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世界のありかた  作者: 三日坊主
第2章
17/33

15話:戦いと平和

 「あのやろ~~~・・・」


 赤い髪の一房ばかり白い髪が交じるまだ幼い顔を残した男、赤朔は毒づいた。


 「好き勝手いいやがって!!くっそぅ!!だいたいなんで、コノハがここにいんだよ?宇津木(うつき)さん何も言わなかったじゃないか!!」

 

 赤朔は村の関門の前におり審査を受けていた。そのためか、先ほどのことを思い返しては、うがぁーーっと雄たけびを上げ木に八つ当たりをしていた。

 何せ審査は長い。コノハが受けたときも数刻ほど待ち、昼寝をしたほどだった。


 「だいたい、ここは陰が多すぎなんだよ!!なんだあの数。どっから沸いて出てきたんだよ?しかも、帰り道分からんねぇ~・・・」


 赤朔の怒りは、佐乃助からコノハへ、コノハから陰へと移り変わっていった。

 そう、赤朔もコノハがここにくるまでに討伐した陰の数以下ではあるが、赤朔のように壱の者にとっては5人がかりで倒すほどの陰を相手に一人で頑張ったのだ。そのため何度か死に掛けたのだ。しかも、コノハ同様気づいたら村が目の前に現れたのだ。否、赤朔自身がこの場に移転していたため帰り道がわからなくなっていた。

 倒した陰の数を再び思い出すと赤朔は身体の疲労を思い出し草原へ身体を投げやった。

 赤朔は目を瞑る。

 心の怒りを静めると同時に浮かび上がるは後悔の念。


 「・・・さすがに不味かったよなぁ~。いくら疲れのせいで腹が立っていたとは言え、礼儀がなってなかったよなぁ~」


 赤朔は人からは口や性格の面を悪く言われ勝ちだが、本当はまだ精神的に成長し切れていない部分があるせいでいつも後から後悔するのだ。つまり、まだ子供だということである。

 

 「・・・コノハは気に入らねぇ~けど、『とりばぁー』様には失礼だったよな。・・・・・・しかし、あのやろう本気で殴ることねぇんじゃね?宇津木さんが言いそうなことを言うし。」


 人前では決して弱音や反省の色を見せない赤朔だが、宇津木には赤朔のそんな性格をわかっている数少ない一人であった。

 赤朔は『とりばぁー』があのときいなくて良かったと思いながら、佐乃助のことを思い出した。

 佐乃助の言葉が宇津木、つまり赤朔の護師にあたる者に似ていたため怒られているさなか『何故ここに宇津木さんがいるんだ?』と思ったほどだった。

 

 「宇津木さん。俺がコノハのこと嫌いなの知っていたから詳しいこといわずにこの村にいる護子を連れて帰れとか、『とりばぁー』様に【太陽が沈む】という伝言を言って来いとしか言わなかったんですね?ここにいる護子がコノハじゃなかったらなぁ~」


 赤朔は宇津木のことを師であると同時に親のように慕っていた。なんせ赤朔は親の愛を知らずに育った子供の一人であるがため親に、家族に愛されているコノハのことを嫌う一つの理由でもあった。

 

 はぁー・・・


 赤朔は寝転がりながら(だいだい)と紫色の狭間の部分の空を仰いだ。

 

 「あいつ・・・宇津木さんの親戚とかじゃないよな?」


 などと言いつつ佐乃助のことが気になる赤朔がいた。


〇●〇●〇●〇●〇●〇●〇●〇●〇


 「生死をかけた戦いって言うのは・・・」


 コノハがまたぽつりぽつりとサノに分かりやすいように噛み砕いて話し始めた。

 窓の外は夕方の色から夜の闇の色へと変わろうとしている刻限だった。

 外の松明に火が灯り始めていることにサノはチラリと外を見て気づいた。


 「 ある日ある時のことです。

   人々が【陽】と暮らし始め、生きる知恵を授かりそして子孫を増やしているときのことでした。

   ヒトは増えすぎたヒトをばらばらに分けその分けられた地を耕し作物を育て始めました。

   

   その分け与えられた地には、一つ一つ性質がありました。

   例えば【土】の場合、土壌が良く、田畑を育てるのに役立つという性質です。

   【蒼】の場合は清き水が流れ、人々の生活のための水が蓄えられるという性質です。

   このようにしてその土地の性質を利用しヒトは生活を始めました。


   しかしここ数十年の頃からでしょうか?

   【陰】の移動が始まったのです。

   【陰】の移動は始めヒトには何の危害もないかのように思われました。

   けれど、その思いは間違いでした。

   【陰】がヒトが暮らしていた土地に自分たちの住処を作り始めヒトを襲うようになったのです。

   ヒトは驚きました。

   何故移動を始めたのか。どうしてヒトを襲うのか分からなかったからです。

   

   ヒトを無差別に襲い始め終いには、ヒトよりも生存数が越えました。

   ヒトは怯え始めました。

   ただ、増えたこととヒトを襲うことに怯えたのではありません。

   その地を捨てて新たな地に移り住めばいいと思っていたからです。

   ですがその考えは浅はかでした。


   【陰】はヒトと同様にその生存数が増えれば増えるだけ新たな地を欲しました。

   また【陰】は食用を草木から【ヒト】へと変えたのです。

   ヒトの生存数がまた一段と少なくなりました。

   ヒトは怯えました。

   自分たちがこのままでは滅びるのではないかと思い始めたからです。

  

