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Riddle 〜魔法師たちのお仕事〜  作者: 小雨路
第6問『愛の真ん中にあって、必要不可欠なものは?』 後編
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国盗り武闘大会、開始

「さ、さて。それでは例年通り、最後に勝ち残った者が大総統と戦う権利を……えっ……しかし! ……はい、わかりました」


 ハウがマイク越しに口上を述べようとしたが、途中でディータが何事かを耳打ちする。最初はそれに抵抗しようとしていたようだが、カウはあきらめたように頷いた。すうっと空気を大きく吸い込むと、マイクに向かって大声でディータに耳打ちされた内容を告げる。

 大総統を打ち負かすため、国を我が物とするために集まってきた挑戦者たちへ。


「『挑戦者たちへ、俺はここにいる。貴殿らが俺に挑むのを許そう。さあ、全ての者よかかってくるがいい』……つーまーりー! 大総統VS挑戦者全員だああああ!!」


 その言葉に。男女問わず悲鳴じみた歓声がのぼる。


 下の観客席から上がってくる叫びの中、横のチナミを見るとこれまた難しそうな顔をして、カウ……というよりのその横のディータを睨んでいた。

 そんなチナミを見て、スクナはどうしたんだろう、ディータが心配なのだろうかと的外れなことを考えていた。それとも実は具合が悪いとか……どんどん外れていく思考に、心配の色が顔に乗ったのが分かったのだろう。スクナが自分を見ていることに気付いたチナミは、振り向くと目を丸くした後かすかに笑った。


「チナミ班長……」

「大丈夫だ、なんともない」

「えっと……本当に?」

「ああ」


 部下からの心配にくすぐったそうに答えるチナミ。ひゅうっとふいた春風にチナミの金糸の髪が巻きあがる。ほのぼのとしたところで、ひやりと視線がそんな2人に投げかけられた。ディータだ。

 酷く苛立たし気な冷たい眼差しに、そんなに怒らずとも……とチナミは口端をひきつらせた。なんなのだろう、この可愛い部下への執着心は。

 冷えたそれに気づかなかったスクナは、突然顔をひきつらせたチナミにやっぱりどこか悪いんじゃ……と見当違いの心配をしていた。


「舐めやがって!」

「ふざけてんのかよ!!」


 そんな声たちが観客席から上ったかと思うと、次々に低く作られた白石の壁を飛び越え武闘場、その舞台となる白砂がひかれた場へと降りて行く者たちがいた。挑戦者らしい。やがて全員が降り立つと、ディータが場を睥睨しながらマイクを介して尋ねる。


「これだけか?」


 全員で200名弱はいるだろう。それをこれだけとはいかに。そう思ったのはスクナだけではなかったのだろう。

 挑戦者たちから苛立った野次が飛び、チナミとは反対のスクナの隣の席の貴婦人が扇子で隠しはしたものの、失笑するのが見えた。

 それになんとなくむっとして、スクナは心の中で呟いた。


(頑張れ、ディータ!)


 聞こえるはずもないそれが聞こえたかのように、ディータはスクナに視線をやるとひらりと手を振った。それに、はてなマークを浮かべるスクナ。チナミはスクナの顔からその疑問をくみ取ったようだったが、特に何も言わなかった。


「全員跪かせて見せよう」

「いいぜ、大総統サマ! 俺たち全員にそれが出来たら、倒れなくても負けと認めてやらあ!」


 跪いたことなんてねぇから出来るかどうかわかんねぇけどな! げらげらと大口を開けて笑う身長が2mはあろうかという大男。無精ひげを生やし、どこか野人的な様子は確かに跪いたことなんてないだろうと思わせた。少なくとも、スクナにはそう見えた。スクナの隣の席の貴婦人が扇越しに顔をしかめたのがわかった。反論も出ないことから、挑戦者たちの総意であると考えていいだろう。


 跪かせることと倒すこと。どちらが簡単かと言えば、間違いなく後者だ。跪かせるなんて、本人の意思がなければ出来はしない。それはもう、相手の意思関係なく跪かせる方法があれば話は別だが。


 挑戦者たちの言葉に鷹揚に頷くと、ディータは200名以上がいてもまだ大立ち回り出来るほど広いその白砂の上へと、アナウンス席から飛び降り、音もなく立った。


「そ、それでは大総統VS挑戦者、国盗り武闘大会始め!」


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