3話 機能確認
まずはそうだな、食事だ。
俺は寝室に向かった。食事をするなら食堂に行くべきだが、何せこの城は広い。瞬間移動も出来るが一々やるのも面倒なので、俺は寝室を改良し、寝室だけで、ある程度の事が出来るようにした。2LDKに部屋を分けキッチンやトイレに、風呂も作った。
食事をするには食事カタログをまず開く。
開くと本状の媒体から液晶画面が浮き出てくる仕組みだ。
そこから指で食べたいものを選び、指を移動させ、液晶から選んだ食べ物が半透明の状態で指と一緒にくっ付いて出てくる。机へと誘導し指を放し画面の決定ボタンを押すと食べ物が出てきた。
よしよし、ちゃんと機能しているな。
食べ物の他にも服や家具のカタログも作ろう。
後は何が必要だ?色々とやる事はまだありそうだが、まずは食事を楽しもう!
今日は豪勢にステーキにしてみた!
見た目も匂いも問題なし!! 肝心の味の方はと、うん! 問題なく美味い!! 良かった。他にも、スープやライス、サラダを出したが、こちらも問題ないようだ。我ながら凄いものを作ってしまった。
これも、魔王としての魔力あっての物だが。
よし、腹も満たされたので、次は風呂だ。
風呂はボタンを押せば、一瞬で浴槽に湯がはる仕組みになっている。
もちろん、温度調整や量の調整も可能だ。
浴室はシンプルに浴槽とシャワーのみ。
浴室の水を浴びるだけで、汚れが落ちる様になっている。
つまり、ゴシゴシ洗わなくても済むと言うことだ。しかし、浴槽とシャワーだけじゃ、やっぱ物足りないな。
モニターでも付けて、映像や音楽を流そう。
そうして風呂を堪能し、次は乾かす機能だ。
浴室内にある、入浴終了ボタンを押せば。
浴槽のお湯が無くなり、清掃された、綺麗な状態になる。そのうえ、濡れた体や髪も一瞬で乾く様にした。
何ヶ月も風呂に入れていなかったこともあり、すっかり長湯してしまった。
脱衣所に出た俺は、洗面台で口を濯いだ。これも風呂と同様、歯を磨かなくても綺麗になり、洗顔や手洗いも水だけ綺麗になるようにした。
洗面台の鏡でふと自分の顔を確認する。目以外の悪魔の特徴は、まだ見られないな。ほんの少しだが、耳の先端や爪先が鋭くなっている気がする。
それより髪だ。逃亡生活で顔を隠せるくらい伸びた前髪を摘まみながら、何か良いアイディアはない物かと考える。
鏡にも機能を付ける、というのはどうだ?
カタログのように、鏡にいろんな髪型を載せて選ぶ。選ぶと鏡に映った自分の髪型が変わり、確認するとこが出来る。これなら、切りすぎたと後悔することもないし、何かイメージと違うってやつも回避出来る。
序でに、色のバリエーションも追加して、女性用に化粧も出来るようにしよう。
テストもかね、色々試していくうちに、気が付くと髪型や化粧で遊んでしまっていた。
我に返り、髪型を決めて決定ボタンを押した。
短くなった自分の髪を確認し、次の問題点に気が付く。
せっかくさっぱししたのに、着替えのこと考えてなかった。全裸で鏡の前で、傍から見たらヤバイやつじゃん。一人で良かった。
今日の所は魔力を使い、適当な服を出して解決した。
*
悪魔は睡眠をとらなくていいらしいが、俺はしっかり寝た。他の悪魔は知らんが、俺は元人間だ。
夜寝て、朝起きる。それに、ゆっくりと寝られるのは久しぶりだ。とても爽やかな朝だ! 起きて、こんなに気分がいいのは久々だ!
さてと、課題は山積みだ。家具や衣類、それに日用品なんかのカタログも作って、後は、内装の装飾や部屋の家具も、もっとこだわりたいな。
まずはカタログを作り、ギールに渡した。
「使ってみて、感想を後で教えてくれ」
「分かりました」
返事をしてギールは、他に用事が無いと分かると、直ぐに自分の部屋へ戻ってしまった。
相変わらずクール。
もっとコミュニケーションをとれたら良いとは思うが、知り合ってから日が浅いうちは無理があるか。 (ねえねえ、私髪切ってみたんだけど、どう?) って俺は恋する乙女か!!
脳内の乙女な俺をすぐに消して次に向かう。
次は装飾の類なのだが・・・・。どこから手を付けるべきか。簡単そうな廊下からいくかな。
廊下といえば、何だ? 花? それとも鎧? 肖像画何て手もあるな。
日用品カタログと睨めっこしながら、満遍なく、装飾を施していく。
ある程度形に出来たら、それを城全部の廊下に反映させる。違和感がある所は後で替えればいいとして、魔王の城に花ってのはやりすぎか? 後でギールに確認しよう。
使用人様だと思われる部分は除いて、応接室や執務室、客間、客室と行っていき終わる頃には夜になっていた。
まさか一日掛けてしまうとは。拘りすぎたか。誰が来る訳でもないのに・・・・。
いや、そのうちだれか来るさ! そう言う事にしておこう!!
今日はこのくらいにして、最後にギールに感想を聞きに行こう!!
「ギール、今ちょっといいか?」
「はい、何でしょう?」
「使ってみてくれたか?」
「はい、便利でいいと思います」
「おお! まじか!!」
まさか、お褒めの言葉が出るとは思ってもみなかったので、正直素直に嬉しい!!
「ですが、種類が多すぎます。一冊に纏めすぎていて、これだけ多いと、選ぶ事が面倒になってしまいます」
まさかの、上げて落とすだと!!
「そうか、纏めすぎか。もう少し本の種類を増やして、分散する必要がありそうだな」
「そうした方がよろしいかと」
「ありがとう、参考になったよ! 他には何かないか?」
「他は特にありません」
「そうか、また何かあったら教えてくれ!」
「分かりました」
「それから廊下や客間を装飾しから、暇な時にでも確認してほしいんだ。問題があれば、今みたいに教えてほしい」
「分かりました」
「時間とらせて悪いが頼むよ、じゃあな」
「はい」
そうして俺は寝室に戻り食事をして、風呂に入ることにした。
やっぱり風呂はいいな。明日は入浴剤を使おう。
しかし、朝に比べると少し、ほんの少しだがギールと会話が弾んだように思える。いい傾向だ。
今日もぐっすり寝られそうだな。明日は何をしようか。後回しにしていた庭に手を付けるか。
こうして俺は、満足した一日を終えた。
と、思っていた。