恐竜くんと角2
照りつける太陽光が木々の間から差し込んでいる。辺り一面の深緑の草木が乱雑に並ぶ。
古代の森林にはトリケラトプスが闊歩していたように、現代の森林にはカブトムシが闊歩している!
「なぁ、俺必要か?」
横でダンベルを持ちながら、不満をぶーたれるこいつは、"筋肉 武"。名前の通り筋トレ大好きな友達だ。ただでさえ暑苦しいのに名前まで筋肉だ。
「だって俺、虫触れないし。」
俺は普通に虫が苦手だ。虫が好きと言うやつを否定するつもりは無いが、虫は見てるだけで充分だ。
「まったく、俺は筋トレの最中だったんだぞ?」
「いや、先生をダンベル代わりにベンチプレスは筋トレじゃねーよ?!」
こいつを誘おうと教室に入ると異様な光景が広がっていたことを思い出す…。がっしりと体を掴まれ、振り回される先生。
泣きながら授業していたな…。
「仕方ないだろ?ちょうどいい重さのダンベルが無かったんだ!ところでこんな森の中に何しに来たんだ?」
こいつ、何をやるか分からないままここまで着いてきたのか?ついに筋肉が脳みそまで侵食してきたらしい。
「カブトムシをつかまえに来たんだよ。あの角、トリケラトプスに似てると思わないか?」
「トリ、、、?んー、、、。確かにな!!!」
うん、筋肉に侵食されつつある頭でもカブトムシの角の魅力が分かるらしい。
「だが、少しいいか?」
武が不思議そうな顔でこちらを覗き込む。
「どうかしたのか?」
武はそのまま続ける。
「カブトムシは秋にはいないぞ?」
…確かに。夏以外見たことない。
トリケラトプスと似てるから年中いると思っていたがどうやら違うらしい。季節とは、盲点だった。
「…帰るか!」
こうして俺たちのカブト狩りは終わった。
「学校までの帰り道、一緒に走って有酸素運動だ!!」
そう言った武はダンベルを持ちながら森の中を爽やかに駆け抜けていく。
俺を置いて。
個人的に筋トレが続いた試しがない。




