表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/11

4話 訪問者

寝室の扉のノック音で目が覚めた。

何だ? まだ夜だぞ? とりあえず扉を開け、ギールの姿を確認する。


「何かあったのか?」


「魔王様にお客様です」


「客?」


一瞬嫌な予感がした。まさか、追手か?

今の自分なら、追手を怖がる必要はないが、今は逆に相手をするのが面倒だ。

折角、この穏やかで平和な日々を噛み締めて生きていると言うのに。

何か現実に戻された気分だ。


「魔王様に挨拶したいと、悪魔が来ています」


「悪魔が挨拶に?」


「はい、新しい魔王に挨拶がしたいと」


追手ではないと分かり、ひとまずは安心したが、挨拶ね・・・・。悪魔って意外と律儀なのか?


「分かった、その悪魔は今どこにいる?」


「応接室で待たせておします」


「了解、ところでギール」


「はい」


「魔王っぽい服、選んでくんねえ?」


「はあ」


ギールは一瞬、呆れたような態度だったが、直ぐに服を選んでくれた。

まあ呆れるよな、魔王が部下に魔王っぽい服選んでくれなんて。魔王として、もっと威厳を感じる言動をとるべきか、とは思うが面倒なのでそれは却下だな。



          *


ギールに選んでもらった服に着替え、応接室へと向かった。

部屋にはギールと、挨拶にきたと言っていた悪魔が、向かい合って、ソファーに腰かけていた。

俺が入ってきたこに気づいた悪魔は、サッと立ち上がり俺のほうに向かってきた。


「おお!! 新魔王さま!! お初にお目にかかります。 (わたくし)は、ノール、と申します」


深々と、俺の目の前でお辞儀をする悪魔。すこしピンクの混じった銀髪が、サラッと流れる。


「挨拶が遅くなり、申し訳ありません。」


「ノールか、よろしく」


「はい! 今後ともよろしくお願いいたします!」


ニコニコと人懐っこい笑顔で、テンションも高い。ギールとは、真逆のタイプって感じだ。

俺は座るよう促し、ノールの向かいに腰かけた。

改めて、ノールを見る。なんというか、悪魔ってイケメンが多いのか?ギールもイケメンだが、ノールはまた違うタイプのイケメンだ。華やかなイケメン?ギールは、すっきりとしたイケメンって感じた。


「急な訪問にもにも関わらず、ご対応感謝いたします!! 」


「おっおお、まあ折角来たんだ、ゆっくりしていってくれ」


「ありごうございます! しかし、驚きました。以前来た時とは、城の様子がかなり変わっておりますね!」


「ああ、大分老朽化が進んでいたから、大幅に修繕したんだ」


「さようでございましたか。とても美しくなしましたね! 椅子のデザインや花、絵と、見ていて飽きない!! 城の主からの持て成しも感じます!! 魔王様はとてもセンスのあるお方ですね!!」


滅茶苦茶褒めて貰ってる所悪いが、カタログから適当にそれっぽく見えるよう、選んだだけなんだよな。

なんて、言えないな。

元々がボロボロだったから、余計に綺麗に見えるのかもしれない。それより、さっきから気になっているものがある。


「それより、その袋は何ですか?」


ギール、ナイスだ! そう、部屋に入ってきた時から気になっていた。ノールの横に、人ひとり入れそうな大きな黒い袋。ご丁寧に、袋の口は赤いリボンで結ばれたいた。もし本当に、人だったらどうしょうと思って、正直聞く勇気がなかった。


「よくぞ聞いてくれた!! 実は、魔王様にご挨拶するのに手ぶらではと思い、何か良いものはない物かと、探していた所、運良くとても珍しいものが手に入りました。いやー、実はいい手土産が見つからず、挨拶が遅くなってしまったのですが、本当なら、もっと早く挨拶するつもりだったのですが」


「で、その良い物とは?」


ギールが、ノールの言葉に割って入る。

多分、説明を聞くのが面倒だったんだろう。

そのままにしてると、永遠に喋りそうだもんな。


「そうですね、さっそく見て頂きましょ! 」


赤いリボンを解き、中身が現れ、俺は目を丸くした。


「なんと!! 悪魔とエルフのハーフです!!」


いやいやいやいや!!! 何ドヤってんだこいつは!! 

明らか、どっかから誘拐してきてんじゃねーか!!

確かに、その子からは、悪魔とエルフの魔力を感じる。耳はエルフの様に長くはなく、悪魔のそれだ。

しかし、その悪魔とエルフのハーフを見ると誘拐だけではないように思う。

女のようだが、服もボロボロだし、かなり痩せている。白金の髪色が特徴的だが大分傷んでいる。

何年もまともな生活を送ってきていないように見える。

ノールの口振りから、ここ数日の間に見つけたようだか、何か訳ありが?

今は眠っているようだが、一番気になるのは、首輪だ。鉄製の首輪の様だが、魔力が込められている。

この首輪が、どうやらこの子の魔力を封じ込めているらしいな。


「それで、この子とは何処で出会ったんだ?」


「はい、ダイル町の近くの森で見つけました!」


ダイル町と言えば、のどかな町で、特に治安が荒れていると言うことはないし、近くに大きい街がある訳じゃない。俺の知らない何かがあるのか、それとも、たまたまそこに居ただけなのか。


わたくしが、何か手土産にいい物はないかと途方に暮れていた所、同じ悪魔の気配がしたので、同じ悪魔なら何かいい物はないかと、聞こうとしたのですか、近づいて見ると、悪魔とエルフのハーフだったのです! わたくしはこれだ!! と思い、このハーフを献上したしだいです」


うん! ばっちりガッツリ誘拐ですね!!

頭が痛くなりそうだ。この子を探している奴が居るはずだ。どうしたものか。

とりあえず、この子が起きるのを待つ事にするか。


「とりあえず、その子を別の部屋へ移してくる」


そう言い俺は、その子を客室のベッドへ移動させた。

念のため、ベッドのサイドテーブルに水と食料を置いていく。

この子の記憶を覗く事も出来るが、勝手に覗く訳にもいかないし、やっぱり起きるのを待つのが一番か。


応接室に戻り、さっきと同じ場所に座る。


「いかがですか?魔王様!! お気に召しましたでしょうか!?」


ノールは俺の行動に、自分のプレゼントを俺が受け取ったと勘違いしたのだろう。

感想を求めているようだが、どうしたものか。


「・・・・お気に召しては、いない、かなぁ」





悪魔にどう伝えればいいんだ! 誘拐は犯罪ですよ、なんて悪魔に通じるのか? そもそも俺は、手土産なんて頼んでねえ!!





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