   ある時のこと。

   一人の旅人が江戸へとやってきました。

   奇妙な格好をした旅人は言いました。

   『戦いましょう。』

   ただ一言そういったのです。

  

   ある者は立ち上がりましたがほとんどのものは首を振りました。

   どのように陰と戦うのか分からなかったからです。

   旅人は立ち上がった者と役所を立ち上げました。

   そしてその者にあるモノを見せました。


   その者は尋ねました。『それは何でしょうか?』

   旅人は答えます。『これは【陰】が嫌う石と水です。石を身につけ、水を被れば【陰】からの厄災からは救われるでしょう。』

   その者は尋ねます。『どこでそれを?』

   旅人は答えます。『ここに来る途中に多くの場所を周りました。その時々で【陰】と遭遇しましたが何故か奴らは襲ってこなかったのです。理由を調べた結果がこの石と水でした。』

   

   旅人が見つけたその石で勾玉をつくりました。そしてそれは、戦う者へと与えられました。

   旅人が見つけたその水は効力が長く続くため、生まれたときに一度それから成人したときにもう一度被るとこを決めました。これは【ヒト】の全てが行う儀式となりました。

   その儀式を・・・ 」

 

 「洗礼っていうんだな?」

 

 サノはコノハの言葉を遮って言った。

 

 「うん。これが洗礼だよ。だからサノも洗礼はしているはずだよ?」

 「ふ~ん。」

 「ふ~んって・・・」

 

 サノの返答にコノハは肩をがっくりと落とした。

 サノにいたっては。

 

 (いや、してないから。ここの住人じゃないからね?)


 などと心で突っ込んでいた。

  

 「それにしても、その旅人はすごいなぁ~。よく死ななかったものだ。」

 「・・・関心するところはそこ?」

 「他に何かあるか?」 

 「旅人のお陰で身を守る勾玉ができたし、洗礼もできた。それに役所を立ち上げて護士を作った。」

 「最初は師弟関係がなかったのか?」

 「うん。師弟関係になったのはここ最近というか、最近じゃないけど・・・。」

 「っは?」

 「だから、ね?役所を立ち上げた後、護士をつくって武器持って【陰】を倒しにいったんだ。」

 「それで?」

 「【陰】だってバカじゃないんだよ?仲間がどんどん倒されて逝くのを見て団体で立ち向かってきたんだ。」

 「やるなぁ~」

 「褒めちゃだめだよ。」

 「しかたねぇーじゃん。生きるためなんだろ?【陰】だって。」

 「そうだけどね・・・。【大蛇の滅亡】はこのときの戦いで大蛇の【陰】を倒したことでついた戦名なんだ。」

 「そいつがボスだったのか?」

 「ぼす?」

 「だから、親玉みたいな?」

 「まあそうだね。」

 「それで、【陰】の暴走は収まったのか?」

 「一時は収まったけど、また始まったんだ。」

 

 そう言ってコノハは俯いた。

 サノはため息をついた。どこの世界も同じだと思ったからだ。


 (この世界では、【陰】と【ヒト】が争っていて。向こうの世界では、【ヒト】と【ヒト】が争っている。生きるためなんだろうけど・・)


 世界のあり方は難しいと改めてサノは思った。


 「ヒトや陰は・・・平和を望みながら、戦いをどこかで望んでいるんだろうな。」

 「え?」

 

 サノの言葉にコノハは顔を上げた。

 コノハにとってその言葉はまったくわけがわからないものだったからだ。


 「ん?なんでもねぇよ。いつかこの戦いが終わるといいな。」

 「いつかじゃないよ。もうすぐしたら終わるんだ。ううん、終わらせるんだ!!」

 「そっか・・・」


 サノはコノハの意気込みに何も言えなかった。

 

 (ヒトはそうやってなんど戦争を起こしたんだろうな。私のようなヒト一人がどうこうしたってどうにもならない。でもヒトが協力してやれば戦いが終わるかそれとも拡大するか・・・やっぱり。)


 「難しいな。」

 

 サノは小さくポツリと呟いた。

 その呟きをコノハが聞き取ることはなかった。


 「そういえば・・・とりばぁーのような【変聖物】はいつ生まれたんだ?」

 「さぁ?よくわからない。気づいたらいたんだ。」

 

 サノの質問にコノハは首をかしげながら答えた。


 「・・・なんかそれ恐ろしいな。」

 「そうかな?でも、あまり気にはしたことなかったよ。」

 「は?ああもしかしてまたアレ(・・)?思い込み?」

 「・・・まるで思い込みをしたらいけないかのようにいわないでほしいなぁ。」

 「んで?思い込みはわけ?」

 「たぶんね。思い込みなんじゃないのかな?」


 サノは思い込みほど恐ろしいものはないっと思った。

 それが顔にでていたのかコノハが睨んできたため、またしても謝る。


 (なんかコノハに謝ってばっかりだなぁ~。まぁ謝らせることをしてるんだろうけど。)


 が、サノは心から謝っていないのは見ても明らかである。

 そんなサノにコノハはため息をつくしかなかった。


 (サノは少し赤朔に似ている部分があるかも・・・。)


 そんなコノハの呆れにサノが気づくことはなかった。

赤朔は素直になるのが苦手な少年というか青年というか男の子です。


サノ=樹 18歳

コノハ  14歳

赤朔   16歳  です。


赤朔がメインに入ったり入らなかったり・・・どうなるのでしょうか?(ヲイ。

もしかしたら、ライバル・・になったら楽しそうですね。誰のかはいいません。


では、次項で!!

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