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「君はいつも美味しそうに飲んでくれるなあ」

「美味しそうなんじゃなくて、美味しいんですよ! チナミ班長」

「そうかいそうかい、じゃあ私の分のクッキーもあげようじゃないか」

「いいんですか!?」


 まるで孫にお菓子をあげる祖母のような様子、しかしここに突っ込むものはいなかった。

 外見的に言えばチナミの方が若く見えるが、実際的な年齢でいけばかなり年の離れた親子程度の差はあるのだが。

 にこにこと笑いあう少年とビスクドール。実に和やかな雰囲気だった。


「このクッキー、おいしいですね」

「3袋買って来たんだ。よかったら1つどうかね?」

「いいんですか?」

「構わんよ、いつも頑張ってくれているご褒美さ」

「ありがとうございます! ユティーと一緒に大事に食べますね!」

「ああ」


 あの謎が自分からもらったものを大事に食べるとは到底思えないなと、チナミは半笑いになった。クッキーをくれると聞いて、目を輝かせていたスクナは首を傾げていたが。

 その間もさくさくとクッキーを食べ進め、とろけそうに幸せな顔をさらしながら紅茶を飲む部下に苦笑するチナミだった。

 締め切った図書館内では空気の循環はないが、天窓から太陽の光が直下してくる。

 日に日に強くなるひざしに、ちなみはぱたぱたと顔を仰ぐ仕草をする。


「だんだん日差しが強くなってくるな」

「あー……夏が近づくのって早いですもんね」

「おや、夏は嫌いかい?」

「嫌いっていうか……」


 言葉を濁しながらもごもごときまり悪そうに口を動かすスクナ。もぞもぞと体を動かしてどこか言いづらそうだった。

 それに首を傾げ、水筒の蓋を持っていた手を止めチナミは聞き返した。


「っていうか?」

「その……ユティーの服が見てるだけで暑そうっていうか。本人は全然暑そうじゃないんですけど。服装緩められないのかって言っても、謎には無理って言うし」

「それは……」

「おかしくないですか? お風呂、入れるんですよ? その時に服は脱いでるのに、なんで違う格好が出来ないんですか?」


 チナミ班長わかります? と少し顔をしかめながら聞いてくるスクナは本当にそう思っているのだろう。正直に言えば、服装を緩めるどこか変えることはできる。チナミのクライヴは毛並の色すら変えることができるのだ。

 こっちの世界に残った謎は、不完全だがこちらのものとして扱われ、適応できる。ただ、それを言ってしまってはユティーにチナミが恨まれるという可能性は多大にあるのだ。

 円滑な職場環境のためにも、それをスクナに言うことはできなかった。結果、濁した。


「こだわりがあるんじゃないかね?」

「こだわり……ですか?」

「ああ。だからあまり強要してはいけないよ」

「はい……」


 しょんと肩を落とすスクナ。濁し方を間違えたなと苦笑するチナミは一口紅茶を含んで喉を潤した後、言った。


「まあ、君が言ってきかないならば、よっぽどのことなんだろう」

「はい。これだけは絶対聞いてくれなくて」

「じゃあ、もうやめておきなさい。彼にとっても君の願いを断り続けるのは辛いだろう」

「はい」


 ユティーにとっても辛いことなんじゃないかと指摘したところ、はっとスクナは息を飲んだ。そうして、神妙な顔で頷いた。

 こっくりと上下したスクナの頭を見て、チナミは内心ほっと息を吐く。よかった。なんとかごまかせたようだ。実際にはごまかせるも何もないのだが。


「さて、そろそろ作業に戻ろうか」

「はい!」


 飲み終えた内蓋を回収しながらチナミが言うと、スクナは元気よく返事をした。


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