16話:ライバル誕生
「それで?」
サノの問いかけにコノハは首をかしげた。
何を聞きたいのか分からないからだ。
「は?」
「だーかーらー、師弟関係になったのはいつなんだよ!話が逸れて聞けなかったんだ。」
そういいながら、偉そうにサノは腕を組んだ。内心もかなり偉そうである。
(私はちゃんと話の内容を覚える女!!でも・・・・テスト様は嫌いよ!)
「ああ、うん。あのね、師弟関係が始まったのは【大蛇の滅亡】後なんだ。」
「・・・・ああ!戦いで多くの戦友をというか、戦力を失ったからちょっくら戦力でも増やすか?とか思ったわけだな。」
「その言い方はなんかヤダ。」
そういいながらコノハは頬を膨らませた。
(コノハはこういう顔をしたときは、年齢相当に見えるけど・・・・さっきの赤髪のやつ・・・えーと赤朔!のときは大人びいていたな。)
対するサノはそんなことを思い、このことを言うとコノハが喜んで幼い表情が見られないくなりそうだったのでやめる。
コノハはサノの考えに気づくこともなく、訂正をした。
「亡くなった人たちのような戦力を持つ人がそこら辺にいたらいいんだけど、そういう有能な人はやっぱりすぐに見つけられないんだ。だから戦力じゃないよ!!一緒に戦ってくれる人を育てることにしたんだ。」
「んで、師弟関係が始まったと?」
「そういうこと。」
「ふ~ん・・・・・・お!!」
頷きながら立ち上がったサノは窓に寄り外を見た。そして発見。
「何?何か見つけたの?」
「いや、別に・・・。アイツ入れたんだなって思っただけだ。」
「アイツ・・・・赤朔のこと??」
「うん?ああ、そうそう。赤朔のこと」
そういいつつサノが赤朔のほうを眺めているとコノハの表情がだんだんと険しくなってきた。
そのコノハに気づくことなくサノは天羽に連れられて行く赤朔を観察する。
(サノは・・・・もしかして赤朔のほうが好み?)
などとコノハが思っていることはサノは知らない。
もし分かっていたらいろんな意味で突っ込んでいただろう。
(アイツの腰から下げている刀かっこいい!!)
などと内心はしゃいでいるサノにコノハのほうも気づくことがなかった。
もし気づいていたのなら自分の刀を見せて説明していただろう。いわくつきの自分の刀のことを。
気づくことのない2人はふと顔を見合わせて今気づいたように言った。
「「とりばぁー(様)は?」」
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「あ・・・・アイツだ。」
改めて村に入ってきた赤朔は早くもサノを見つけていた。
「なんだ?あいつ等もしかしてまだあそこにいたのか??既に夜中だというのに。」
不思議そうな顔をした赤朔を面白そうに見る一人の人物。否、変聖物・・・天羽である。
「おぬし・・・サノを好いたな?」
ずばりという天羽に赤朔は慌てた。
当たっていたというわけではない。まさか自分が男を好きになるなどとそんなことはありえないと思ったからだ。
「ば、バカ言うなよ!!なんで俺があんな奴を好くんだ!?しかも相手はお・と・こだぞ!!ったく。」
慌てて言い返す赤朔。
それをにまにまと見る天羽。
「そのお・と・こを好きになってしまったというわけですな?ほぉっほぉっほぉ♪」
「コノヤローーー!!」
何故かサノ好きになってしまったという前提で話を開始しようと目を光らせる天羽。
それに赤朔は顔を赤らめ天羽に向かって刀を抜いた。そして斬る。
否、斬ったつもりだったが天羽が取りに変わったため虚しく空を斬った。
「な!!お前!!変聖物だったのか!?」
「そうじゃそうじゃ。敬えよぉ~。」
「お前みたいな奴が変聖物なんてふざけてやがる!!っちょ、降りて来い!!」
赤朔が言うように変聖物は人に崇められる生物であり、またその性格は神の使いを思わせるほど礼儀が正しいと有名であった。
その性格に合わない天羽にたいして赤朔は驚きながらも絶対に認めない!と意地をはる。
ついでに天羽はさらりと赤朔の刃を避け空へと鳥に変わり舞った。
その姿はなんと見事である・・・・ところが天羽でなかったら赤朔は見惚れていただろう。
「降りてこいと・・・なんと無謀な!!わっちが降りてしまったらそなたに斬られるであろう!」
「あ、当たり前だろ!!お前は仲間に謝れ!!自分みたいな変聖物がいてすみませんって!」
「・・・・・・子供じゃな。」
「うがぁーーーーー!!!!」
天羽の言葉にますます怒りパラメーターを上げながら護子であるまじき行為、刀をむやみやたらと振り回していた。
それは自分に対しての敵に向けて・・・つまり頭上を優雅に飛んでいる天羽に刃を当てようと振り回していたのである。
「まったく何をしているんだ?天羽・・・・人をからかうなんてたちが悪い。お前もせっかく村に入れたんだろう?だったらそんな奴ほっとけ!」
天羽と赤朔が戯れていたところに男のような女のような声がその和やかな雰囲気を壊した。
その声を聞いて赤朔はゆっくりと背後を振り返った。
天羽はその声の持ち主の肩へと止まる。と同時にその声の主に振り払われた。
「アンタは・・・!!」
「よう!赤朔だっけかな?楽しそうに戯れているところ悪いんだが急ぎの用事なんじゃないのか?」
「ああ。そうだよ!そうだけど・・・コイツが!!」
「あん?天羽がなんか言ったのか?」
「なんかって・・・・・・・・(言えるわけないねぇーじゃん。)」
ボソリと小声で言う赤朔にサノは首を傾げた。
(コイツも天羽に遊ばれたんだな・・・・礼儀はアレだったが、同士か。仕方がない仲良くなろう。うん、友達が増えるしな!!)
