表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Riddle 〜魔法師たちのお仕事〜  作者: 小雨路
第1 問『あるところでは、四季が秋春夏冬の順になっている。しかも一週間は金曜日から始まる。さあ、そこはどこだ?』
14/99

パートナー

「ユティー!」


 スクナがたった1人のパートナーの名前を呼ぶ。それと同時に、スクナの右手首を飾っていたボロボロのミサンガが光る。

 遠くで重傷者から順に怪我を回復させていたチナミが、顔だけでスクナを振りかえり興味深そうに目を細めた。皆がどこか期待を含めた眼差しで見守るなか。



 なにも起きなかった。



「え!?」

『君……』


 顔だけをこちらに向けていたチナミの口が呆れに動いた気がして、スクナはあわてて反論する。まあ向こうには聞こえていないだろうが。信用を寄せてくれているチナミの、期待に応えられないのは嫌だった。


「ち、違います! いつも……え!?」


 困惑に揺れるスクナ。スクナの後ろを風が一陣、横に抜けていった。


 スパイシーなどこか甘い香りがスクナの鼻をくすぐる。

 するりと背後から革手袋に包まれた長い指がスクナの首を、下から上へつつーと撫で上げる。

 後ろを振り向くよりも早く。それはスクナの耳に吐息を吹き込むように、かすれたような色っぽい声で囁いた。


「やっとか、スクナ」

「ひゃっ!?」


 首筋への冷たく硬い感触と耳元への囁きに、スクナは悲鳴を上げた。驚きに鳴る胸を無視してふるふると震えながら、撫でられた首を押さえて振り返る。

 視界の端でチナミが目を見開いたのが見えた。


 黒地に金の線で区切りワインレッドを配した詰襟風の軍服。金の肩章と飾緒、胸元には数多の略綬と肩から腰に1本、腰に2本の革でできたショルダーストラップ。ズボンは黒で、膝まであるスピードレースブーツはこげ茶。

 軍帽の下はさらさらとした銀髪で、襟足の一部が長いという変わった髪形をしている。まだ20にもいってないようにみえる青年で、痩身長躯の端整な顔立ち。しかしその金色の瞳は怒りと愉悦、狂気に歪められていた。氷柱を思わせる、冷たい空気を持つ硬く冷え切った男。


 そして目を引くのが、風になびく右袖。右腕がないのだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