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Riddle 〜魔法師たちのお仕事〜  作者: 小雨路
第3問『おてんとうさまを見ると、冷や汗をかいて小さくなって、やがていなくなるのだあれ?』
34/99

嵐1

 突然。何の前触れもなく。赤いステンドグラスのはまった扉がものすごい勢いで開かれた。

 ぎょっと思わずそちらを振り向くチナミとスクナ。その目の前で。


「久しぶりね、チナ……」


 その勢いのまま、ぱたんと扉が閉じた。

 沈黙に包まれる班室。互いに目を合わせる2人。空気の入れ替えのために開かれていた窓から入った風が、アイボリーのカーテンを少しだけ揺らした。


 あれはいったい何だったのか。一瞬しか見えなかったせいで金色の髪の人、声のおかげで女性だということくらいしかスクナにはわからなかった。


 お知り合いですか? と目線で尋ねては見るものの、多大に呆れた碧色の目を片手で覆ったチナミには気づかれなかった。ちょっと肩を落とすスクナ。

 はぁ、とこちらも肩を落としてため息を吐くチナミ。気だるそうな、面倒くさいですと言わんばかりの足取りでゆっくりと扉に向かう。

 扉の前に立つと緩慢な動きで静かに取っ手に手をかけ、ゆっくりと扉を開いた。


「君、少しは落ち着いたらどうかね。スズカ」

「……うるさいわね! あんたに何でそんなこと言われなきゃならないのかしら!?」

「……ここの班室の主はこの私だ。扉が壊されてはたまらないからだよ」

「ぐっ……」


 歳は若く20代前半だろうか。

 白魚のように艶のあるなめらかな白い肌。それに映える豊かな金髪。肩から膝までをすっぽりと覆うローブの上からでもわかるほどグラマラスな肢体。盛り上がった胸につけられた柊の葉のピンブローチ、そこから下がる2本の鎖がしゃらりと鳴いた。

 人形めいた美貌のチナミに対し、生命活力に満ちた美しさを持つ、正反対と言ってもいいの女性だった。

 悔しさを表すがごとく、苛立たしそうに口に親指を当て、爪をかじる。さくらんぼ色の唇からのぞく白い歯はぎりぎりと音がしそうにかみしめられていた。感情豊かな空色の瞳はただチナミを睨みつけている。

 睨みつけられているチナミはといえば、大きくため息をついて、呆れをにじませた眼を返していたが。


「チナミ班長……あの」

「ああ、紹介しよう。彼女は」

「スズカ・カブラギよ。あんたが私の部下から謎を奪い取ったっていう子かしら?」

「え!?」


 ずかずかと班室の中に入ってきて、スズカは後ろ手に扉を静かに閉めた。さっきの事故ともいうべき出来事から学んだらしい。ちょうどチナミの眼前でたわわともいえる胸を張って見せる。チナミはとても嫌そうな顔をしたのが、スクナには横顔で見えた。

 スクナを振り返って紹介しようとしたチナミを、女性・スズカは遮って、スクナを見据えながら言い放った。


「違う。班長会議の時にも言ったが、ローブを着用していない者は魔法師とはみなされない。そもそも、彼は一問たりとも謎を解けはしなかった。それを、奪い取ったとは言わんよ」


 驚きに目を見開き、身を固くすくめるスクナ。それをかばうようにチナミが小さな身で、視線を遮り否定する。

 否定しつつ、若干冷めた冷たい目でスズカを見るチナミに、ひるんだごとくスズカが詰まる。人形じみた美貌は無機質に、冷たさをさらに強く見せていた。


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