「まあいいけどさ。んで急がねぇでいいわけ?」
「急ぐも何も、今この村にとりばぁー様はいらっしゃらないんだと。」
「え?」
赤朔の言葉に驚いたのはサノではなくコノハだった。
「じゃあなんでここに?」
「・・・・・・・・コノハ。さすがにその言葉はひどいぞ?」
「え?どこが??」
「(どうしたんだコノハ?なんかさっきと赤朔を見る目が変わってんぞ!あ、あれか!!嫉妬ってやつか!)・・・なわけないか。」
「ふぉふぉふぉ。佐乃助殿、百面相は人の見られないところでするものぞぇ?」
「お前、人によって言葉の使い方が違ってんぞ。」
「わざとです。」
コノハと天羽のせいで話がそれそうなっている横でコノハと赤朔がなぜか互いに睨み合っていた。
「おやおやコノちゃんは、嫉妬ですか?」
「し、嫉妬なんかするか!」
「あっそ。だったらえ~っと・・・」
「うん?あ、俺は佐乃助っていうんだ。よろしくな!」
「あ、はい。って、えぇぇ!!男なのかやっぱり!!」
「お、お前まで・・・」
「赤朔殿違いますぞ!!」
「違うのか?」
「はい。実は・・・・・・・・どちらでもないのです。」
「おおおおおおおおおおい!!天羽?」
「え、どっちでもないって・・・・・え?え?」
「っちょ!コノハも混乱すんなって!」
「・・・・コントはいいって。んじゃサノ・・・さん。明日この村案内してもらえないすか?」
微妙な敬語を使われながら赤朔は朗らかに・・・・少し照れながら尋ねた。
そんな赤朔をサノは見つめる。
(・・・・・・・・この世界の住人はイケメンかつ、笑顔が素敵な方が多いわぁ~ふふふ。惚れるなよ私!!)
などと考えていることはコノハには秘密でにしなければと何故か考えしまったサノがいた。
「案内ってほど、この村のことは知らねぇけど。いいぜ!どうせとりばぁー明日も帰ってこないんだろ?天羽?」
「そうですなぁ~。きっと帰ってこないでしょう。」
「なら、そういうことで。」
「って、えぇ!!サノなんで?」
「え!?なんでと聞かれても・・・」
「なんだ。やっぱり嫉妬してんじゃん。ま、コノちゃんは来ねぇだろ?」
「行くよ!!なんで行かないことになってるんだよ!」
赤朔に遊ばれているコノハを見てサノは驚いた。
(ほっっんとうに、さっきまでのコノハと全然態度が違うよ?なんか2人して子供の喧嘩っぽいことしているし。ってか優しいコノハはどこいった?!)
「コノハの性格が変わった?いや、違うな。」
「ここで引いてしまっては男が廃るというものですよ?」
サノの独り言に天羽が参加。
「っておい!また人の独り言に参加するな!これじゃあ会話になっちゃうだろ!!」
「またではありやせん。あの時は心の中を覗いたんでさぁ~。それに独り言よりも会話のほうが明るかろうにー。」
「待て待て。聞き逃してはいけないことを聞いたような気がしたんだが。・・・・・時と場合によるだろ」
「ふぉふぉふぉ。モテますなぁ~」
「モテ?重いものはあまり持てないぞ?」
「そんなアホな回答いりませんぞよ」
「お前にアホ言われたくないわ!アホウ!」
「天羽をアホウという佐乃助殿。もう少し頭を捻られてはいかがか?」
「う、うるさい!!」
天羽に遊ばれているサノを見る2人。
しかし2人が考えていることはまったく違うことで・・・。
(サノ・・・・また遊ばれている。そんなことよりも、なんで赤朔となんかと・・・。やっぱり好みなのかなぁ?)
(あの人も仲間だったんだな。ってことは俺と似てんの?いや、違う!きっと宇津木さんに似てるんだ!)
などと2人の頭の中はお花が咲いていた。
「と、ところでとりばぁーは何処いったんだ?」
「ふむ。それは・・・・・」
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更新成功。
妄想はさらに膨れ上がります。
パパーーン★Lvが1上がった。
楽しんでいただけていると嬉しいです。