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【奏】第2話:許さない

 高校に入学した私は、サッカー部のマネージャーになることを決めた。

 入部の決め手は、もちろんゆーくんがサッカー部を選んだから。

 まぁ、あとはサッカーだったら小学生までやってたし、それなりに知識もあったので、プレイはもう出来ないけど、サポートくらいならできると思ったっていうのもあるけど。


 実際に入部して吃驚したのは、練習があまりにも適当だったことだ。

 元々運動系の部活に力を入れていない学校だと分かってはいたけど、監督はサッカー未経験の英語教師だった平家先生だし、先輩たちも色々と諦め気味に練習をしている感じだった。


 なので私は、海外の練習方法や、最新のトレーニングを勉強して、それを平家先生に練習プランとして提案することにした。中身を見た先生は、「早速今日からこの練習プランでやってみよう」と言ってくださり、部活動のメンバーに発表してくれた。


 その発表を聞いた部員たちのほとんどが戸惑っていたし、急に厳しくなった練習に嫌気が差して辞めてしまう人も出て来てしまった。私が提案をした練習プランで、部活の空気が悪くなってしまったと思うと、とても心が苦しくなってしまう。

 そんな状況を作ってしまった責任を感じて、部活中は完全に裏方に回って雑務をこなす毎日を過ごしていると、ゆーくんから話があると部室の裏にあるベンチに呼ばれた。



「なに落ち込んでるんだよ。奏が作った練習プラン。あれ本当に凄いよ。中学の頃より練習量は減ってるのにさ、めちゃくちゃ効率的にスキルアップしてるのが分かるんだ」



 ゆーくんが私のことを見てくれていた。

 ゆーくんが私のことを心配してくれていた。

 そして、ゆーくんが私が作った練習プランを褒めてくれた。



「辞めちゃった人が出たのは寂しいけどさ、今いるメンバーはお前の作った練習プランが凄いと思ってるから本気で取り組んでるんだよ。だから自信を持ってくれよ。もし俺たちが強くなったら、最大の功労者は奏ってことになるんだぜ?」



 私はあまりにも嬉しくて、涙がポロポロと零れ落ちてしまった。

 本当はこのままの勢いで抱きついてしまいたいんだけど、ゆーくんには羽月ちゃんがいるし、困らせてしまうだけなので必死に我慢をした。



「うん。ありがとう、ゆーくん。私は勝手なことして、みんなから恨まれてるって思ってたから、本当に救われたよ。いつもいつもありがとね」



 私は泣きながら、自分ができる思いっきりの笑顔をゆーくんに見せつけてやった。すると頬を赤くしながら、「まっ、そう言うことだからさ。元気出せよな」って照れながら言うゆーくんが可愛くて、ついつい揶揄ってしまうのだが、この空気感が私にとって本当に心地良くて幸せに感じた。




 -




 2年生に進級しても、私の生活に大した変化は起きなかった。

 例えば彼氏が出来たりしたら、色々と生活にも変化が起きてくるのかもしれない。だけど、私にはゆーくん以外の男子と、友人以上の関係になることは考えられなかった。


 そう、だって私はまだゆーくんに未練タラタラなのだから。

 正直あの2人が別れるイメージが全然湧かないんだけど、それでもゆーくん以上に良いと思える男性なんて存在しなかったのだから仕方がない。

 この先もずっとこのままではダメだってことは分かってるんだけど、まだゆーくんを好きな私のままで居させて欲しいと、誰に願うわけでもなく思っているのだ。


 だけど、2年生の夏頃からちょっとだけ変化が起きて来た。

 それは、中学卒業と同時に別の県に引っ越してしまった、光輝くんがこっちに戻ってくるというのだ。


 ゆーくんに「光輝が帰ってくるから、久しぶりに4人で遊ぼうぜ」って言われたときは本当に嬉しかった。だって、高校生になってからは、土日や休日のほとんどを羽月ちゃんと過ごしていて、私は学校や部活以外でゆーくんと遊ぶ機会なんて滅多になかったのだから。

 なので、ゆーくんから遊びに誘われた私に拒否する理由なんて一切なかったのだ。



(うふふふ。ゆーくんと久しぶりに一緒に遊べるなんて……楽しみすぎる)



 実際はゆーくんと2人ではなく、羽月ちゃんや光輝くんもいるのだが、私にはそんなことは些細なことだった。




 -




 光輝くんを交えて、久しぶりに4人が集まって遊ぶ日がやって来た。

 久しぶりに見る光輝くんは、背が高くなっていて元々イケメンだったのに、さらにグレードアップしているようだった。


 だけどちょっと気になったのは、羽月ちゃんがちょっと緊張していることだった。久しぶりに会ったから人見知りしちゃってるのかな? 羽月ちゃんは落ち着いて見えて、意外と小心者なところがあるしな。


