表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Riddle 〜魔法師たちのお仕事〜  作者: 小雨路
第5問『頭は魚、身体は動物、でも本当は花。この花なあに?』
71/99

離れない

「別に、ならば覚える必要もないだろう」

「え?」

「私がいつでも結んでやると言っている」


 どうせ離れることもない。前から伸びてきた手がスクナの頬をなぜる。

 黒い革手袋の感触とは違い、ほのかに温かい人肌が気持ちよくて、スクナは目を閉じた。

 目を閉じたまま、スクナは嬉しそうに笑った。「離れない」という言葉に。普通の年頃の男の子ならば嫌だろうが、なんせスクナには両親がいない。愛情を示されて嫌な気はしないのだろうと出会って約1週間で、なんとなく気持ちの把握ができるようになったことに、チナミはため息をついた。

 しかしスクナは気付いた。ユティーの手の動きが最初のなぜるようなものとは違い、何かをこすりつけるような動きになってきていることに。ぱちりと目を開ける。

 見上げたユティーはにやぁとでも言えばいいのか、邪悪ともいえる笑みをその冷たい美貌に灯していた。


「ユティー?」

「どうした、スクナ」


 にやにや愉悦を交えて嗤いながら、平然と返すユティーに、スクナは思い出した。先ほど自分がユティーに叱られたときのことを。

 さっと青くなって、いまだなぜているユティーの手から顔をそらして顔を遠ざける。ぐいっと頬を拭ってみると、やっぱり。

 べったりとラメがくっついていた。


「ユティー!」

「拭くものがなかったからな」

「だからって僕の頬で拭くことないだろ!」

「スクナ、まだ礼を言われていないが」

「ネクタイありがとね! じゃなくて!」

「ふん、当然だな」


 頬を赤くしながら怒っているスクナを飄々と流しながらお礼まで要求するユティーの手腕に、チナミはめまいがしそうだった。

 それだけ怒っても全く耐えてなさそうなユティーに、スクナはため息をついて肩を落とした。あきらめたらしい。それすらも愉しそうに見ていたユティーのどこまでが計算だったのか。


 ふと、ユティーがぴたりと動きを止める。どうかしたのかとユティーを見るチナミとスクナには目もくれず。

 するりと衣ずれのさやかな音ともにユティーの細い指がスクナの腰を這うように、下から上へと撫で上げる。

 ぞわりとスクナの背筋が粟立つより早く、スクナよりもよっぽど大きな手は。ばしり、またはばちんと音を立ててスクナの腰をぶっ叩いた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