チナミ班
きゅっと身をすくめたスクナに、チナミが困ったように微笑む。どうしてスクナが縮こまってしまったのかわからない顔だった。小さくなった部下、それをどうしようかと視線部屋にめぐらせたとき。
そこで、何かに気が付いたかのように本の塔が積み上げられているデスクに向かう。と、チナミの両手でやっと抱えられるほどの大きな箱を持ってスクナの前に立った。
「ほら。君のものだ、開けたまえ」
「あ……はい」
プレゼントというには何の装飾もしていないシンプルな白い紙箱。突然に手渡されて、目を白黒させているスクナに、チナミは開けるように促す。
にこにこと笑いながら戸惑っているスクナをせっつくのは、若干脅しも入っているようだったが。
びくびくとしつつも促されるまま、開けてみると。
「これ……」
「魔法師のローブだよ。君が魔法省の役人という証さ」
黒地に銀糸で緻密に魔法省の紋章が刺繍されたローブだった。
広げてみると、それはチナミのように肩から膝までをすっぽりと覆うもので。全く同じそれ、魔法師を目指すものにとって憧れともいえるそのローブに目を輝かせるスクナ。
成功した悪戯に喜ぶように可愛らしくウインクして、チナミはスクナにまとうように催促する。
言われるがままにすっぽりと肩から膝までのローブを身にまとい、チナミを見る。
「似合うじゃないか」
「あ、ありがとうございます!」
「ふむ。最後にこれだな」
表情豊かに右手であごの下を撫でながら、笑顔を見せるチナミに、スクナは照れ笑った。より幼く見える印象の笑顔に、チナミはフリルの間から自分が付けているものと同じ、金色に輝く柊の葉が2枚交差したピンブローチを取り出す。ただ違うのは、そこに下がった鎖は1本であった。
「かがみたまえ」
「はい」
いそいでかがんだスクナの胸元に、そのブローチをつける。
窓からの柔らかい日差し、その光に、きらりと柊の葉の縁が金色に光った。
「改めて。ようこそ、魔法省へ。私と君、2人でチナミ班だ」
「あ、ありがとうございます」
「ゆえに」
少し困った顔をして、チナミは笑った。逆光になっていたからよくは見えなかったが、少し空気を緩めたのがわかった。
「『チナミ班で』現場に行くのだよ」