14話:大きな力
「子供向けの話ねぇ~。」
ふぅーっとコノハはため息をついた。
(・・・何がいいのかな?洗礼まで忘れているんだから、『光と影』にしようかな?あれは・・)
「そうそう。子供向けの一番簡単なやつがいい。頭使うの嫌いなんだ。」
サノの言葉によりコノハの思考が一時停止した。
(『光と影』は駄目だ。サノには難しすぎる。)
コノハは一人頷く。それを見たサノは顔をしかめた。
「おい。今、失礼なこと考えなかったか?」
「失礼なこと?」
「ああ。」
「別に、ただサノには易しい物語にしようと思い直しただけ。」
「お、お前・・・。」
サノは絶句する。自分が悪いことは分かっているが、ここまで言わなくてもいいと思ったりもした。
(コノハはこの短時間の間で性格が変わってきていないか?もしかしてこっちが素?それは・・・嫌だなぁー)
「だいたい、サノが難しいの駄目だっていうからいけないんだ。子供向けってほとんど忘れてるのに・・」
「子供時代に戻れ。いや、今も子供だったかー。」
「・・・サノ。」
コノハの声音が低くなった。
(何故だろう?事実を言ったのに怒ってないか?)
サノにはわからない。子供扱いを毎日のように受けているコノハにとってその言葉は、禁句だということを。
サノは首を傾げるが、コノハの目が怖かったので謝ることにした。
「すまん。」
「ただ謝ってるだけにしか思えないんだけど。」
事実だが嘘をつくことにしたサノ。
「気のせいだ。本当に悪いと思っているその・・・」
「繰り返し言われるのは嫌だから言わなくていい。」
「そうか、そうか。」
コノハの機嫌が少し良くなったのでっほとしたサノは、さぁ話を・・・と説明を求めた。
コノハは、まったくっと言いながら苦笑した。いろんな意味でサノに敵わないと知ったコノハがいた。
「じゃあ話すよ?今から話すのは本当に子供向けだからね?」
「わかったわかった。」
「 昔、昔の話です。
まだヒトが存在しなかった頃、世界にはヒト以外の生き物が幸せに暮らしていました。
しかし、ある時。神が気まぐれにヒトという生き物を御生みになったのです。
ヒトはだんだんと知識をつけ他の生き物とは違い神の元から離れていきました。
そう、ヒトは自我を持ち始めたのです。
自我を持ち始めたヒトは他の者と自分が違うことに気づくとその者を傷つけました。
しかし、他の者が自分と全く同じということはありえません。
そして一人では生きていけないことに遅からず気づき始めました。
ヒトはいつしか集団で生活をし始めました。
集団の内で、強い者あるいは知恵のある者がその集団をまとめます。
そうして村が出来、街が出来、国が出来、多くのヒトが増えました。
神はただ見つめていらっしゃいました。
ヒトが何をするのか興味が御ありだったのです。
ヒトは国をつくりその中で幸せに暮らしていくのかと思われました。
けれど、【ヒト】なのです。
幸せに生きることを望みながらも、争いは起こります。
些細な争いごとならすぐに済みました。
しかし、大きな争いごと。つまり国同士の争いごとになると、簡単には止まりません。
神は嘆き御悲しみになりました。何故、同じ【ヒト】なのに争いを起こそうとするのか。
けれど、その争いは【ヒト】だけには限りませんでした。多くの生き物が争いを起こし始めました。
神のみならず、仏が地獄の神が涙を流しました。
その涙が、生き物の影をつくったのです。
影は争いを起こす者を容赦なく消しました。
ヒト以外の生き物は大きな争いを起こさなくなりました。
けれど、この日本という国は影を逆に消さんと立ち上がったのです。
そのため、日本という国は他の国から切り離され、この世界には日本という国しか存在しなくなったのです。
日本のヒトは影を消さんと立ち上がりました。
しかし、そう簡単に消すことなどできるはずがありません。
ヒトは大きな力をどこかしら手に入れました。
そのお陰で、影の多くは消え去ったのです。けれど、またヒトの多くもその力に飲み込まれ消えてしまいました。
そんな時、影と対になるモノが生まれました。
その対になるモノを【陽】と名づけ影を【陰】と名づけました。
けれど、その頃になると【陰】は何もしなくなっていたのです。
