気づいていなかった。

 明らかに今の声音の方が優しい響きを持ち女性ならではの笑顔を見せていた。

 それを見て流石に、男であるっといっても誰も信じようとは思わないだろう。

 でも僕も赤朔も何も言わないことにした。

 つまり気づいていないことにしたのだ。

 

 「(まさか女だったとは。いや、違うな。やっぱり女だったとはだ!!っていうことは・・・・。)安心した。」


 赤朔が何かをぶつぶつと呟いていたことに対してはすごく不安が()ぎったけど、あえて何も言わないことにした。

 もし僕が考えているようなことだったのなら僕の方が先に取れば良いっと思ったからだ。

 もちろん僕と赤朔の想い(・・)にはサノが気づくわけもなかった。

 

 村を一周し終わり案内も終えると天羽は『来週の準備をしなくては!!』といいどこかへ飛び去っていった。

 僕も何か手伝った方がいいのかなっと思ったけど、何も分からない奴が手伝うと余計時間が掛かると思い諦めた。

 赤朔はサノに『俺、ちょっと休憩してきます。』と言わなくていいのにわざわざ言い、宿屋のほうへと戻った。

 そう、この村にはなんと宿屋がちゃんと存在していたのだ。

 これには僕も驚いた。ってことは天羽やとりばぁー様には内緒にしておくことにする。

 サノのほうは『俺もちょっと休むよ。歩き疲れた。』と言って家の方へと戻っていった。

 僕も休もうかと思い宿へと戻ったのは良いけど、結局刀の手入れをして目が覚めてしまった。


 「・・・・暇だよ~。こんなに暇なの始めてかも。ちょっとサノのところに行こうかな?起きてると良いんだけど。」


 本当は暇だからサノのところに行くのではない。

 聞きたいことがあったのだ。


 『サノは本当は女の人?』と。


 でもサノはきっと『お前の目は節穴か?』と言ってはぐらかすのだろう。

 それでも・・・っと僕はサノのいる家へと向かった。


 サノの家に着くと窓が開いていた。

 そこからサノを見ることが出来、サノが起きていることが分かった。

 結いでいた髪を解いたらしい。解いた髪がバラバラと畳みの上に散らばっていた。

 それはどこか幻想的で僕は少しの間見惚れていた。

 それを見ただけで分かった。

 サノはやっぱり女の人なのだと。

 安心をしてしまった。


 「僕は男の人じゃなくて女の人を・・・サノを好いたんだ」


 と声に出して言ってしまっていた。

 周りに誰もいなくて良かったのだが、改めて認めて僕はきっと赤くなったであろう顔を冷ますように首を振った。

 頭の中にある想いを消すかのように。


 「よし!気合入れるぞー!」


 僕が自分の想いの強さに自身で驚愕(きょうがく)しているとサノの掛け声らしき声が聞こえてきた。

 何に気合を入れるのだろうか??

 自分の知っていること?それともサノしか分からないこと?サノが秘密にしていること??

 それは嫌だっと僕は自分勝手ながらに思った。

 サノの全てを知りたいと強く思ったのはこのときからかもしれない。  

 だから僕はサノの独り言に無理やり介入した。

 それは僕が【ここにいる】という証であるかのように。


 「何に?」

 「・・・・!!!!」


 サノはすごく驚いた顔を僕に見せた。

 その顔を見ながら僕は戸を開け中に入る。


 「コノハ・・・・どうかしたのか?」


 サノは僕がここにいることに驚いているらしい。

 だから僕はサノに会いに来たという言葉をわざと使わずに素っ気無く言った。


 「別に、どうもしてないけど。それよりもサノは何に気合を入れるの??」

 「えっと・・・・記憶を取り戻すことに。」


 僕の問いに少し戸惑いながらサノは答えた。

 僕にはすぐに分かる。それが嘘であることを。

 だから僕は意地悪するように言う。


 「ふぅ~ん。サノは嘘が下手だね。」

 「んな!!」

 「でも、うん。詮索はしないよ!だから、傍にいてね?」


 ニコリと笑顔で僕は言った。僕の今ある有りのままの感情を。

 サノはそれを聞いて無表情になった。

 どういう意味か考えているのだろうか僕にはわからない。


 「ずっと傍にいることは出来ないと思うけど?」

 「大丈夫!」


 サノの答えに僕はすかさず言う。それも自信満々に。


 「いや、だから何に対しての大丈夫なわけ?ってか根拠は何??」

 「さぁ?でもそんな気がするんだ。なんでだろう?」

 「いや、聞かれても・・・。」

 

 僕の言葉にサノは戸惑っていた。

 何かを根拠に言うわけでもない僕の答え。

 きっとサノは『護子だからずっと一緒にいるわけじゃないし』なんて考えているのだろうか?

 確かに僕は護子だ。

 だからといって僕はサノと離れ離れになるつもりは一切なかった。

 

 (例えコノハが傍にいて欲しいと願っても、私には向こうに家族がいる、友達がいる。それをいつか教えなくちゃいけないのか?それをいう暇があるのかな?あるといいなぁ~)

 

 サノが今何を考え思っているかなんて僕にはわからない。 

 でも・・・・・。


 (絶対離れる気はないから!!)


 そう強く思う僕がいることをいつかサノに伝えたい。

 外を見ると空は夕焼け色で、それはまるで僕らをもその色に染めるかのような美しさだった。

 もうすぐしたら収穫祭が始まる。

 そのときに笛で僕の想いを伝えられたら良いのにっと僕は思わずにはいられなかった。



▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽

あれ~???恋愛がメインに。

コノハ主体です。もう、サノにバンバン想いを募らせております。


本編になかなか進みません。

脱線するなよ、私!!

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