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恐竜くん  作者: とらま
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恐竜くんと部活2

将棋部。


なぜ俺たちがこの部活に所属しているのか。別に将棋が好きだからという訳では無い。俺に関してはルールすら知らない。


そんな俺がこの部活に所属している理由はこの部活の活動内容にある。

『各々の時間を大切にし、自らの成長のための活動を行う』これがこの将棋部の活動内容だ。


つまり、全く将棋をやらなくても自分の好きなことをしていればそれだけでいいのだ。

それ故に、この部活に所属している部員たちは将棋のルールすら知らない人が多い。


そんな部活がなぜ将棋部の名を冠しているのか。

多分、この部を最初に作った人が引くほど将棋が好きだったのだろう。


ちなみに俺が知る限りこの部活に将棋ができる人がいる所は見たことがない。


「暗闇先輩。」


楽しそうに仕掛けを準備している先輩がこちらを振り返る。


「どうしたの?もしかして、新しい仕掛けでも思いついた!?」


目をキラキラさせてこちらを見る先輩に対して俺は続ける。


「いや、そういう訳じゃないんですけど…」


先輩は肩を落とし、あからさまにがっかりしてみせる。


「俺がロッカーに詰め込まれるのはまだ分かります。でも、なんでロッカー開けっ放しなんですか?」


ロッカーの中から飛び出して驚かす。よくある驚かし方だろう…。でもそれは、人がいると思っていないロッカーから出てくるから驚くのであって、見えていたら意味が無い。…はず。詳しくは知らないけど。


「何言ってるんだい?閉めていたら、人がいるのでは?と予測できてしまう!しかし、初っ端からロッカーが空いていたら想定外の出来事に驚くだろう!」


自信満々に胸をはる先輩。いや、そりゃ驚くよ?だって友達が明らかに中身の見えるロッカーに詰められてて、急に「うわー」とか言って出てくるんだよ?


「た、確かにー…」


「でしょ!」


再び先輩の目がキラキラと輝く。

先輩の意見を否定してしまうと泣くので、俺は適当に合わせておく。

あぁ、俺の人生に新たな黒歴史が…。これも武を見捨てた天罰か。心の中で俺は懺悔した。


暗闇先輩がなぜこんなことを始めるのか。何を隠そう先輩はホラー大好き人間なのだ。

映画はホラー映画しか見ないし、テレビも心霊番組のみ。この前進路希望で『貞子』と書いたそうだ。先生は真面目に書いて、と困っていたが本人は至って真面目なところがマジキチだ。


あの生徒指導の鬼塚でさえホラーハウスが始まるこの部室には近寄らない…。


そうこうしている間に武から連絡が入る。『すまん、部活に遅れる』この文章から察するに、どうやら俺と一緒に飛び降りた所の記憶は抜け落ちてるようだ。良かった。


「先輩。武が部室に向かっているみたいですよ?」


「了解!!準備万端だよー!ドンと来い!」


ドクロの絵が書かれたA4サイズの紙をお面のように顔に覆わせている先輩が誇らしげに胸を叩いている。


、、、あれ?そういえば勉強は?


ガタッ


部室の扉が空く。武だ。案の定、ロッカーにいる俺と目が合い表情が強ばっていく。

どうやら、先輩のアレが始まったことを悟ったらしい。けっして、ロッカーに詰められている俺を見てドン引きしている訳では無いと信じたい。


「筋肉くん…その命!貰い受けるぅ!!」


骸骨のお面を被った先輩がいきなり言い放つ。あのドクロ、死神のつもりだったのか…。


「、、、。」


挿絵(By みてみん)


いけない!状況について行けず武の脳がショートしてる!!このままではまずい、、、!


「う、うわぁー!」


と、声を上げながらロッカーから俺が飛び出す。恥ずかしさで小声になってしまった…が、今はそれどころじゃない。

飛び出した俺はそのまま武に接近し小声で


「武、とにかく驚いた振りをするんだ…。」


と話しかけた。しかし、呆気に取られすぎて動こうとしない。


「ご、ごめんね筋肉くん。え、えーい!」


どうやら、机の下に隠れていた勉強が武の足を思いっきり引っ張った。


「えっ!」


いきなりの事で気を抜いていた武がそのまま床に転んだ。


、、、


部室に静寂が広がる。


なに?これ?


いやいや、こんな事より先輩にフォローを入れないと!


「せ、先輩!良かったですね!武のやつ、驚きすぎて腰抜かしたみたいですよ?!」


…む、無理があるか?

俺は恐る恐る先輩の方に目を向ける。


「はっはっはっ!少し本気出しすぎたかな??筋肉くんはビビりだなぁ!」


先輩が満足気に笑う。

よ、良かった。何とかなったようだ。


ふぅ…


と、俺と勉強は安堵した。しかし、目の前で倒れたまま混乱している武を見て、俺たちはなんとも言い難い気持ちになった。


俺は武の近くにしゃがみ込む。


「武…今度飯奢るよ。」


勉強も申し訳なさそうに近寄ってくる。


「筋肉くん…勉強で分からないとこあったらなんでも言ってね?全力で教えるから!」


全力の勉強…。少し嫌な予感がする。


俺たちの言葉を聞いた武はますます混乱して、遂に多すぎる情報を処理できず手に握っているダンベルで筋トレを始めた。


今日も将棋部は将棋をしない。








将棋やってみたいけどルール複雑そうでなかなか手が出せない。

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