そしてヒトは【陰】が影であったことを忘れつつありました。
影を消さんとしていた者があの力に飲み込まれ消えてしまったせいでもあったのです。
けれどヒトは【陰】を恐れました。
暗く闇を好み潜むといわれている【陰】に怯え始めたのです。
逆にヒトは【陽】を好みました。
【陽】は太陽の下を好みまた、人々に生きる術を教えていたからです。
ここまでが、僕達が生まれながらにして持っている知識だよ。」
コノハがそう話をとぎるとサノはただポカンと口を開けていた。
サノはまたしても混乱していたのだ。
「待て待て待て。さっきは【陰】がヒトに危害を加えたわけでもないってヒトも【陰】に危害を加えたわけでもないって言ってなかったか?」
サノの言葉に対してコノハはため息をついた。
「みんな最初はそう疑問を抱くんだ。【影】は【陰】だけど【陰】じゃないんだ。」
コノハの言葉にサノはまたしても口をポカンと開けた。
「どういうことだ?」
「だから、今話していたのは子供向けの物語だから。」
「今のが子供向け?」
「もう!!それを聞きたいんじゃないでしょ?」
「そうだけど。じゃぁ、【陰】は【影】じゃないってどういうことだ?その物語は嘘ついてんのか?」
「嘘って。違うよ。ただ今になって分かるんだ。【影】はあの時、大きな力と共に消滅した。けれどそれと同時に【陽】が生まれた。また新たに【陰】も生まれたんだ。」
「・・・。ってことは【影】の名残りを受け継いじゃってんのが【陰】だって言いたいわけ?」
「そうだよ。だから、生まれたばかりの【陰】がヒトにどうこうしようと思わないでしょ?」
「よくわかんねぇけど、そうなんだろうな。でも、ヒトのほうはそうはいかなかった?」
「・・うん。【影】を消滅させたヒトの多くというかほとんどは一緒に消滅しちゃったから。」
「その力がヒトが制御できる力ではなかったってことか?」
「そうだね。制御できなかったから、使ったヒトも力に飲み込まれ消滅したんだ。」
「だが、その消滅しなかったやつがまだ【陰】に怯えていたってわけ?」
「【陰】というか【影】なんだけどね。【陰】があまりにも【影】に似すぎていたんだよ。」
「ふ~ん。」
サノは話を聞きながら驚いていた。
(なんかすごいことになってるし。世界大戦みたいなことが起こりました。普通なら日本みたいに降伏するってのが、神様現れたせいで降伏どころじゃなくなって・・。)
日本が他の国と切り離されて、別の世界に移動されましたって・・っとサノは頭の中を整理しながら漠然とした。
(日本は大人しい国じゃなかったんだな。対抗するって・・しかも核かなにか使ったのかよ。大きな力ってどれほどの威力を持っていたんだ?)
「少しは思い出した?」
「いや、全然。」
コノハはサノの言葉を聞いて脱力した。
(記憶喪失じゃなくて記憶消滅じゃないのかな?消滅ってあるのかな?)
「それにしても、ここまでのことを生まれたときから知識として備え付けるってどういう神経してんの?神様はぁ~」
「どういう神経って。きっと二度と大きな争いをしてほしくないんじゃないのかな?」
「そんなもんか?」
「だって、サノは記憶無くなっているけど僕はある。その知識ももちろんある。だから怖いんだ。あの大きな争いは二度とあっちゃ駄目だって恐怖として植え付けられているんだ。」
「・・・でも、今【陰】と争っているんじゃねぇの?」
「僕らヒトと【陰】の生死をかけた戦いだからね。」
「生死?」
「サノは早く記憶を取り戻した方が良いと思う。」
コノハは呆れていた。これではサノが世間知らずということになってしまうからだ。それほどまでにサノは何も知らなかった。
(いや、記憶がないんだよね。・・・僕は記憶喪失にはなりたくないなぁ~大変そう。)
「そうするよ。んで、どういう意味なんだ生死をかけてるってのは?ついでに洗礼ってやつも。」
コノハは何度目かのため息をついてサノを見た。
きょとんとしている顔のサノはまだ何一つとして思い出していないのだろう。
「わかったよ。じゃあ、話すよ?・・・生死をかけた戦いっていうのは・・」
すごいことになってきました。
書いているこっちが驚いています。
いったい説明はどこまで続くのでしょうか?
説明ばかりじゃ面白くないですよね?