7話 エルフ救出
エーデルの話を聞き終わり、俺は部屋を出た。
外でギールが俺の様子を見ていた。どうやら話が終わるまで待っていたらしい。
場所を俺の寝室に移し、エーデルから聞いた内容をギールに話すことにした。
「魔王様は、どうなさるおつもりですか?」
「エーデルが言っている家族や仲間を探そう思う」
「手がかりもなしにですか?」
「いや、場所は分かるし、何があったのかも分かっている」
「そうですか」
「何か手伝うことはありますか?」
「ギールとノールには、俺が連れてきたエルフの世話を頼みたい」
「承知しました」
「じゃあ頼むな、俺はすぐに出発するから」
*
エルフ達はどうやら人間に捕まり、エーデルと同じようにオークションに出品されたり、奴隷として売られていた。
エーデルと強い関わりのあるエルフの気を探り、標準を合わせ力を発動すれば頭の中にそのエルフが今何をしているのかが見える。更に、そのエルフの過去を見ることも可能だ。
同様にエーデルの親も探した。どうやら、行方不明のエーデルを探すため各地に渡り、今も捜索途中のようだった。
悪魔であるエーデルの母が居なくなった事を期に、エーデルの里のエルフは人間に捕まった。
目的は金。エーデルやデージーが高く売れたことに味を占めた奴らの犯行だった。普通の人間相手ならこんな事にはならなかっただろう。相手は国お抱えの魔導士だ。国は悪魔と共存するエルフの存在を良しとしなかった。国からの命令でエルフを始末しに来たが、悪魔の存在が邪魔で、まずはその娘に狙いを定めた。
狙い道理エーデルを捕獲。そのまま始末することも出来たが、悪魔からの報復を恐れた魔導士達は、直ぐにエーデルとデージーを闇オークションに出品する。国からは始末するように言われていたが、バレるはずがないと高を括りエルフを捕まえ、次々とオークションに出品していった。悪魔がいない上に数の少ないエルフ達は簡単に捕まってしまった。
俺はエルフを助けに屋敷に侵入していた。
屋敷全体に時間停止の魔装をかけエルフのもとへ瞬間移動。エルフには事情を説明し、城へと移動。
待機しているギールとノールに後を任せる。それを繰り返していき、最後にエーデルの両親にたどり着く。
瞬間移動するとエーデルの両親だけではなく、他のエルフもいた。エーデルを探しながら、捕まった他の仲間も助けていたのだ。皆普通の人間に見えるよう、エーデルの母が力を使っていたが俺にその力は効かない。両親以外の奴は皆エーデルと同じように魔力を封印されている。首輪や手錠、足かせとそれぞれだが。
皆で野宿の準備をしている様だった。
「エーデルのご両親ですね」
俺の言葉に反応したエーデルの両親が俺に駆け寄ってきた。
「エーデルの事をなにか知っているのか!? 何でもいい、知っているなら教えてくれ!!」
「お願いします!! 私達はずっとエーデルを探しているんです!!」
「エーデルは俺が保護しています。エーデルから頼まれて、俺はここに来ました」
「エーデルは無事なのか!!」
「はい、療養は必要ですが無事ですよ」
「そ、そうですか」
エーデルの両親は、お互いを支えるような形で泣き崩れた。
「あ、あの! 他にもいませんでしたか? デージーと言う名のエルフです! その子もエーデルと同じ日に居なくなったんです!!」
「デージーのご両親ですね」
「はい! デージー、あの子は、あの子は無事ですか」
覚悟を決めて来たつもりだった。デージーの事は知らせなくてはならない。
だが、実際にデージーの両親を目の前にすると、言葉が出なかった。俺はゆっくりと首を左右に振ることが精一杯だった。
「・・・・・・そんな」
デージーの両親になんて声をかけていいのか分からなかった。
この光景を見てしまうと、伝えないほうがよかったんじゃないかと、自分の選択は間違えていたのではないかと思う。
「とにかく移動しましょう。他のエルフ達も俺の城で待っています」
「城って? そう言えばあなた悪魔のようだけど」
「一応、魔王です」
エーデルの母を始め、皆驚いた表情をしていた。
指輪を見せるとエーデルの母は納得してくれた。他のエルフは俺の言葉を信用していいのか迷っているようだった。
無理もない話だと思う。散々人間から痛めつけられた奴らばかりだ。自分たち以外を信じる事は難しいだろう。ましてや魔王ともなれば尚更だ。
捕まっていたエルフ達は、皆心身ともに疲れ果てた様子で、只々俺の言葉に頷くだけだった。
実際には同意なしに、問答無用で連れてきたに過ぎなかった。