1話:春・・それは、敵対するもの。
樹視点でいきます。
出始めは、学校からのできごと。
春、それは新しい季節の始まり。
春、それは恋人たちの増殖期。
春、それは虫の増える嫌な時期。
春、それは私がもっとも可哀想になる合言葉。
本城樹彼氏いない暦約18年。
意地はってんの?理想が高すぎるんじゃない?自分を見直してみたらぁ?だの、あ~だこ~だ言いやがって!!ンざけんな・・!!
「・・つき。・・いつき・・樹ってばぁ~。何独り言ってんの?」
「・・ッハ。え?!いや、別に何も言ってないよぉ?空耳じゃない??」
「まったくもぉ、また心の中でストレス解消してたでしょう?駄目だよぉ~。言いたいことがあるんなら、私に相談してって言ってるでしょ~。」
ブーっと膨れた幼馴染を見て私はため息を付いた。
樹・・・それは私の名前。性別?ッハ。聞くまでもないでしょ?お・ん・な!よ。まさか、今の会話で男なんて思っちゃいないでしょうね??残念ながらちゃんと女でございます。
それにしても、幼馴染であるせいか菅原 由衣は鋭い。私のことがなんでも分かると自身は言っている。間違ってもないけど、少し違う。私が彼女に相談しないのは、相談できないことだから、と言うことだ。
あなたにはいるだろうか?恋愛上手な友達に『彼氏ってどうやって作るの?』と単純かつアホな質問をしたやつに『そんなの、勝手によってくるんだよぉ♪』なんて言ってくるやつ。
いないだろう?いないよね?そんなやつは由衣だけにしてほしい。
「あーー!また、いーちゃん妄想してるぅ~。」
「いや、違う。断じて違う。妄想なんかしてない。ただ、自分の・・」
「不甲斐なさに嫌気が差した?」
(おおおおおぃ。誰だ?!今、ムカつくことを言ったのは!!)
「あれ?鈴乃ちゃんだぁ~。おはよぅ。」
「おはよう。菅原さん。それから・・・男女さん。」
「・・・・・。男女って誰のことだよ。私は女ですよ?それすらも分からないのですか?」
「あらあら。私ったら、間違っていたみたいね。ごめんなさい。男さん。」
「ん?うん?何か変な言葉を聞いたような気がしたんですけど、気のせいかしらぁ。しかも、名前のようになっているんだけど。」
「あら、気のせいじゃないわよ?逆に男のあなたが変な言葉遣いをしているような気がするのだけど。こちらのほうが気のせいなのかしら。ねぇ、菅原さん。」
横でニコニコ笑っていた由衣は突然話を振られてオタオタしていた。ざまーみろ。
にしても、よく口の回る女だこと。
(あー言えばこー言う。私の天敵、柴原 鈴乃。幼馴染よりも強敵、これ重要。)
一応説明しておこう。ここは学校で3年の教室の隣の廊下である。つまり、廊下でぎゃーすかぎゃーすか騒いでいるということだ。意味ないことを騒いでいるわけではない。
この女に今日の嫌味に勝たなければ、一日中言われ続けるのだ。『男さん。』と。いや、さんが付かないかもしれない。
それにしても、ここまで騒げば来るはずだ。うっさいおじんが。
「コラ!!また、お前たちか。3年にもなってよく騒げるなぁ。三馬鹿トリオ・・。」
「まぁ、相崎先生。おはようございます。先生、ひとつ訂正をしていただきたいのですが。」
「おぉ、おはよう。柴原、でなんの訂正だ?どこも間違っちゃいないだろう?」
「間違っていますわ!三馬鹿ではありません。馬鹿はただ一人、そう本城さんだけです。」
「そうよぅ。いーちゃんだけだもん、天然ばかさんなのはぁ~。」
(こいつら・・・・。)
やっぱり出てきた、おじん。相崎 進26歳、独身。女子生徒からも男子生徒からも大人気なお人。私が大嫌いな先生その一人。それにしても・・・。
「おぉ、そうだったな。2人は成績優秀者だったなぁ。馬鹿はいけなかったかぁ~。ハハハ。」
私の周りには味方がいない。これってどうよ。可哀想じゃない??