 なんて思いはしたけど、一緒に遊んだらすぐに慣れるでしょと思い大して気にも留めることはなかった。


 今思い返すと、ここで私が羽月ちゃんと光輝くんのことを注意深く見ていたら、ひょっとしたらこの2人がゆーくんのことを傷付けることはなかったのかも知れない。




 -




 私たちが4人で遊ぶようになって、7ヶ月くらいが経ったある日。

 ゆーくんの部屋で4人で遊んでいたのだが、おやつに近所の洋菓子店が作る20個限定のロールケーキをどうしても食べたくなってしまったので、羽月ちゃんと光輝くんにお留守番してもらって、ゆーくんと買い出しに出かけてたのだ。

 そしてこの時間なら余裕を持って買えそうだなって思った矢先に、ゆーくんがお財布を忘れてしまったと問題発言をした。


 私たちは必死にゆーくんの家まで戻って、お財布を取りに行くため家のドアを勢いよく開けると、ゆーくんの部屋からドタバタと大きな音が聞こえて来た。


 顔を見合わせて、部屋のドアをゆーくんが開けると、慌てた様子の2人の姿が見えた。



(あれ? この2人様子がおかしくない? なんで羽月ちゃんの洋服がちょっと乱れてるの?)



 2人は虫がいたから大捕物をしていた的なことを言ってたけど、そんなのどう考えたって嘘だと思った。ゆーくんは羽月ちゃんに絶対の信頼を置いているのか、その言葉を信じてしまったようだけど、何回考えてもおかしいものはおかしかった。


 これをゆーくんに伝えていいのだろうか……。

 私はその結論をすぐに出すことが出来ずに、何日かどうするべきか一人で抱え込んでしまった。


 だけど、もし私の嫌な予感が的中していたら、ゆーくんはあの2人に騙されていることになる。

 私がそんなの見過ごせるわけがなかった。

 なので、ゆーくんに監視カメラを設置して、あの2人の行動を探ってみないかと提案をした。


 最初は逡巡していたゆーくんだったけど、モヤモヤを晴らすためにもスッキリさせようよと言うと、仕方なく首を縦に振ってくれた。




 -




 私はゆーくんに、残酷なものを見せようとしている。

 恐らくあの2人はそういう関係だろう。そうじゃないとあの違和感は説明することが出来ない。

 そうなると、監視カメラに映るのは、ゆーくんが一番大切にしている恋人と、昔からの親友のセックスのはずだった。


 とはいえ、流石に彼氏の部屋で最後まですることはないと思うので、多分キスしたりちょっとお互いの身体を触るくらいだろうと高を括っていた。


 しかし、結果は想像以上に乱れた2人のセックスだった。

 そんなものを見せつけられたゆーくんは、吐き気を催してしまいトイレに入ったっきり篭ってしまう。


 私はあまりにも酷い映像を見せつけられた怒りと共に、私が提案したことでゆーくんに取り返しのつかない傷を負わせてしまったことに深い後悔をした。


 もっと良い方法があったのではないか、ゆーくんが傷つかずにあの2人の不貞を暴くことはできなかったのか。

 あまりにも浅慮だった私の馬鹿さ加減に、苛立ちを覚えてしまった。


 だけど、もう起きてしまったことは覆らない。

 私が悲観していてもどうにもならないのだ。

 だったら私がするべきことは一体何なんだ?

 それは深く傷ついているゆーくんの側にいて、支えて、助けてあげることなんじゃないのか?


 私は心に誓った。

 ゆーくんのことは私が守る。

 これ以上ゆーくんを傷付ける人は絶対に許さない。

気付けば80万PVになっていました。

初めて書いた小説が、こんなにもたくさんの回数を読まれているなんて信じられません。

皆様いつもありがとうございます!


最終話まで残り2話となりました。

面白いと思ってくださった方は、ぜひブックマークをお願いします!

レビューもぜひお願いします!


それでは最終話までぜひお付き合いください。

引き続きよろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 結果は想像以上に乱れた2人のセックスだった。 [一言] このある意味強姦野郎はバラス気満々で、この部屋で盛りましたからね。 後々ほぼ同意となってセックスしてますが最初はほぼ押し切る…
[一言] ここからイベントのたびに行われるダイスロールは全部成功、それもクリティカルなんですね。 奏ちゃん、超強運だ
[一言] 奏視点から見ると改めて羽月と光輝の屑さが半端ない
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