「ではぁ~、先生様さようならぁ~。」
ここで本当に頭のよろしい私は逃げるのです。これからあろう、儀式に出とうないのでございます。
「あ、コラ待て!!逃げるのか!!!樹!!!」
(ヲィコラそっちこそマテや!何故に呼び捨てなんだ?!さも、男を呼ぶかのように呼ぶなや!)
でもそんなこと思っても口にしないぞ♪だって、口にしたらその分の時間が無駄で捕まっちゃうじゃんか。あぁ、やっぱり私って頭いいなぁ~。
昔、由衣も言ってたし『いーちゃんは悪知恵だけは働くよねぇ~。』って!!うん?待てよ、褒めてないって?そんなことないよ♪最大限の褒め言葉じゃん!
そもそも、やつは人を褒めたりしないからぁ~とかなんとか考えてたら、悲しくなってきた。
「待ってって言ってるだろう!!!!」
(まだ、追いかけてたんだ。おじん。まだ、若いからか?頑張るなぁ。)
おじんこと相崎先生はこちらが全力疾走なのに対して負けじと全力疾走で追いかけて来ていた。
私の足は速い。普通の高校生男子よりも、スポーツマン並に速いこの足だけは自慢できる。
(ッフ。勝てるかい?ただ若いだけの先生が、私に・・・。)
「お、お前本当に始業式出たくないのか?な、何か理由があるんじゃないのか??」
(おぉ、先生が珍しく鋭い。息切れしながらも頑張って走ってるんだからお答えしてあげよう。)
ちらりと、走っている場所を確認した。新1年生の教室からはかなり離れた場所に自分たちはいる。
つまり、アイツはいない。それだけでも、心休まるが油断は大敵。なんせ、頭が良いにもかかわらず、わざわざこの高校に入ってきたのだ。未だに理由が不明だが・・・。
「頑張った先生に、理由をお答えいたしましょう。」
足を止めくるりと振り返った私を相沢先生は息を整えながら待っていた。
「答えは簡単。・・・・弟が、その儀式に出るからですよ。」
「はぁ?」
やはり、この先生も驚いたらしい。私に弟がいることにではなくて、くだらない理由に。
この理由を分かってくれるは、幼馴染である由衣だけだった。
しかも、あろうことか由衣は亜樹がここに入る理由を知っているのだ。姉である、私が知らないというのに・・・。
「くだらない理由と思いでしょう?私には違うんです。そんなわけで、バァイ先生。」
あ、待てって!という言葉が後ろから聞こえたが無視だ無視。
私は、学校からこれまた全力疾走で出て行った。一心不乱に走っていたせいなのか、気づけば家に帰る途中の見慣れた町並みが広がっていた。
さすがにここまで来れば、安心でき歩くことにした。
私が、弟を避ける理由。
(いつからだったのだろう?私が弟を避け始めたのは。きっと、あのくだらない喧嘩のせいだ。)
私と亜樹が喧嘩をし負けそうになるといつも私は卑怯な手を使う。それは亜樹の姉であることを主張することだった。
普段なら、私が『姉を敬いなさい。』といえば、むくれつつも大人しくなる。なのにこのときだけは、違った。
(初めてあんな言葉を聞いたせいだきっと。・・・『イッキは姉じゃない!』かぁ~)
「まったくなえるよ。いくら血が繋がってないからって、あんな言い方はないだろう?他にほら、あれだ。
他人が口を挟むなとかっだったらさすがの私も黙るがな。あの言い方は誤解を受けるだろうに。主に親たちに・・・。実際母は恐ろしい勘違いをしていたしなぁ。」
勘違い。そう、母が『あらぁ~、亜樹ちゃんたらこんな男みたいな子好きになっても意味ないわよ。亜樹ちゃんはイケメンなんだから、可愛い子をゲットしないとね?』
なんて言いやがって。亜樹も亜樹であそこで赤くなりゃぁ、勘違いが確定するだろうに。
そんなことがあったせいで、妙な空気がお互いの間に流れてしまって、謝ろうにも謝れなくなったのだ。
「元はといえば私が悪いんだけどさぁ~。」
まぁ、家に帰って来たとに謝るかぁ~なんて、のんきに考えていた私がいた。
まさか、家に帰れず迷子になるとは知らずに・・・。
あれぇ~。まだ、現代にいるよ。何故だ??こんなはずでは・・・。
次は確実に、現代にいません。きっと・・・いないはずです。にしても、複雑ですね。